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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
222/421

◆◆◆◆ 7-18 信念 ◆◆◆◆

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 ――これより、少し前のこと。


【 ランブ 】

「……この左手を、元に戻す、ということか?」


 自室に現れた方士・屍冥幽姫しめいゆうきによって僵尸きょうし化された己の左手を眺めながら、ランブが問う。


【 屍冥幽姫 】

「戻すというと、いささか語弊ごへいがありますが……むしろ、移植するといった方が正しいかもです……シシシ……」


【 ランブ 】

「その場合、この左手は、私の思い通りに動くのか……?」


 皿の上でビクンビクンと元気に跳ねている左手の様子に、ランブは眉をひそめる。

 たとえ繋がったとしても、己の意のままにならないのでは、ただの飾りにすぎないであろう。


【 屍冥幽姫 】

「う~ん、正直、生身の人間と僵尸化した肉体の一部をくっつけたことはないので、やってみないとわかりませんが……」


【 屍冥幽姫 】

「でも、気合と根性があれば、なんとかなると思います……シシシ! とはいえ、保証はしかねるというのが、実際のところでして――」


【 ランブ 】

「――よかろう。お任せしよう」


 迷うことなく、ランブは決断した。


【 屍冥幽姫 】

「……えっ? い、いいんですか? まだ誰にも試したことがないので、どうなるか、わかりませんが……」


【 屍冥幽姫 】

「うまく動かないくらいならまだしも、最悪……シシ……身体に害があるかも……」


【 ランブ 】

「どんなことにも、代償は必要なものだ」


 と、己の左腕を見て。


【 ランブ 】

「これから先、あの御方を守り抜くには……もっと力が必要だ」


 昨夜、相対した強敵〈戮仙劔君りくせんけんくん〉のことが思い出される。

 カズサの助太刀もあって、かろうじて撃退できたが、次も幸運が続くとは限らない。


【 ランブ 】

(もっと、もっと強くならねば……!)


 そのためには、打てる手はすべて打っておかねばならない。


【 ランブ 】

「そう……恐れてばかりはおれぬ。どうかお願いする、屍冥幽姫殿」


 と、姿勢を正し、深々と一礼する。


【 屍冥幽姫 】

「ああ――」


 屍冥幽姫は手を擦り合わせながら、感嘆の声をあげる。


【 屍冥幽姫 】

「貴方はやはり、見事な御方……! 必ずや、成功させてみせますともっ……シシシ!」


【 ランブ 】

「そうか……かたじけない」


【 屍冥幽姫 】

「あっ、それから、私のことはウヅキとお呼びくださいっ……」


【 ランブ 】

「お……おお、わかった、ウヅキ殿……よろしく頼む」




【 屍冥幽姫 】

「――かくのごとく、ランブさんには快諾していただけましたので、全力を尽くさせていただきました……ぶっつけ本番でしたが……シシシ……!」


【 ホノカナ 】

「だ、大丈夫なんですか!? そんな出たとこ任せな感じで……!?」


【 屍冥幽姫 】

「あの左手には、いろいろな呪物を注入したり、なんやかんや細工しているので、生身の頃よりずっと頑丈で、すごいことになっているのです……シシシィ……」


【 ゼンキョク 】

「ほほう……それはそれは、実に興味深いですねぇ……」


【 ホノカナ 】

「目をキラキラさせないでください……!」


【 ヨスガ 】

「…………っ」


 ランブの奮闘を、じっと見つめるヨスガ。


【 バイシ 】

「いい家臣をお持ちだね、お頭」


【 ヨスガ 】

「……我には、過ぎた臣というものであろう」


【 バイシ 】

「胸を張りな。あんたの臣が、誇れる主であるようにね」


【 ヨスガ 】

「心得ているとも……!」




【 砕嶺山 】

『……グゥ……オオォ……』


【 ランブ 】

「……ハァッ……ハァッ……!」


 熾烈な殴り合いを経てもなお、両者は膝をつくことなく、二本の足で地に立っていた。

 とはいえさすがに、


【 ランブ 】

「……くっ……ふぅっ、ふうぅっ……」


 体格に劣るランブの方が、より痛手が深いのは是非もない。

 それでもなお退かずにいるのは、武人の誇りであり、何よりも、


【 ランブ 】

「あの御方を否定する者に、屈するわけにはいかぬ……断じて!」


 そんな、意地そのものであろう。


【 砕嶺山 】

『グウウ……!』


【 ランブ 】

「貴公が、どんな信念を抱いているのか、私は知らぬ……しかし!」


 腰をグッとかがめて、左の拳を構える。


【 ランブ 】

「我が信念、受け止められるものなら、受け止めてみよッ……!」


【 ランブ 】

(力を貸してくれ、我が、左ッ……!)


 そのまま、旋回するようにして踏み込み、渾身の鉄拳を打ち込む――


【 ランブ 】

「――おおおおッ!」


【 砕嶺山 】

『グッ……ゴォオオオオッ!』


 砕嶺山の放った右の拳が、ランブの拳を迎え撃つ。


 ――ドゴオオォッ!!


 凄まじい衝突音が、鳴り響いた――

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