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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
281/421

◆◆◆◆ 8-50 誤算 ◆◆◆◆

 一方その頃、官軍の陣中においては……


【 レツドウ 】

「…………」


 幕舎にあって、宰相のラク・レツドウは落ち着かない状態にあった。


【 レツドウ 】

(……もう、グンムはヤクモと会っている頃か?)


 グンムがなにを企んでいるのか……

 考えられるものとしては、


【 レツドウ 】

(あやつは、保身が第一の男……ならば、もっとも安全な道を選ぶはず)


 だとすれば、


【 レツドウ 】

(……ヤクモの庇護を求めるつもりか?)


 いわば、亡命のような形であろうか。

 ヤクモとグンムはかつての同僚であり、付き合いも長いと聞く。


【 レツドウ 】

(武人同士の絆、とやらか)


 そのグンムから頼られれば、ヤクモもその身柄を保護するくらいのことはするだろう。

 今後、グンムはレツドウの陣になんのかんのと理屈をつけて――病になったとかどうとか――留まるつもりでもあろうか。


【 レツドウ 】

(……私としたことが、いささか、心配しすぎであったかもしれぬ)


 つい、苦笑する。

 疑心暗鬼に陥って、不必要なまでに警戒心を抱いてしまったところもあっただろうか。


【 レツドウ 】

(あんな小者のことはどうでもよい。それよりも……)


 この先は、朝廷に巣食う輩をはじめ、さらなる大物たちを相手にしなくてはならぬ。

 そして、さらにその先には……


【 レツドウ 】

(我が大願、必ずや……果たしてみせよう)


 と、レツドウが決意を新たにしているところへ……


【 兵士 】

「か、閣下っ! 一大事です……!」


 血相を変えた兵士が駆けこんできた。


【 レツドウ 】

「なにごとだ? 騒々しいっ……」


【 兵士 】

「て、敵がっ……森羅しんらの軍が、こちらに迫っておりますっ!!」


【 レツドウ 】

「なんだと……!?」


 レツドウは、耳を疑った。




【 レツドウ 】

「――状況を報告せよ」


 急報に驚愕したレツドウであったが、しばしのち、諸将を集めた頃には、落ち着き払った態度を見せていた。


【 ダンテツ 】

「は――」


 副将としてグンムの留守を任されている〈鋼骨陣こうこつじん〉ことセキ・ダンテツが応じる。


【 ダンテツ 】

岳東がくとうにて、我が軍は森羅しんらの軍と対峙たいじしておりましたが……」


【 ダンテツ 】

「森羅の奇襲により、当方は大敗……森羅の兵はそのままの勢いで、こちらに進撃中――とのことです」


【 レツドウ 】

「…………っ」


【 グンロウ 】

「うぬっ……なんということだっ……ガク軍師がいながらっ……!」


【 レツドウ 】

「……それで、こちらはどうする?」


【 ダンテツ 】

「は……無論、迎撃する所存」


【 ダンテツ 】

「東方の軍が敗れたりと言えども、こちらの軍勢は約八万、片や森羅の軍は四万ほどとか……」


【 ダンテツ 】

「それに、あちらははるばる東方より遠征してきており、疲労も溜まっておりましょう。勝ちに乗じた勢いがあろうとも、負けることはありますまい」


【 レツドウ 】

「……むう……」


【 ダンテツ 】

「ただ、この機に乗じてスイ将軍が軍を北上させたならば、厄介なことになりますが……」


【 レツドウ 】

「それは……なかろう」


【 ダンテツ 】

「……と、申されると?」


【 レツドウ 】

「……この期に及んでは、秘していても仕方あるまい。実は――」


 と、レツドウは、ヤクモと和睦の話が進んでいること、グンムが敵陣へと赴いたのは先方の真意を計るためである、ということを説明した。


【 ダンテツ 】

「ほう。……なるほど、レイ将軍がみずから敵陣に乗り込むとは、あまりに大胆と思っておりましたが……そういう次第でしたか」


【 レツドウ 】

「そういうことだ。しかし……」


【 ダンテツ 】

「森羅の軍には、その話は伝わっていなかったかもしれませぬな」


【 レツドウ 】

「……起きてしまったことは仕方がない。だが、これ以上の衝突は無意味というものだ」


【 レツドウ 】

「誰か使者を立てて、森羅の軍を説かねばなるまい」


【 ダンテツ 】

「それは……しかし、あちらが信用するかどうか?」


【 レツドウ 】

「だが、そうせねば無駄に兵を損ずることになろう。……誰か、適任の者はおらぬのか?」


【 ダンテツ 】

「されば……」


 と、ダンテツはしばし黙っていたが、やがて口を開いた。

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