表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
296/421

◆◆◆◆ 8-65 流渦深仙 ◆◆◆◆

【 ウツセ 】

流渦深仙りゅうかしんせん……!?」


 シン・ウツセは、驚愕した。

 流渦深仙といえば、世にいう三十六奇仙さんじゅうろくきせんのひとり――

 つまり、正真正銘、不老不死の神仙である。

 この時代、本物の神仙を目にすることなど、滅多にありえないことであり、ウツセもまた初めてだった。


【 ウツセ 】

(見た目は、まるで、童女そのものだが……)


 それでいて、神仙の世界に無縁なウツセでさえも、肌があわ立つほどの威圧感を覚えてしまう。


【 アグラニカ 】

「アレが噂の、ちゅうの神仙っ! へええっ……すごい! どれほどの力があるのか、見当もつかないっ……なにより、めちゃくちゃ可愛いっ……!」


 隣のアグラニカは、怯えや憧れや慈しみの混じったような様子で、目を輝かせている。


【 アグラニカ 】

「もうちょっと近くで見てもいいですかねっ……?」


【 ウツセ 】

「い、今は、お控えください……!」


 今にも飛び出していきそうなアグラニカを抑える。

 そんなウツセたちには構わず、


【 流渦深仙 】

「――貴殿らが義軍を起こし、天下を安んじようとしていると知り、その門出を言祝ことほぐべく、まかりこした――」

 *言祝ぐ……祝いを述べる、祝福するの意。


 おごそかにそう告げる流渦深仙は、威厳に満ちており、そのあどけない姿からは想像もつかない存在感を示している。


【 タシギ 】

「――――っ」


【 ヴァンドーラ 】

「むうっ……」


【 ミナモ 】

「幽聖岳のっ……神仙さまっ……!?」


 先ほどまで争っていた面々も気圧され、ただただ、目を奪われている。


【 シュレイ 】

「――っ、ご無沙汰しております、師父……!」


 ひざまずき、恐懼きょうくして拝礼するシュレイ。

 *恐懼……大いに恐れ、かしこまるの意。


【 シュレイ 】

「よ、よもや、今生で再びお目にかかれる日が来ようとはっ……!」


【 ウツセ 】

(そうか、この神仙が、あの男の師――)


【 流渦深仙 】

「壮健そうで何よりである。……ずいぶんと、“活躍”しているようだな?」


【 シュレイ 】

「……っ、ははっ……」


 どこか含みのある言葉を受けて、ますます深々と頭を下げている。


【 流渦深仙 】

「ところで、もうひとりの不肖の弟子の姿が見えぬが?」


【 シュレイ 】

「は――ヘキ師弟していは、仙薬の材料集めが忙しいなどと言って、いずこかへ姿を消しておりまして……」


【 流渦深仙 】

「……是非もなし」


 流渦深仙は、溜め息をこぼした。

 神仙ですらも、弟子の行状には悩まされるものであるらしい……と、ウツセは思った。




【 流渦深仙 】

却説さて――」


 と、流渦深仙はグンムに向き直る。


【 流渦深仙 】

「貴殿が――こたびの〈施主せしゅ〉殿か?」

 *施主……ここでは葬儀の当主の意。


【 グンム 】

「は――」


【 グンム 】

(こりゃあ参った……が、下手は打てねぇな)


 その人間離れした気配に戸惑いを覚えつつも、ここで情けない姿を見せるわけにはいかない。


【 グンム 】

「――レイ・グンムと申します。大仙だいせんにお目にかかれ、望外の光栄でございます」

 *大仙……神仙への尊称。


 背筋を伸ばし、堂々と返答する。


【 流渦深仙 】

「ほう……なるほど。貴殿が……フム……そういうことか」


 グンムをまじまじと見たあと、流渦深仙はなにかを察したかのように頷いてみせた。

ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ