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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
249/421

◆◆◆◆ 8-18 密旨 ◆◆◆◆

【 ヤクモ 】

「ほう……?」


 いくさを終わりにしないか――というレツドウの言葉に、ヤクモは驚きの色も見せない。

 あらかじめ、予想していたのであろう。


【 レツドウ 】

「より正確に言えば――和睦せぬか、ということだ」


【 ヤクモ 】

「ふむ……」


 白髪交じりの髭をしごきつつ、ヤクモは淡々としている。


【 ユイ 】

(――やはり、そういう話か)


 ここで初めてレツドウの意を知ったユイもまた、さほど驚くことはなかった。

 敵の総大将であるヤクモと直接会談してまで話すことといったら、それしかない、といっていい。


【 レツドウ 】

「そちらとて、いくさは望むところではあるまい?」


【 ヤクモ 】

「もとより、そうですとも。なにせ、仕掛けてきたのはそちら。我らは、降りかかる火の粉を払っているだけなのですからな」


【 ヤクモ 】

「いくさを望まぬ――とのことなら、話は早い。さっさと荷物をまとめて引き上げればよろしいのでは?」


【 レツドウ 】

「だが、おめおめと見逃してはくれぬであろう?」


【 ヤクモ 】

「それはそうです。いくさのならい、というものですからな。逃げる者は、追い討つまで」


【 ヤクモ 】

「よしんば、私がそうせぬとしても、我が傘下に集まった者どもは、止めても聞かぬことでしょう」


【 レツドウ 】

「ふむ。さもあろうな」


【 ヤクモ 】

「――そもそも、この遠征を朝廷にて建議したのは、閣下だと聞いておりますが?」


【 レツドウ 】

「その通りだ」


 悪びれた様子もなく、頷いてみせる。


【 レツドウ 】

「私が兵権を手にするには、それしかなかったゆえな」


【 ヤクモ 】

「――わかりませぬな」


 首を振ってみせる。


【 ヤクモ 】

「わざわざ大軍を率いて、はるばる遠征してきておきながら、なぜ、ろくに戦いもせずに和睦を望まれる?」


【 レツドウ 】

「むろん、ただの気まぐれや苦し紛れの行いではない。これも大義あってのことだ」


 と、レツドウは居住まいを正すと、おもむろに懐から書状を取り出し、ヤクモに披露する。


【 ヤクモ 】

「――――っ」


 さしもの南寇王も、目を見開く。


【 ヤクモ 】

令旨りょうじですか。それも、これは――」

 *令旨……皇族などが出す命令書の意。


【 レツドウ 】

「さよう――皇太后陛下より授かった、密旨みっしである」

 *密旨……秘密裏に発された命令。ここでは令旨を指す。


 その密旨にいわく――


 ――天子ヨスガに、謀叛のきざしあり。

 ――我(コウ太后)を害し、権をもっぱらにせんとくわだてている。

 ――汝、兵をもってこれを正し、新帝を立てよ。


【 ユイ 】

(…………!)


 今度ばかりは、ユイは驚愕した。


【 ユイ 】

(新帝の、擁立だと……!?)

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