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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
259/421

◆◆◆◆ 8-28 工夫 ◆◆◆◆

 ユイの分身を三体まで討ったヤクモだったが、最後のひとりの放った必殺の突きは、もはや回避不能の一撃。

 南寇王なんこうおう、ここに散る――かと思われたが、


【 ヤクモ 】

「――うぬッ!」


 ボキイッ!


【 背後のユイ 】

「な――」


 ヤクモの胴に刺さった――と見えた匕首あいくちが、根元からヘシ折れていた。

 呆気にとられた一瞬を、逃すことなく、


【 ヤクモ 】

「はッ!」


 ――ザシュウッ!


【 背後のユイ 】

「ぐッ……あッ……」


 ――ドサッ……


 四人目のユイも、血しぶきをあげ、地に伏した。


【 カイリン 】

「……ッ!! く、朽縄くちなわドノッ……!」


【 ゾダイ 】

「――――っ」


 ほんの数瞬のあいだに、はや、決着はついていた。


【 ヤクモ 】

「……やるものだな」


 匕首を突き立てられた脇腹をさすりつつ、顔をしかめるヤクモ。

 無傷とはいかなかったようで、着衣にじわりと血がにじんでいる。


【 ゾダイ 】

「今のは……内丹ないたんっ……!?」


 内丹とは、体内で陰陽の気を練ることで、肉体を活性化させる術である。

 今の場合、ヤクモはとっさに肌を硬質化させることで、刃を受け止めた――というわけだった。


【 ヤクモ 】

「……さて、これくらいは序の口なのであろう? なあ、風雲忍侠ふううんにんきょうよ」


【 カイリン 】

「…………ッ!?」


【 ユイ 】

「ご明察――」


【 カイリン 】

「ッ!? 朽縄くちなわドノ!?」


 気づけば地に転がっていた四体の骸は消え失せており、何食わぬ顔で無傷のユイがヤクモの背後に立っていた。


【 ユイ 】

「必殺の工夫を、こうもあっさりと返り討ちとは……いやはや、自信がなくなります」


【 ヤクモ 】

「ふむ……そうか。あらかじめ、この地になにやら仕掛けを施していたと見える」


【 ユイ 】

「そりゃあ、無為無策で勝てると思うほど、おごってはおりませんので」


【 カイリン 】

「そ、そうだったのカッ……!?」


【 ユイ 】

「そういうことだ。おいおい、まさか、俺が何の策もなしに挑むと思ってたんじゃあるまいな?」


【 カイリン 】

「いや……うむ、思っていタッ……!」


【 ユイ 】

「…………」


【 ヤクモ 】

「それで? また、影をけしかけてくるつもりか?」


【 ユイ 】

「ええ、ですが……四人は少なすぎたようです」


【 ユイ 】

「ゆえに――」


【 ヤクモ 】

「――――ッ」


【 ユイ 】

「――ぬんッ!」


 ボワァッ……


 ユイが気合を込めるとともに、地面から霧が立ち昇る。


【 カイリン 】

「な……っ!?」


【 ヤクモ 】

「――――っ」


 霧が晴れた、その後には――


【 ユイたち 】

『これなら――』


【 ユイたち 】

『――いい勝負には、なるかと』


 ヤクモを取り囲んだユイたちが、一斉に身構える。

 その数、ざっと五十人――

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