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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
221/421

◆◆◆◆ 7-17 空拳 ◆◆◆◆

【 砕嶺山 】

『グゴォッ……!』


【 ランブ 】

「ぬぅんッ!」


 ――ギイィンッ!


 強烈な鉄槌の一撃を、左右の斧で受け流す。


【 ランブ 】

「――ぬうッ……!」


【 砕嶺山 】

『ゴォガッ……!』


 間合いを詰めようと迫るランブを避ける。


【 ランブ 】

(……このままでは、らちが明かぬな)


【 ランブ 】

(この左手、いつまで“もつ”のか……?)


 ランブが内心でやや焦りを覚えていると、相手は思わぬ行動に出た。


【 砕嶺山 】

『グゥ……ゴゴッ……!!』


【 ランブ 】

「む――?」


 ズウウウゥン……


【 ホノカナ 】

「……っ? 槌を、置いてっ……」


【 バイシ 】

「ほうっ……面白いねえ!」


【 砕嶺山 】

『グウウ……!』


 左右の拳をガシガシとぶつけている。


【 ランブ 】

「ほう、徒手空拳なぐりあいでの勝負を望むか? ならば――」


 ザクッ……!


 ランブもまた、地に左右の斧を刺し、素手となる。


【 ランブ 】

「――受けて立とう」


【 ホノカナ 】

「ええっ!? そ、そんな、無茶ですよっ!?」


【 ゼンキョク 】

「確かに無茶です。あまりにも上背タッパ体重ウェイト範囲リーチが違いすぎる……しかし――」


【 砕嶺山 】

『グォッ……オオオッ!』


【 ランブ 】

「――ぬぉおおッ!」


 ――バキイッ!


【 砕嶺山 】

『グガッ……!?』


 ランブの放った左の拳が、巨漢の胴に食い込んでいた。

 甲冑を凹ませるほどの、すさまじい一撃である。


【 砕嶺山 】

『グッ……オオオオッ!』


 ――ドカッ!


【 ランブ 】

「ぐううッ……!」


 砕嶺山の右の拳が命中し、ランブを後方へと吹っ飛ばす。


【 ランブ 】

「やるなッ……!」


【 砕嶺山 】

『グウッ……オオオ……!!』




【 ホノカナ 】

「す、すごいっ……渡り合ってるっ……!」


 両者一歩も退かない壮絶な殴り合いに、目を奪われてしまう。


【 ヨスガ 】

「ランブならあれくらいはやる――が、あの左手は、いったい……?」


【 ???? 】

「シシシ……うまくいっているようで……」


【 ホノカナ 】

「ひゃあっ!? だ、誰ですかっ!?」


 突然背後に現れた奇怪な人物に、素っ頓狂な声をあげるホノカナ。


【 ゼンキョク 】

「なるほど……やはり貴方でしたか、ケイ姉妹きょうだい


【 ヨスガ 】

「そなた……そうか、例の僵尸きょうし使いか?」


【 屍冥幽姫 】

「お初にお目にかかります……世間では屍冥幽姫しめいゆうきと呼ばれておりまして……あ、俗名は〈ケイ・ウヅキ〉です……」


【 ヨスガ 】

「……そういうことか。あの左手は、そなたの仕事か」


【 屍冥幽姫 】

「シシシ……!」


【 ホノカナ 】

「えっ? ど、どういうことなんですか?」


【 ゼンキョク 】

「切断されたランブ殿の左手を僵尸と化して、元どおり接続した……と、いうことでしょう」


【 ホノカナ 】

「……っ!? そ、そんなことが……できるんですかっ?」


【 屍冥幽姫 】

「シ……シシ……シシシシシ……!」


【 ホノカナ 】

「全然答えてくれないんですけど……!?」

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