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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
229/421

◆◆◆◆ 7-25 一礼 ◆◆◆◆

【 ヨスガ 】

「……どうも騒がしいな」


 いずこからか聞こえた雷鳴に眉をひそめるヨスガ。


【 ミズキ 】

「元気があってよろしいのでは」


【 ヨスガ 】

「……まあ、そういうことにしておこう」


 夜が更けても宴はなおも続いているが、ヨスガたちは宮城への帰り支度にかかっていた。

 といっても、あらかたは野営地に残るので、戻るのはヨスガ、ミズキら数人だけである。


【 ミズキ 】

「ランブきょう、いささか頬が赤いようですが……馬に乗れるのですか?」


【 ランブ 】

「ええ……ご心配なく。多少、盃を舐めた程度ですので」


 そう答えるランブは、確かに足元も確かなものだった。


【 ゼンキョク 】

「多少、ではなかったと思いますが……なにしろ、あの酒樽を空にしたのですから」


 どこか呆れ気味のゼンキョク。


【 ランブ 】

「なに、半分はあの御仁ですので」


 遠目に、ひっくり返って酔い潰れている砕嶺山さいれいざんの姿がある。

 どうやら、飲み比べの決着はついたようだった。


【 ヨスガ 】

「では――あとのことはお任せする、エイ将軍」


【 バイシ 】

「ああ、やれるだけのことはやるさ。ま、あとのことは、この子次第だけどね」


【 ホノカナ 】

「…………っ」


 必然、ホノカナはここに残ることとなる。


【 ヨスガ 】

「……なにか言いたそうだな」


【 ホノカナ 】

「い、言いたいことが、多すぎてっ……まとまりません!」


【 ヨスガ 】

「時が惜しい。手短に言え」


【 ホノカナ 】

「…………っ」


【 ホノカナ 】

「わたしっ……わたしはっ……」


【 ホノカナ 】

「…………っ」


【 ホノカナ 】

「……なにがあっても、ヨスガ姉さまのために、尽くします!」


【 ヨスガ 】

「それは、我がそなたの主君だからか? それとも、義姉あねだからか?」


【 ホノカナ 】

「両方です! そしてわたしは、わたしにできることを、しますっ……人侠烈聖じんきょうれっせいとして!」


【 ヨスガ 】

「……そうか」


 ホノカナの言葉に、ヨスガはわずかに目を細め、


【 ヨスガ 】

「持っておけ」


 と、佩刀を差し出した。


【 ホノカナ 】

「えっ!? でも、これって、国宝級の宝剣なんじゃ……!?」


【 ヨスガ 】

「本物ならな。それは本来、形代かたしろだ。だからといって、ただの飾りでもないが」

 *形代……ここではレプリカの意。


【 ホノカナ 】

「は、はぁ……では、お預かりします!」


【 ヨスガ 】

「うむ。…………」


【 ホノカナ 】

「……? あの、なにか……?」


【 ヨスガ 】

「……本当によいのだな?」


【 ホノカナ 】

「い、今さらそんなっ……! とっくに、覚悟は決めていますっ!」


【 ヨスガ 】

「……それならよい」


【 ホノカナ 】

「女官長さま――いえ、紅雪華こうせっか殿、姉さまのこと、よろしくお願いします」


【 ミズキ 】

「ええ――心得ました、副頭目」


 うやうやしく一礼するミズキ。


【 一同 】

「――――っ」


 そばに控えていたランブやゼンキョクら一党も、それにならい、ホノカナに一礼する。


【 ホノカナ 】

「…………っ」


 そんな彼らの態度に、ホノカナは、どこか空恐ろしいような心持ちを覚えたのだった……

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