◆◆◆◆ 7-17 空拳 ◆◆◆◆
【 砕嶺山 】
『グゴォッ……!』
【 ランブ 】
「ぬぅんッ!」
――ギイィンッ!
強烈な鉄槌の一撃を、左右の斧で受け流す。
【 ランブ 】
「――ぬうッ……!」
【 砕嶺山 】
『ゴォガッ……!』
間合いを詰めようと迫るランブを避ける。
【 ランブ 】
(……このままでは、らちが明かぬな)
【 ランブ 】
(この左手、いつまで“もつ”のか……?)
ランブが内心でやや焦りを覚えていると、相手は思わぬ行動に出た。
【 砕嶺山 】
『グゥ……ゴゴッ……!!』
【 ランブ 】
「む――?」
ズウウウゥン……
【 ホノカナ 】
「……っ? 槌を、置いてっ……」
【 バイシ 】
「ほうっ……面白いねえ!」
【 砕嶺山 】
『グウウ……!』
左右の拳をガシガシとぶつけている。
【 ランブ 】
「ほう、徒手空拳での勝負を望むか? ならば――」
ザクッ……!
ランブもまた、地に左右の斧を刺し、素手となる。
【 ランブ 】
「――受けて立とう」
【 ホノカナ 】
「ええっ!? そ、そんな、無茶ですよっ!?」
【 ゼンキョク 】
「確かに無茶です。あまりにも上背、体重、範囲が違いすぎる……しかし――」
【 砕嶺山 】
『グォッ……オオオッ!』
【 ランブ 】
「――ぬぉおおッ!」
――バキイッ!
【 砕嶺山 】
『グガッ……!?』
ランブの放った左の拳が、巨漢の胴に食い込んでいた。
甲冑を凹ませるほどの、すさまじい一撃である。
【 砕嶺山 】
『グッ……オオオオッ!』
――ドカッ!
【 ランブ 】
「ぐううッ……!」
砕嶺山の右の拳が命中し、ランブを後方へと吹っ飛ばす。
【 ランブ 】
「やるなッ……!」
【 砕嶺山 】
『グウッ……オオオ……!!』
【 ホノカナ 】
「す、すごいっ……渡り合ってるっ……!」
両者一歩も退かない壮絶な殴り合いに、目を奪われてしまう。
【 ヨスガ 】
「ランブならあれくらいはやる――が、あの左手は、いったい……?」
【 ???? 】
「シシシ……うまくいっているようで……」
【 ホノカナ 】
「ひゃあっ!? だ、誰ですかっ!?」
突然背後に現れた奇怪な人物に、素っ頓狂な声をあげるホノカナ。
【 ゼンキョク 】
「なるほど……やはり貴方でしたか、圭の姉妹」
【 ヨスガ 】
「そなた……そうか、例の僵尸使いか?」
【 屍冥幽姫 】
「お初にお目にかかります……世間では屍冥幽姫と呼ばれておりまして……あ、俗名は〈圭・ウヅキ〉です……」
【 ヨスガ 】
「……そういうことか。あの左手は、そなたの仕事か」
【 屍冥幽姫 】
「シシシ……!」
【 ホノカナ 】
「えっ? ど、どういうことなんですか?」
【 ゼンキョク 】
「切断されたランブ殿の左手を僵尸と化して、元どおり接続した……と、いうことでしょう」
【 ホノカナ 】
「……っ!? そ、そんなことが……できるんですかっ?」
【 屍冥幽姫 】
「シ……シシ……シシシシシ……!」
【 ホノカナ 】
「全然答えてくれないんですけど……!?」
ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!




