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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
275/421

◆◆◆◆ 8-44 適材 ◆◆◆◆

【 タシギ 】

レイ将軍――どういうおつもりで?」


【 グンム 】

「どういう、とは?」


 部将たちが解散したあと、ひとり残ったタシギがグンムに問う。


【 タシギ 】

「なんでアタシが護衛役なワケ? あのデカブツ以外にも、腕の立つヤツはいくらもいるでしょうに」


【 グンム 】

「さっきも言っただろう? 無骨な男を連れていくよりは、見目麗みめうるわしい女子おなごの方が適任――と判断しただけのことだ」

 *見目麗しい……顔が美しい、容貌が整っているの意。


【 タシギ 】

「フゥン……?」


【 タシギ 】

「ま、アタシが見目麗しくて、可憐で、匂い立つような美人だっていうのは、確かだけれど――」


【 グンム 】

(……そこまでは言ってないけどな)


 と、内心で呆れつつ、


【 グンム 】

「――もし気が乗らないというなら、考え直そう。もとより、敵地に乗り込む以上、危険な役目なのは言うまでもないことだからな」


【 タシギ 】

「――いや、やりますよ。ご命令とあらば、ね」


【 グンム 】

「ならば結構だ。明朝すぐに立つ。支度をしておいてくれ」


【 タシギ 】

「…………」


【 グンム 】

「まだ、なにか?」


【 タシギ 】

「いえ。……それでは」


 一礼して、タシギはグンムの前を辞した。


【 グンム 】

「…………」




【 タシギ 】

(あの男……なにを考えてやがる?)


 グンムの幕舎を離れながら、タシギは首を傾げていた。


【 タシギ 】

(アタシが、宰相の飼い犬だってことは、とうに承知の上のはず……)


 にもかかわらず、あえて自分を護衛に選んだのは……


【 タシギ 】

(なにか、企んでるってことか……?)


 それがなにかは、わからないが。


【 タシギ 】

「…………」


 先だって、グンムの参謀・シュレイから受け取った紙片を取り出してみる。

 それは、いまだ白紙のままであった。


【 タシギ 】

「ちっ……」


 タシギは舌打ちして、その足でひそかにレツドウの下へと向かった。




【 レツドウ 】

「ふむ……そうか」


【 タシギ 】

「…………」


 タシギからの報告を受けたレツドウは、しばし黙り込んでいたが、


【 レツドウ 】

「……わかった。お前はそのまま、グンムの命に従え」


【 タシギ 】

「……それで構わないワケ?」


【 レツドウ 】

「うむ。恐らく、危険はあるまいが……不測の事態は起きうる。その場合は――そうだな、臨機応変にやれ」


【 タシギ 】

「ふ~ん……」


【 レツドウ 】

「なんだ? なにか、言いたそうだな」


【 タシギ 】

「……これが、前に言ってた機会ってヤツなんじゃないの? あの大将を始末するためのさぁ」


【 レツドウ 】

「……かもしれぬ。しかし……」


【 タシギ 】

「…………」


【 レツドウ 】

「……やはり、今はまだその時ではなさそうだ。せいぜい、役目を果たすがいい」


【 タシギ 】

「ふ~ん……まぁ、それならそれで、やるけどさぁ……」


【 レツドウ 】

「…………」


【 レツドウ 】

(……まるで、なにか仕掛けてください、と言わんばかりだな)


 タシギがレツドウの子飼いの臣であることを、グンムが知らぬはずはない。

 それでもあえて、彼女を己の護衛に選んだのは……


【 レツドウ 】

(こちらへの、挑発か?)


 その可能性は、否定できない。


【 レツドウ 】

(……迂闊には乗れぬな)


 もしグンムが敵陣において襲われるようなことがあれば、肝心の和睦がご破算になりかねない。

 むしろ、タシギには命に代えてもグンムを守らせねばならぬ――少なくとも、敵陣を離れるまでは。


【 レツドウ 】

(小細工をろうしおって……この私を出し抜くつもりか? 笑止な……!)


 身の程知らずな田舎者ふぜいに、足元をすくわれてたまるものか――と、レツドウは眉をひそめる。


【 タシギ 】

「…………」


 そんなレツドウを、タシギは無言で見つめていた……

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