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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
239/421

◆◆◆◆ 8-8 静夜夫人 ◆◆◆◆

【 朽縄 】

「――――っ」


 とっさに、周囲を見渡す。


【 静夜夫人 】

「ああ、心配には及ばないよ。身内に裏切られたわけじゃない」


【 静夜夫人 】

「きみがここに来ると私が知ったのは、占いによってだからね」


【 朽縄 】

「…………っ」


【 静夜夫人 】

「おやおや、信じられない……という顔をしているね。まあ、無理もないか」


【 静夜夫人 】

「私は、いささか占いの心得があるんだよ。それで、今夜の出来事をあらかじめ知ることができた、というわけだ」


【 静夜夫人 】

「ただ、なんでも占えるわけではないけれどね。特に、自分のことはほとんど当たらないんだ。世の中、ままならないものさ」


【 朽縄 】

「…………」


【 静夜夫人 】

「おや、自分のことが占えないのに、なぜこの俺がここに来るとわかったんだ――とでも言いたげだね」


【 静夜夫人 】

「それは、私にもわからないけれど……思うにきっと、この出会いが私ではなく、きみにとって重大なものになるから、ではないかな。まあ、多分だけれど」


【 朽縄 】

「…………っ」


【 静夜夫人 】

「おいおい、物騒なものを持ち出すのは待ってくれ。もう少し付き合ってくれてもいいじゃないか」


【 朽縄 】

(なんなんだ、こいつはっ……?)


 朽縄は、匕首あいくちを握り締めたまま、困惑していた。

 飄飄ひょうひょうとしていて、まるで怯えた様子もない。


【 朽縄 】

(占い、だと……? ふざけているッ……!)


 占術せんじゅつというものがあることくらいは、彼も心得ている。

 だが、にわかに信じられるものでもない。


【 朽縄 】

(……いや、四の五の悩む必要はない。さっさと始末してしまえば……!)


 それが任務だ。

 今まで、一度たりとも、しくじったことはない。


【 朽縄 】

「…………っ」


 だが、なぜか一歩を踏み出せない。

 この女の戯言たわごとに、惑わされているのか?

 などと、考えを巡らせているところへ。


【 静夜夫人 】

「さて、少し落ち着いてきたかな? それじゃあ、さっそく本題に入ろう」


【 朽縄 】

「…………っ?」


【 静夜夫人 】

「私も暇ではないのでね。単刀直入に言おう」


【 静夜夫人 】

「私は、きみが欲しい。私の部下……いや、違うな。私の同志になってくれないか?」


【 朽縄 】

「……はぁっ?」


 黙っているつもりだったが、思わず声が出てしまう。


【 静夜夫人 】

「もちろん、タダでとは言わないよ。手付金として、こんなところでどうかな?」


 と、重そうな袋を取り出し、中身を見せる。

 そこには、まばゆいほどの金子きんすが詰まっていた。


【 朽縄 】

「…………っ」


 あまりのことに、しばし理解が追いつかなかったが、


【 朽縄 】

「ふ――ふざけるなッ……!」


【 静夜夫人 】

「おや、買収はお気に召さないようだね」


【 朽縄 】

「いい加減にしろッ……!」


 匕首を構え、女に狙いを定める。


【 静夜夫人 】

「まあ、万事がカネで話がつくなら、世の中、もっと簡単だからね。……仕方ない、別の方法にしよう」


【 朽縄 】

「――――ッ!」


 もはやそれ以上喋らせまいと、朽縄は一気に距離を詰め、女の白い喉笛を掻っ切ろうとする――


【 静夜夫人 】

「――――」


 ――ガキィンッ!


【 朽縄 】

「なッ……!?」


 得物まであと数歩、というところで。

 朽縄の凶刃は、受け止められていた。


【 ???? 】

「――やれやれ。お戯れがすぎますよ、お嬢さま」

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