表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
263/421

◆◆◆◆ 8-32 別離 ◆◆◆◆

【 ユイ 】

「――なにを見ている?」


【 カイリン 】

「……己の、姿ダ」


 魅入られたように、カイリンは水面を見つめている。


【 ユイ 】

「なにが、見えるんだ?」


【 カイリン 】

「……愚かな小娘ダ。アタシは、あの尼を相手に、一言も言い返せなかッタ……!」


【 ユイ 】

「…………」


【 カイリン 】

「……わかっていタ。アタシの仇討ちは……ただの、意地に過ぎナイと……!」


【 ユイ 】

「だが、それも……大事なものではないのか?」


【 カイリン 】

「違ウ、そうでは――そうではナイのダ……!」


【 ユイ 】

「…………」


【 カイリン 】

「あのとき……父が、あの男に、討たれたときッ……」


 数年前。

 飛鷹ひようの有力部族のひとつ、〈三ツ羽〉の族長であるカイザンは、ヤクモとの一騎討ちに敗れ、落命した。


【 カイリン 】

「アタシは……父が討たれた時、悲しかッタ……だが、それ以上にっ……」


【 カイリン 】

「魅せられて、いタ……あの男の、強さにッ……!」


【 ユイ 】

「…………」


【 カイリン 】

「……アタシは、そんな自分を許せなかっタッ……だからアタシは、それをごまかすように、仇討ちにこだわっテッ……」


【 カイリン 】

「アタシは……ただ、甘えていタだけダ……だからこそ、あの男は、アタシを殺さなかっタのだロウ……殺すまでもナイ、と思っていタに違いナイ……!」


【 ユイ 】

「……かもしれん」


【 カイリン 】

「……あげくに、あの尼の気合に、アタシは叶わなかっタ。ただのハッタリではナイ、あの、命懸けの気合にッ……」


【 カイリン 】

「そうダ……アタシはッ……命を懸けていなかッタ……そんなコトに、ソナタも、巻き込んでしまッタ……!」


【 ユイ 】

「それは、別にいいさ。俺が勝手に付き合っただけのことだからな。だが……」


【 ユイ 】

「問題は、この先だ。これから、どうする?」


【 カイリン 】

「…………ッ」


 カイリンは拳を握り締める。


【 カイリン 】

「このまま、おめおめと一族のもとには戻れヌ……せめて、あの男に、肩を並べるまでハッ……!」


【 ユイ 】

岳南がくなんを離れるのか?」


【 カイリン 】

「うム……あの男に挑むにハ、もっと天地を知らねばならヌ……!」


【 ユイ 】

「そうか。それもいいだろうさ」


【 ユイ 】

「――じゃあ、ここで解散だな」


【 カイリン 】

「ム……そうなるナ。大層、世話になッタ……!」


【 ユイ 】

「世話ついでだ、こいつを持っていくといい」


【 カイリン 】

「……っ? これハ……」


 ユイが差し出したのは、彼の署名が入った書状であった。


【 ユイ 】

「俺からの紹介状だ。道中、困ったときはショウ家に頼ればいい。あちこちで商売をやってるから、探せばすぐに見つかると思うぜ」


【 カイリン 】

「……っ、そうカ、ソナタは……朽縄くちなわドノ、ではなかったナ?」


【 ユイ 】

「それも昔の名ではあるがな……今は、虎王コオウ・ユイと名乗ってる」


【 カイリン 】

「ム……そうカ……虎王コオウ……」


 ふと思いついたように、


【 カイリン 】

「ならバ、ひとつ、頼みがあるのだガ……」


【 ユイ 】

「乗りかかった船だ。なんでも聞くだけは聞こうじゃないか」


 ユイにうながされ、カイリンが頼みごとを口にしたことから、英雄は千禍の内に一福を拾い、剣侠は万死の中に一生を得る――という次第となるのである。


 果たしてカイリンの頼みごととは、いったいどんなものであったか、それは次回で。

ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ