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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
261/421

◆◆◆◆ 8-30 仇討ち始末 ◆◆◆◆

 三貴教の尼僧ゾダイの身を賭しての訴えを受けて、カイリンが選んだのは――


【 カイリン 】

「…………ッ」


 刀を、鞘に収めることだった。


【 カイリン 】

「……無関係の者の首を斬るなど、意味がナイッ……」


【 ゾダイ 】

「では……?」


【 カイリン 】

「……ッ、老いぼれッ! 勝負は……預けタッ!」


 そのままカイリンは背を向け、ひとり、駆け出した。

 いや、その様子はむしろ、逃げ出した――と言った方が正しい表現だったかもしれない。




【 ヤクモ 】

「…………」


 カイリンの背を見送りつつ、ヤクモもまた刃を収める。


【 ゾダイ 】

「……はぁっ……ふぅうっ……」


 大きく息をつくゾダイ。


【 ヤクモ 】

「御坊の捨身に、救われたな」


【 ゾダイ 】

「い、いえ――出過ぎた真似をいたしました。お赦しを……」


【 ヤクモ 】

「なんの、これも御坊の徳のなせるわざであろう」


【 ゾダイ 】

「それより、お怪我はっ……?」


【 ヤクモ 】

「なに、大したことはない。……さて」


 と、ヤクモがユイに向き直る。


【 ユイ 】

「…………」


 ユイもまた、すでに刀を収めていた。


【 ヤクモ 】

「――こうなることを、はじめから見越していたのか? 侠客よ」


【 ユイ 】

「……いえ。あいにく、そんな計算ができるほどには、利口ではありませんので」


【 ユイ 】

「ことが成らねば、ただただ、かの娘と枕を並べて斬られていただけのことでしょう」


【 ヤクモ 】

「どうかな。相討ちには持ち込めたかもしれぬぞ」


【 ユイ 】

「是が非でもとなれば、それもやむなしではありますが……」


 走り去るカイリンの背を見ながら。


【 ユイ 】

「――カイリン殿からは、将軍に対する恨みや憎しみは感じられませんでした。むしろ、話を聞けば聞くほど、敬意すら覚えているかのようで……」


【 ヤクモ 】

「…………」


【 ユイ 】

「……それでもなお、仇討ちに固執するのは、一族の誇りとか、そういったもののためかと思いましたが……どうも、そうでもない様子」


【 ユイ 】

「ならば、己の仇討ちの意味、重みを計る機会があれば、あるいは考えも変わるか、と思った次第――」


【 ヤクモ 】

「ふむ……ゾダイ殿が説伏せっぷくしてくれるであろう、と?」

 *説伏……説き伏せるの意。説得。


【 ユイ 】

「そこは、半々です。……うまくいけば御の字、成らねば死に花を咲かせるのみ、というつもりで」


【 ヤクモ 】

「やれやれ。いささか己の命を安く見積もりすぎるようだな、侠客というものは」


【 ユイ 】

「まったく――」


 ユイは、苦笑しながら首を振った。

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