◆◆◆◆ 7-9 代案 ◆◆◆◆
【 ヨスガ 】
「む……」
【 宝玲山の将 】
「おお――〈白銀夜叉〉殿!」
まっしぐらに馬を飛ばしてその場へと駆けつけてきたのは、他ならぬ白銀夜叉こと霙・バイシである。
【 バイシ 】
「そのお裁き、ちと待っておくれ――提案があるッ!」
と、下馬しながら進言する。
【 ホノカナ 】
「ぜぇっ、ぜぇえっ……は、吐きそうっ……」
荒い息をついているのは、バイシの脇に抱えられていたが、今や地面に下ろされて青色吐息のホノカナ。
馬に酔う性分ではない彼女だが、それだけとんでもない速度で駆けてきた証拠であろう。
【 宝玲山の将 】
「(……誰だ、あの小娘は?)」
【 宝玲山の将 】
「(さあ……まさか、途中でさらってきたというわけでもあるまいが?)」
場にそぐわぬホノカナの姿に、将兵たちは困惑を隠せない。
【 ホノカナ 】
「~~~~っ……」
ホノカナはホノカナで、荒くれ者たちの視線を一身に浴び、当惑する。
【 ホノカナ 】
(こ、この人たちが、宝玲山の本隊っ……!)
間近で見ると、勇ましさというより、禍々(まがまが)しさすら漂わせた者が少なくない。
【 ホノカナ 】
(うわ、あの人、大きい!? ランブさんの倍くらいあるかもっ……あの人たち、虎や獅子みたいなんだけどっ……なんだか、翼生えてる人もいるぅ……!?)
【 ヨスガ 】
「…………」
そんなホノカナをチラリと見て、ヨスガはバイシに向き直る。
【 ヨスガ 】
「それで――副頭目、提案とは?」
【 バイシ 】
「確かに、この連中は罪を犯した。そいつは間違いない。だが、大将を務めたあたしにも責任の一端がある。そうじゃないかい?」
【 ヨスガ 】
「それは……なしとは言わぬが、ならばどうする?」
【 バイシ 】
「ふむ、そうだねえ――」
と、処刑人へと目を向ける。
【 処刑人 】
「…………」
【 バイシ 】
「この首で勘弁してもらう……と言いたいところだけど、あいにく、まだ差し出すわけにはいかないんでね」
と、太い首をパシパシと叩きつつ、囚人たちに目を向ける。
【 バイシ 】
「どうだい、あんたたち、命は惜しいかい?」
【 無頼漢たち 】
「も、もちろんっ……!」
【 無頼漢たち 】
「に、二度と、盗賊ばたらきなんぞしねえっ! だから、どうか、お慈悲をっ……!」
恥も外聞もなく、必死に助命を願ってくる。
【 バイシ 】
「それなら、だ。こういうのはどうだい?」
【 バイシ 】
「この連中を助命してもらう代わりに、あたしは責任を取って副頭目の座を下りよう。これからは一兵卒として扱っておくれ」
【 ヨスガ 】
「――――っ」
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