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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
213/421

◆◆◆◆ 7-9 代案 ◆◆◆◆

【 ヨスガ 】

「む……」


【 宝玲山の将 】

「おお――〈白銀夜叉しろがねやしゃ〉殿!」


 まっしぐらに馬を飛ばしてその場へと駆けつけてきたのは、他ならぬ白銀夜叉ことエイ・バイシである。


【 バイシ 】

「そのお裁き、ちと待っておくれ――提案があるッ!」


 と、下馬しながら進言する。


【 ホノカナ 】

「ぜぇっ、ぜぇえっ……は、吐きそうっ……」


 荒い息をついているのは、バイシの脇に抱えられていたが、今や地面に下ろされて青色吐息のホノカナ。

 馬に酔う性分ではない彼女だが、それだけとんでもない速度で駆けてきた証拠であろう。


【 宝玲山の将 】

「(……誰だ、あの小娘は?)」


【 宝玲山の将 】

「(さあ……まさか、途中でさらってきたというわけでもあるまいが?)」


 場にそぐわぬホノカナの姿に、将兵たちは困惑を隠せない。


【 ホノカナ 】

「~~~~っ……」


 ホノカナはホノカナで、荒くれ者たちの視線を一身に浴び、当惑する。


【 ホノカナ 】

(こ、この人たちが、宝玲山の本隊っ……!)


 間近で見ると、勇ましさというより、禍々(まがまが)しさすら漂わせた者が少なくない。


【 ホノカナ 】

(うわ、あの人、大きい!? ランブさんの倍くらいあるかもっ……あの人たち、虎や獅子みたいなんだけどっ……なんだか、翼生えてる人もいるぅ……!?)


【 ヨスガ 】

「…………」


 そんなホノカナをチラリと見て、ヨスガはバイシに向き直る。


【 ヨスガ 】

「それで――副頭目、提案とは?」


【 バイシ 】

「確かに、この連中は罪を犯した。そいつは間違いない。だが、大将を務めたあたしにも責任の一端がある。そうじゃないかい?」


【 ヨスガ 】

「それは……なしとは言わぬが、ならばどうする?」


【 バイシ 】

「ふむ、そうだねえ――」


 と、処刑人へと目を向ける。


【 処刑人 】

「…………」


【 バイシ 】

「この首で勘弁してもらう……と言いたいところだけど、あいにく、まだ差し出すわけにはいかないんでね」


 と、太い首をパシパシと叩きつつ、囚人めしゅうどたちに目を向ける。


【 バイシ 】

「どうだい、あんたたち、命は惜しいかい?」


【 無頼漢たち 】

「も、もちろんっ……!」


【 無頼漢たち 】

「に、二度と、盗賊ばたらきなんぞしねえっ! だから、どうか、お慈悲をっ……!」


 恥も外聞もなく、必死に助命を願ってくる。


【 バイシ 】

「それなら、だ。こういうのはどうだい?」


【 バイシ 】

「この連中を助命してもらう代わりに、あたしは責任を取って副頭目の座を下りよう。これからは一兵卒として扱っておくれ」


【 ヨスガ 】

「――――っ」

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