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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
289/421

◆◆◆◆ 8-58 巨星堕つ ◆◆◆◆

 ……北岸で凶事が起きて、しばしの後。


【 グンム 】

「…………」


 スイ軍の陣中にて。

 レイ・グンムは、手にした紙片を睨み、押し黙っていた。

 と、そこへ、


【 ミナモ 】

「――ようやく起きられたのですね、レイ将軍! 寝坊助ねぼすけにもほどがありましてよ!」


 声もかけずにいきなり幕舎に入ってきたのは、スイ・ミナモであった。


【 グンム 】

「お――おお、お嬢様か。どうかしたのか?」


【 ミナモ 】

「どうしたもこうしたもありませんわ! そもそも、ここは父上の幕舎ですのよ!」


【 グンム 】

「そういやぁそうだったな。ちと疲れが溜まってたもんで、つい寝過ごしちまったんだ、勘弁してくれ」


【 ミナモ 】

「はぁ……一軍の将になられたというのに、変わりませんのね、グンムさんは」


 と、呆れ顔のミナモ。


【 グンム 】

「そう呼ばれるのも久しぶりだな。俺もミナモちゃんと呼んだ方がいいか?」


【 ミナモ 】

「お、おやめくださいっ! わたくし、もう小娘ではありませんのよ! 立派な淑女にして、武人なのですからっ!」


【 グンム 】

「…………」


 武人なのは疑う余地もないが、淑女かどうかは、判断が分かれるところではありそうだった。


【 グンム 】

「それより……父上からのお召しかな?」


【 ミナモ 】

「ええ、歓待の宴を開きたいとのことですわ! 本当は昼間に催すつもりでしたが、貴方がいつまでも起きないのでっ!」


【 グンム 】

「すまんすまん。……ちょっと支度があるから、外に出ててもらえるか?」


【 ミナモ 】

「心得ましたわ。……なるべくお早めに!」


【 グンム 】

「ああ、わかってるって、ミナモちゃん」


【 ミナモ 】

「その呼び方はおやめくださいっ……!」


【 グンム 】

「は、は、は……」




【 グンム 】

「…………」


 ミナモが去り、ひとりになった後……


【 グンム 】

「……さて、ちょっと話がある。出てきてくれぬか」


 そうぽつりと口にすると、ややあって、


【 ???? 】

「――お気づきでしたか」


 声だけが返ってくる。


【 グンム 】

「いやなに、状況から判断しただけさ」


【 グンム 】

「貴公が本気になれば、その隠れ身、俺が見破れるはずもあるまい。そうであろう? 風雲忍侠ふううんにんきょう殿よ」


 グンムの視線の先の暗がりから、人影が浮かび上がる。


【 ユイ 】

「――では、そういう状況になった、ということですか」


 虎王コオウ・ユイが問う。


【 グンム 】

「しかり、だ。……これを見てもらおう」


 と、グンムが紙片を差し出す。


【 グンム 】

「こいつは、ガク老師せんせいの小道具でな。……遠く離れた相手に情報を伝えることができるってわけだ。まあ、あまり遠いと無理だそうだが」


【 ユイ 】

「これは……」


 そこに記された短い文に、ユイは息を呑んだ。



 ――ラク宰相、そっす。

 *卒する……貴人が亡くなる意。


 ――その原因、定かならず。



【 ユイ 】

ラク宰相がっ……!? これは……本当にっ?」


【 グンム 】

「戯れにしては、いささか度がすぎるであろうよ」


【 ユイ 】

「…………っ」


【 グンム 】

「もし貴公がそばにいれば、恐らくこのようなことにはなっていまい? であれば、俺のところにいる……と見るのが妥当というものだ」


【 ユイ 】

「…………っ」


 グンムの見立て通り、ユイはレツドウの命で、彼の護衛――見張りというべきか――についていた。


【 グンム 】

「なにか言いたそうだな、ユイ殿」


【 ユイ 】

「…………」


【 グンム 】

「――俺の差し金で、宰相が殺された……そう思ってるんじゃないか?」


【 ユイ 】

「それは――」


【 ユイ 】

「――今朝のスイ将軍との話からすれば、十分、ありうることでしょう」


【 グンム 】

「確かにそうだ。まあ、あれこれ釈明する気はないがね」


【 グンム 】

「しかし、貴公には悪いことをしたと思ってる。タイシン殿から、宰相を助けるよう命じられていたのだろう?」


【 ユイ 】

「……命じられたわけじゃありませんよ。頼まれただけです。宰相のはかりごとに協力してくれ、とね」


【 グンム 】

「ははぁ、なるほどな。任侠の徒っていうのはそういうもんか」


【 グンム 】

「さて、それでどうする? 宰相の仇討ちでもするかね」


【 ユイ 】

「――――っ」


 ユイの刺すような眼光が、グンムを貫く――

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