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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
22/421

◆◆◆◆ 2-12 神祖の影 ◆◆◆◆

【 ホノカナ 】

「そ、それにしても、まさか陛下が、微行びこうなさっていただなんて……まるで、神祖しんそさまのようです!」


 乱れた髪の毛を直しながら、ホノカナが言う。


【 ヨスガ 】

「ほう、よく知っておるな」


【 ホノカナ 】

「はいっ、それはもう! 両親からよく教わりました!」


 帝国の祖である〈神祖武烈替天皇帝しんそ・ぶれつたいてんこうてい〉もまた、しばしば変装して城を出て、下々の暮らしを探った……という伝説が残っている。


【 ヨスガ 】

「まあ、我の場合は、世情を探るためといえば聞こえはいいが……ただの憂さ晴らしにすぎぬのかもしれぬ」


【 ホノカナ 】

「えっ? でも、ええと……〈宝玲山ほうれいざん〉に同志を集めてるって……」


【 ヨスガ 】

「一応は、それも目的ではあるがな。あの者たちのうち、どれだけの人数が言われたとおりにすると思う?」


【 ホノカナ 】

「ええっと……半分くらいは?」


【 ヨスガ 】

「せいぜい一割だ」


 あっさりと告げる。


【 ホノカナ 】

「……っ、じゃあ、残りの九割の人たちは……」


【 ヨスガ 】

「少々縄張りを変えて、同じことを繰り返すだけだ。なにせ、帝都は広いゆえな」


【 ホノカナ 】

「…………」


【 ヨスガ 】

「根本を解決せぬかぎり、世は改まらぬ。それでも、我は……なにもせずにはいられぬのだ」


【 ホノカナ 】

「――――素晴らしいと思いますっ!」


【 ヨスガ 】

「…………っ」


【 ホノカナ 】

「神様じゃないんだから、ぜんぶは無理です! それでも、できるかぎりのことをやろうとすれば、きっと――なんというかこう、その……いい感じになると思います!」


【 ヨスガ 】

「……やはりお前は、不調法者いなかものだな!」


【 ホノカナ 】

「め、面目ありません……!」


 謝りつつも。

 ホノカナは、ヨスガが少し笑みをうかべているのを、初めて見た気がしていた。




【 ヨスガ 】

「――さて、女官〈リン・ホノカナ〉よ」


【 ホノカナ 】

「…………っ」


 改まった口調で名を呼ばれ、思わずかしこまる。


【 ヨスガ 】

「そなたは、大勢の前で我を痛罵し、恥辱を与えた。その罪は、今宵の手柄に免じて許そう」


【 ホノカナ 】

「あ、ありがとうございます……!」


【 ヨスガ 】

「……しかし、いきなり無罪放免では、それと知らぬ者たちは疑問に思うであろう」

「よって、しばし暴室に入っておれ。手ごろなところで、ミズキあたりの嘆願でようやく解放された……ということにしてやる」


【 ホノカナ 】

「な、なにからなにまで……そのあとは、もとのお仕事に戻れるんですね?」


【 ヨスガ 】

「それは無理だな」


 ヨスガは、あっさりと答えた。


【 ホノカナ 】

「ええーっ!? ど、どういうことでしょう……」


【 ヨスガ 】

「考えてもみよ。皇帝の秘密を知ったそなたを、野放しにできると思うか?」


【 ホノカナ 】

「そ、それは――ええと、では――?」

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