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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
30/421

◆◆◆◆ 3-5 猛勇と侠勇 ◆◆◆◆

 巨漢の放った空を裂く痛烈な一撃がユイに迫る――


【 ユイ 】

「――おっとっ!」


 真っ向から食らってはたまらぬと、ひらりと身をひるがえしてかわすユイ。


【 タイシン 】

「ユイ――」


【 ユイ 】

「止めたって無駄だぜ、姐さん! このウドの大木に、口の利き方ってやつを教えてやらねぇとな!」


 今度はこっちの番とばかりに、愛刀を閃かせ、目もくらむような高速の一撃を打ち込む――


【 大男 】

「――むうッ……!」


 ――――ガキイィンッ!


 しかし相手もさるもの、この一閃を大刀の柄で受け止めた。


【 大男 】

「洒落た真似をッ!」


【 ユイ 】

「そっちこそなぁ!」


【 従者たち 】

「グンロウ様……!」


【 大男 】

「手出しは無用ッ! この小僧は――」


 色めき立つ従者たちを一喝して、


【 大男 】

「――俺の、獲物だッッ!!」


【 ユイ 】

「…………っっ!!」


 大刀と刀が、すさまじい勢いで繰り出され、火花を散らす。


【 タイシン 】

(ほう、〈風雲忍侠〉と互角に渡り合うとは――)


 タイシンは止めるのも忘れ、思わず攻防に目を奪われる。

 ユイと巨漢は、両者一歩も譲らず、幾合となく斬り結び、まるで決着がつきそうにもなかった。


【 ユイ 】

「ちっ、少しはやるな、デカブツ……!」


【 大男 】

「おのれッ……ちょこざいなッ!」


 と、両雄がさらに熱くなってきた矢先――


 ――キイイィ……ン……


【 大男 】

「ぬうッ!? これは――」


【 ユイ 】

「鎖――だとっ?」


 そう、いずこからか飛んできた鎖が、両者の武器を絡め合わせ、一寸たりとも動けぬように封じていたのである。


【 声 】

「そのあたりにされよ、グンロウ殿――」


 響いたのは、城壁からの声。

 そこには、優美な学士ふうの装束の男が立っていた。

 その端正な顔立ちは、遠目には女と見まごうほどである。


【 グンロウ 】

ガク軍師かッ! 邪魔立てはよしてもらおうッ……!」


【 楽軍師 】

「そうは参りません――」


 城壁の男は、優雅に一礼して。


【 楽軍師 】

「貴方がレイ将軍に罰されるところを見るのは、いささか忍びないので」


【 グンロウ 】

「なんだとッ……!?」


【 楽軍師 】

「ですが、急ぐこともなかったようですね。ちょうど、お越しです」


 と、城門が開いて。


【 声 】

「――控えろ、グンロウ!」


 よく通る声が響き渡るや否や、


【 グンロウ 】

「はッ――」


 先ほどまでの威勢はどこへやら、巨漢はたちまち得物を下ろし、身をすくませる。


【 ユイ 】

「…………っ?」


 事態がよく呑み込めぬまま、ユイは城門から出てきた馬上の人物に目を向ける。


【 タイシン 】

「――ご無沙汰しております、レイ将軍」


【 嶺将軍 】

「こちらこそ――タイシン殿」


 タイシンに一礼したのは、三十過ぎとおぼしい精悍な顔つきの男だった。

 引き締まった肢体には無駄な肉がなく、節制と鍛錬を欠かしていないのがひと目でわかる。

 それでいて、こちらを威圧するような気配はまるで感じさせない。


【 ユイ 】

(そうか、この男が――)


【 グンム 】

「この〈レイ・グンム〉、ふたたびお目にかかれて喜びにたえませぬ――」


 屈託のない笑顔をうかべるこの男こそ、レイ・グンム。

 のちの史書に、〈宙帝国に引導を渡した男〉として記録される男、その人であった――――

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