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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
27/421

◆◆◆◆ 3-2 凡人 ◆◆◆◆

【 ミズキ 】

「そもそも、これはホノカナとアイ老師のための講義です。陛下が同席される必要はございませんが?」


【 ヨスガ 】

「なに、日々学ぶことは大事であろう? 知ってはおっても、あらためて学び直すことも必要ゆえな」


【 ミズキ 】

「……そういうことにしておきましょう。では、今宵の講義ですが……」


 と、ミズキが書物を開く。


【 ミズキ 】

「ホノカナ。先日の講義の内容は覚えているでしょうね?」


【 ホノカナ 】

「はっ、はいっ! ちゅう王朝のなりたちについて……」


【 ミズキ 】

「そうです。神祖による建国以来三千年あまり、帝国は幾度となく崩壊の危機に陥りつつも、奇跡的に滅亡をまぬがれ、再興されて、現代まで続いてきました」


【 セイレン 】

「ああ、しかし、今やそれも風前の灯! 今度こそ危急存亡ききゅうそんぼうとき――というわけですなぁ」


【 ホノカナ 】

「せ、セイレンさま……!?」


 あまりにあけすけな方士の言に、さすがに戸惑うホノカナ。


【 ヨスガ 】

「……気にすることはない。まったくの事実ゆえな」


 ヨスガ、不機嫌そうに腕組みをしつつ。


【 ヨスガ 】

「また今度も奇跡が起きて、国が蘇る――などという保証はどこにもない」

「ゆえに、我らがなんとかせねばならぬのだ」


【 ホノカナ 】

「きっとできます! 陛下――じゃない、ヨスガ姉さまなら!」


【 ヨスガ 】

「――はぁ? なにをひとごとのように言っておる」


【 ホノカナ 】

「えっ?」


 ヨスガに睨まれ、目をぱちくりとさせるホノカナ。


【 ヨスガ 】

「我だけではない。そなたも力を尽くすのだ!」


【 ホノカナ 】

「え、ええっ? で、でも、わたし、ただの女官ですし、なんのとりえもないですし……」


【 ヨスガ 】

「ふむ、そうだな、さほど体力があるわけでなし、武芸もさっぱり、知恵があるわけでもなし、群を抜いた美貌があるわけでもなし……まあ、凡人ではあるな」


【 ホノカナ 】

「そこまで言われるとさすがに凹みますけれど……!」


【 ヨスガ 】

「だが、それでよい――否、それがよいのだ」


【 ホノカナ 】

「…………?」


 ニヤリと笑うヨスガに、ホノカナは首をかしげるばかり。


【 ヨスガ 】

「我のように生まれつき華のある者にはできぬことも、そなたにはできる。大きな魚は網から逃れられぬが、小魚なら逃げられる……そういったようなことだ」


【 ホノカナ 】

「は、ははぁ……」


 なんとなく、わかるような、わからないような。


【 セイレン 】

「つまるところ、ホノカナ殿の武器はその地味さ、平凡さ! まさにそれこそが、あなたの比類なきとりえと言えましょう! 我らのような光輝く存在は、いかんせん目立ちすぎますからなぁ!」


【 ホノカナ 】

「ぜんぜん褒められている気がしません……!」


 でも――自分にも、なにかできることがあるのならば。


【 ホノカナ 】

「わ、わたし、がんばりますっ!」

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