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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
324/421

◆◆◆◆ 9-24 偽装 ◆◆◆◆

【 ホノカナ 】

「――――っ」


 シュレイの言葉を聞いたホノカナは、チラリとセイレンの様子を見た。

 胡乱うろんな方士というのが、彼女のことを指しているのは、誰の目にも明らかだったからである。

 しかし……


【 セイレン 】

「…………」


 セイレンはまるで驚いた風もなく、平然として落ち着き払っている。


【 ホノカナ 】

(……っ、さすがに、肝が据わってるんだっ……)


 と、感心したのも束の間。


【 セイレン 】

「(……ホノカナ殿、先ほどの胡乱な方士というのは、いったい、誰のことでしょうね?)」


【 ホノカナ 】

「…………」


 どうやら、己がうさんくさい……などという自覚はまったくないようだった。


【 セイレン 】

「(……っ、それにしてもホノカナ殿、その顔っ……本当に真ん丸ですね……ぷふっ)」


【 ホノカナ 】

「(わ、笑わないでください……!)」


 そう、ホノカナの顔は今、ふだんよりずっと丸く、ふくよかになっている。

 ミナモには虫歯で顔が腫れた……と説明したが、実際はそうではない。

 先ほどゼンキョクが打ったはりによって一時的に血流を抑制され、全体的に浮腫むくんでいるのである。

 グンムらに顔を見られてもすぐにはバレないための、窮余きゅうよの一策であった。

 *窮余……困った末の苦し紛れの意。


【 ホノカナ 】

(これって、ちゃんと元通りになるんだよね……!?)


 年頃の乙女としては、気になってしまうのも無理はなかった。


【 ホノカナ 】

(……って、それはともかくっ……)


 ミズキやランブたちが罪に問われると聞いて、ホノカナはいてもたってもいられなくなりつつあった。


【 ホノカナ 】

(うう……でもっ、ここで口出ししちゃったら、台無しだし……)


 葛藤しつつ、チラチラとグンムたちの様子をうかがう。


【 ホノカナ 】

(……っ、この前会ったときとは、全然違うっ……)


 それが、今のグンムに対するホノカナの印象であった。

 かつて酒楼で対面したときは、気のいい兄さん、という風情だったが、現在の彼は……


【 ホノカナ 】

(当たり前だけどっ……何万もの軍を率いる将軍、なんだ)


 口調や仕草は穏やかながらも、そこかしこに殺伐とした気配を感じるのは、数ヶ月に渡って戦場に身を置いてきたゆえだろうか。


【 ホノカナ 】

(この人は……本当にっ……)


 帝都を落とし、新たな覇者となるつもりなのだろうか?

 直接、問いただしたいところだけれども……そうもいかない。


【 ゼンキョク 】

「……なるほど。閣下のお考え、しかと承知いたしました」


 ホノカナの思いをよそに、ゼンキョクはうやうやしく一礼する。


【 ゼンキョク 】

「浅学非才の身ではございますが、ぜひ閣下の大業たいぎょうをお助けできればと存じます」


【 グンム 】

「そうか、よろしく頼む」


 と、話がまとまりそうなところだったが……


【 セイレン 】

「それはそうと――もっと気になってることがあるんですよねぇ」


 いきなり、セイレンが口を開いた。


【 ホノカナ 】

「(えっ!?)」


【 ゼンキョク 】

「――――っ」


【 ホノカナ 】

「(セイレンさん!? 黙ってる手はずだったのに……!)」


 焦るホノカナの気持ちも知らず、セイレンは言葉を続ける。


【 セイレン 】

「将軍は、国母さまから密旨みっしを授かり、朝廷を正そうとしているとのことですが――その密旨っていうのは、本物なんですかね?」


【 一同 】

『――――っ』


 和みつつあったその場の空気が、一気に緊迫する――

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