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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
302/421

◆◆◆◆ 9-2 問罪 ◆◆◆◆

 一同が中庭に移ったところで……


【 シラクサ 】

「――より詳細な情報が、入ってまいりました」


 と、〈我影也しのびのもの〉こと〈サツ・シラクサ〉が姿を現した。

 そこで、彼の口から語られたのは。



 ――宰相〈ラク・レツドウ〉が急死。死因は落馬とされるが詳細は不明。


 ――その直後、レツドウの遺志を継いだと称する征南将軍〈レイ・グンム〉は、討伐対象だった元の巡察使〈スイ・ヤクモ〉と独断で和睦を行った。


 ――さらには、皇太后〈コウ・ランハ〉より授かったという密旨みっしを披露し、その命を奉ずるという形で、目下もっか、帝都〈万寿世春ばんじゅせいしゅん〉へと進撃中である――



【 ヨスガ 】

「その、密旨とやらは?」


【 シラクサ 】

「……は、こちらに写しが……」


 差し出された紙を見て、ヨスガは顔をしかめた。


【 ヨスガ 】

「『天子ヨスガに、謀叛のきざしあり――』ときたか。フン、ほんの数日前までなら、ただの難癖にすぎなかったが……」


【 バイシ 】

「ほうほう……こりゃあ、嘘から出たまことってところだねえ」


【 ホノカナ 】

「こんな命令を、国母さまが……!?」


【 ミズキ 】

「ありえませんね。あの御方が、こんな他人任せな命を下すはずはありません。真っ赤な偽物でしょう」


【 ヨスガ 】

「で、あろう。しかし……」


【 ヨスガ 】

「現実には、我が武力を用いて国政を握り、国母さまを追い出したかのような状況になっておる。……誰かの描いた絵図に乗せられたかのようで、気に食わんな」


【 ホノカナ 】

「じゃあ、偽物だって証明できれば、レイ将軍も兵を止めてくれるんでしょうか……?」


【 ヨスガ 】

「それは期待できぬな。連中とて、これが偽物だということは、おそらく承知の上であろう」


【 バイシ 】

「さて、どうするね、お頭?」


【 ヨスガ 】

「フン、売られた喧嘩だ、買ってやろう――」


【 ヨスガ 】

「……と、言いたいところだが、そう簡単にはいくまい」


 単純に兵力だけを考えても、現状ではとても正面から迎え撃てる状況ではない。


【 ヨスガ 】

「守りを固め、各地にげきを飛ばして兵を集めねばならぬが……グンムめのところへ、問罪の使者を送らねばならぬな」


【 バイシ 】

「まあ、あっちの腹を探る必要はあるだろうね。時間稼ぎができるなら、それに越したことはないが」


【 ランブ 】

「陛下、その使者、ぜひとも私に――」


【 ヨスガ 】

「むむ……グンムの知己であるけいは、適役ではあるが」


【 ミズキ 】

「不肖、私にお任せいただければ――」


【 ヨスガ 】

「ふむ、それも一手だが……」


【 ホノカナ 】

「あ――あのっ! わたしに、行かせてもらえませんかっ……!」


【 ヨスガ 】

「……無理に副頭目ぶる必要はないのだぞ?」


【 ホノカナ 】

「そ、そういうことじゃありませんっ! レイ将軍はっ、決して、ただの悪人ではないと思うのでっ……」


【 ヨスガ 】

「話せばわかる――とでも言うのではあるまいな?」


【 ホノカナ 】

「……そこまでは、思いません。でもっ……!」


【 ヨスガ 】

「――よかろう。ミズキやランブでは、相手も警戒するであろうからな。そなたなら、ちょうどよかろう」


【 ホノカナ 】

「あ、ありがとうございますっ!」


【 ホノカナ 】

「……あれっ? もしかして、わたしが頼りないところがいい、ってこと……?」


【 ミズキ 】

「しかし、さすがに彼女ひとりでは……」


【 ヨスガ 】

「そうだな、ここは――」


 と、ヨスガが名を挙げようとした矢先。


【 ???? 】

「わはははは! お呼びのようですね! この! 私をっ!」


 皆のよく知る高笑いが、真夜中の庭園に響いた――

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