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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
279/421

◆◆◆◆ 8-48 決断 ◆◆◆◆

【 ヤクモ 】

「――――っ」


 スイ・ヤクモは百戦錬磨の将であり、人一倍、豪胆な男である。

 それでも、グンムの言葉には、一驚いっきょうきっした。

 *一驚を喫する……驚くの意。


【 ヤクモ 】

「グンム、そなた……自分がなにを言っているのか、わかっているのか?」


 つい、昔の呼び方に戻ってしまったのも、無理はない。


【 グンム 】

「もちろんですとも、スイ将軍」


【 ヤクモ 】

「……謀叛むほんを起こす、と聞こえたが?」


【 グンム 】

「まあ、言い方はいろいろあるでしょうが……客観的には、そうなりましょうな」


【 ヤクモ 】

「…………」


【 グンム 】

「信じられませんか?」


 ヤクモは、グンムの双眸をじっと見つめた。

 そこには、戯れの色はかけらもない。


【 ヤクモ 】

「……いや。戯れ言ではないようだ。しかし、合点はいかぬな」


【 ヤクモ 】

「貴公は、田舎で穏やかに過ごすのが、目的ではなかったか? 天下取りなどは、それとはまるで逆の事業であろう」


【 グンム 】

「おっしゃる通りです。私とて、誰も邪魔をする者がいないなら、故郷で静かに暮らしていたい」


【 グンム 】

「ですが、それが許されないのが、この時代です。……で、あれば」


【 グンム 】

「みずから、誰にも邪魔されぬ立場を掴むしかありますまい」


【 ヤクモ 】

「そのために、上に立つ者を排除する、と?」


【 グンム 】

「手っ取り早く言えば、そういうことです」


【 ヤクモ 】

「…………」


【 グンム 】

「とはいえ、今の私は一介の将にすぎません。そこで……」


【 ヤクモ 】

「私に手を貸せ、というのか」


【 グンム 】

「はい」


【 ヤクモ 】

「……気軽に言ってくれるものだな」


【 グンム 】

「かしこまったところで、意味はありませんので」


【 ヤクモ 】

「……こうして私と会っている以上、すでに、仕込みは済ませているのだろうな?」


【 グンム 】

「もちろんです。ま、どんな目が出るかは、さいを振ってみるまではわかりませんが」


【 ヤクモ 】

「貴公をこうして迎え入れた時点で、私も共犯者……というわけだな」


【 グンム 】

「悪く言う者もいるでしょうな。しかし、まだ手遅れではありませんよ」


【 グンム 】

「今、私を斬ってしまえば、将軍の潔白は示せましょう」


【 ヤクモ 】

「…………」


 ヤクモの眼光が、グンムを刺す。

 お互い、携えているのは一振りの剣のみ。


【 ヤクモ 】

(この間合いならば……)


 ただの一太刀で、仕留められるであろう。

 しかし……


【 ヤクモ 】

「――やれやれ」


 老ヤクモは首を振り、嘆息した。


【 ヤクモ 】

「つくづく向こう見ずなものだな、若さというのは」


【 グンム 】

「……さて、将軍、返答はいかに?」


【 ヤクモ 】

「…………」


 グンムを見つめ、ヤクモは口を開いた――

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