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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
306/421

◆◆◆◆ 9-6 焦心 ◆◆◆◆

【 トウマ 】

「……わかった。そなたたちの言うとおりに、しよう」


 決然と……というには、いささか気合が足りなかったが、それでも、トウマは自らの意志をはっきりと口にした。


【 ユイ 】

「心得ました。では、さっそく支度を」


【 アルカナ 】

「は――」


 アルカナは従者たちを呼び、出発の準備にとりかかる。


【 トウマ 】

「……なあ、ユイよ。ぼくは……ぼくたちは、勝てるのだろうな?」


【 ユイ 】

「――ご安心を。ショウ・タイシンの目利きは確かです。必ずや、殿下に玉座へお座りいただくことになりましょう」


 と、太鼓判を押す。


【 トウマ 】

「う、うむ……」


【 ユイ 】

(……しかし、わからねえな)


 いつものことだが、今回の一件は、つくづくタイシンの考えがわからない。


【 ユイ 】

(はなっから、こうするつもりなら……なんで、あんなに女帝陛下に肩入れしたんだ?)


 タイシンは卜占ぼくせん、すなわち占いによって、ある程度の未来を見定めることができる……という。

 そんな彼女には、彼女なりの思惑が、きっとあるのだろうが……


【 ユイ 】

(……いずれ、はっきりさせにゃなるまい)


 もしも、とうてい見過ごせないほどに、タイシンがよからぬ考えを抱いているのならば――


【 ユイ 】

(……放っておくわけには、いかねえな)


 己の利のため、他人を利用すること自体は、悪ではない。

 だが、己の野心のため、なにも知らぬ者を駒としたあげく、使い捨てるような真似をするならば、いかにタイシンとて……


【 ユイ 】

「……アルカナ、ちょっと話がある」


【 アルカナ 】

「…………?」


 ユイはアルカナを手招きし、山小屋を出た。




【 アルカナ 】

「ユイ殿、お話とは……?」


【 ユイ 】

「あぁ……その、なんだ、お前の姉貴のことなんだが」


【 アルカナ 】

「あぁ……姉上、もうすぐお会いできますねっ……慣れない宮廷暮らしは、さぞかし大変だったことでしょうっ……一日も早く、一緒に暮らせるようになりたいですっ……」


 たちまち夢想にふけりはじめるアルカナ。


【 ユイ 】

「それがだな……そう簡単にはいかないかもしれねえんだ」


【 アルカナ 】

「……っ? どういうことですか? 姉上が女官となったのは、トウマ殿下を帝位に就けるための布石だったはず……」


【 アルカナ 】

「そのお役目が終わった今、もう宮廷にいる必要はないでしょう?」


【 ユイ 】

「そうだな、もうお役御免のはずだ、本来なら」


【 ユイ 】

(もっとも、本人にはなにも知らされてなかったみたいだが……姐さんは、なにかしら役立つと思って送り込んだんだろうな。意味があったかどうかはわからんが)


 紆余曲折うよきょくせつの末、ホノカナがヨスガの命を救った件については、ユイもいまだ把握していないため、このような認識になるのも無理はないところであった。


【 ユイ 】

「――しかし、状況が変わった。ひとつには……お前の姉貴は、皇帝陛下の義妹になってる」


【 アルカナ 】

「はっ……?」


 意味がわからず、キョトンとなるアルカナ。


【 アルカナ 】

「姉上が……妹? それは……そもそも、今上きんじょうの天子は、姉上より年下では……」


【 ユイ 】

「細かいことは気にするな。……とにかく、姉妹の契りを交わしたわけだ。この時点で、両者は一心同体といっても過言じゃない」


【 アルカナ 】

「――――っ」


【 ユイ 】

「おまけに、当初の予定じゃ大軍勢で帝都に迫り、血を見ることなく、廃立を実現させるはずだったが……向こうもかなりの手勢を集めてるって噂だ。穏便に玉座を差し出してくれるかどうか、まだわからん」


【 アルカナ 】

「そ、それってっ……」


【 ユイ 】

「つまり、お前の姉貴は、こっちの敵方になるかもしれない……ってわけだ」


【 アルカナ 】

「…………!」


 ユイの言葉に、アルカナは絶句した。

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