◆◆◆◆ 2-15 夜明けの出立 ◆◆◆◆
【 ユイ 】
(やれやれだ)
女官長の目を逃れて身を潜めつつ、ため息をつく。
【 ユイ 】
(それにしても……とんだことになっちまったな)
ことの一部始終を見守っていた〈風雲忍侠〉こと虎王・ユイは、あまりの予想外ななりゆきに、あっけに取られていた。
まさかあの小娘が、天子と契りを交わし、義妹となろうなどとは!
【 ユイ 】
(まさか、姐さんはすべてお見通しで……いや、そんなはずはないか)
そう、すべては偶然にすぎない。
だが、ある種の人間は、奇妙な力で偶然を必然に変えることがあるようだ。
【 ユイ 】
(あいつが、そういう人間だってことか? まさかね……)
なにやら皇帝陛下に髪の毛をいじられて逃げ回っているホノカナを遠目に、ユイは首を振った。
あの路地裏で彼が射手を討たなくても、状況はさほど変わらなかっただろう。
にもかかわらず、つい手を出してしまったのは……
【 ユイ 】
(俺の、甘さか?)
せめて、あふれる義の心ゆえ、ということにしておきたいものだ。
【 ユイ 】
「さて……ずらかるか」
先ほどから、うなじのあたりがチリチリと疼く。
【 ユイ 】
(わかってるさ。いいかげん、お暇するよ)
己をずっと視ている誰かにそう告げて、ユイは今度こそ宮城から退散することにした。
【 ユイ 】
(ん? ありゃあ、確か……)
夜が明けてまもなく、城門が開くなり、我先に飛び出していった集団がある。
それは、ヨスガに路銀を与えられた者たちの一部であった。
【 ユイ 】
(……思ったより、多いじゃあないか)
少女の与えた恩は、ささやかなものにすぎない。
だがそれで“生き返る”者も、きっと少なくはないのだ。
【 ユイ 】
(来てほしいもんだ、本当の夜明けってやつが――)
ユイは、心からそう思うのだった。
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