◆◆◆◆ 9-6 焦心 ◆◆◆◆
【 トウマ 】
「……わかった。そなたたちの言うとおりに、しよう」
決然と……というには、いささか気合が足りなかったが、それでも、トウマは自らの意志をはっきりと口にした。
【 ユイ 】
「心得ました。では、さっそく支度を」
【 アルカナ 】
「は――」
アルカナは従者たちを呼び、出発の準備にとりかかる。
【 トウマ 】
「……なあ、ユイよ。ぼくは……ぼくたちは、勝てるのだろうな?」
【 ユイ 】
「――ご安心を。焦・タイシンの目利きは確かです。必ずや、殿下に玉座へお座りいただくことになりましょう」
と、太鼓判を押す。
【 トウマ 】
「う、うむ……」
【 ユイ 】
(……しかし、わからねえな)
いつものことだが、今回の一件は、つくづくタイシンの考えがわからない。
【 ユイ 】
(はなっから、こうするつもりなら……なんで、あんなに女帝陛下に肩入れしたんだ?)
タイシンは卜占、すなわち占いによって、ある程度の未来を見定めることができる……という。
そんな彼女には、彼女なりの思惑が、きっとあるのだろうが……
【 ユイ 】
(……いずれ、はっきりさせにゃなるまい)
もしも、とうてい見過ごせないほどに、タイシンがよからぬ考えを抱いているのならば――
【 ユイ 】
(……放っておくわけには、いかねえな)
己の利のため、他人を利用すること自体は、悪ではない。
だが、己の野心のため、なにも知らぬ者を駒としたあげく、使い捨てるような真似をするならば、いかにタイシンとて……
【 ユイ 】
「……アルカナ、ちょっと話がある」
【 アルカナ 】
「…………?」
ユイはアルカナを手招きし、山小屋を出た。
【 アルカナ 】
「ユイ殿、お話とは……?」
【 ユイ 】
「あぁ……その、なんだ、お前の姉貴のことなんだが」
【 アルカナ 】
「あぁ……姉上、もうすぐお会いできますねっ……慣れない宮廷暮らしは、さぞかし大変だったことでしょうっ……一日も早く、一緒に暮らせるようになりたいですっ……」
たちまち夢想に耽りはじめるアルカナ。
【 ユイ 】
「それがだな……そう簡単にはいかないかもしれねえんだ」
【 アルカナ 】
「……っ? どういうことですか? 姉上が女官となったのは、トウマ殿下を帝位に就けるための布石だったはず……」
【 アルカナ 】
「そのお役目が終わった今、もう宮廷にいる必要はないでしょう?」
【 ユイ 】
「そうだな、もうお役御免のはずだ、本来なら」
【 ユイ 】
(もっとも、本人にはなにも知らされてなかったみたいだが……姐さんは、なにかしら役立つと思って送り込んだんだろうな。意味があったかどうかはわからんが)
紆余曲折の末、ホノカナがヨスガの命を救った件については、ユイもいまだ把握していないため、このような認識になるのも無理はないところであった。
【 ユイ 】
「――しかし、状況が変わった。ひとつには……お前の姉貴は、皇帝陛下の義妹になってる」
【 アルカナ 】
「はっ……?」
意味がわからず、キョトンとなるアルカナ。
【 アルカナ 】
「姉上が……妹? それは……そもそも、今上の天子は、姉上より年下では……」
【 ユイ 】
「細かいことは気にするな。……とにかく、姉妹の契りを交わしたわけだ。この時点で、両者は一心同体といっても過言じゃない」
【 アルカナ 】
「――――っ」
【 ユイ 】
「おまけに、当初の予定じゃ大軍勢で帝都に迫り、血を見ることなく、廃立を実現させるはずだったが……向こうもかなりの手勢を集めてるって噂だ。穏便に玉座を差し出してくれるかどうか、まだわからん」
【 アルカナ 】
「そ、それってっ……」
【 ユイ 】
「つまり、お前の姉貴は、こっちの敵方になるかもしれない……ってわけだ」
【 アルカナ 】
「…………!」
ユイの言葉に、アルカナは絶句した。
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