◆◆◆◆ 7-7 白銀夜叉 ◆◆◆◆
霙・バイシ。
彼女が生まれた霙氏は、多くの英雄豪傑を輩出した武勇の家として古来より知られていた。
バイシもまた、女ながらに若くして武に親しみ、体格に恵まれたこともあって、たちまち頭角を現していった。
【 バイシ 】
『この器量じゃあ、どうせ嫁の貰い手もないしね!』
〈夜叉凍将〉の異名を取る剛勇ぶりを発揮し、ついには一軍の将にまで成り上がったのである。
そのまま、いち武人として生涯を戦場で過ごすつもりだったバイシだが、そんな彼女の運命が一変したのは、本家筋にあたる雪氏の男と結婚したためだった。
夫となった男は生まれつき身体が弱く、雪一族の中でも浮いた存在であり、
【 世の人 】
『武勇隠れなき夜叉凍将バイシを身内に取り込まんとする、雪氏の深謀遠慮であろう――』
などと、噂された。
そんな政略結婚ではあったが、この凸凹夫婦は意外とウマが合い、二男二女を授かった。
そのうえ、バイシは武将を引退することもなく、大きな腹を抱え、乳飲み子を連れて戦場を駆け回ったものである。
この夫婦の末の子が、雪・レイセイ……
すなわち、焔・ヨスガの母に他ならない。
レイセイは容貌すぐれ、性格は柔和で知恵もあり、天子に見初められて後宮に入り、すこぶる寵愛された。
そこまでは、思わぬ幸運と思われたが……
好事魔多し、とは良くいったもの。
――十五年前の〈三氏の乱〉。
雪氏は叛逆の罪で滅亡させられ、霙氏もまた巻き添えをくい、はなはだ衰退した。
そんな中、バイシは多くの身内を失いつつも逃げ延び、宝玲山に立てこもり、雌伏していたのである。
いつしか、宝玲山の白銀夜叉と言えば、腕の立つ山賊として世間に名を轟かせるに至った。
だがもはや、再び世に出ることもなかろう、と思い定めていたところだったが……
【 バイシ 】
「――あの子に、手伝ってくれって頼まれてね。もう一仕事してやろうって決めたってわけさ!」
【 ホノカナ 】
「そ、そういうわけ、なんですね……!」
簡単にいきさつを説明されつつ、
【 ホノカナ 】
「そ、それでっ、これから、どこにっ……?」
気づけば、内廷どころか、宮城からも出てしまっている。
【 バイシ 】
「なぁに、行けばわかるとも!」
からからと高笑いし、バイシはさらに馬の速度を上げる。
【 ホノカナ 】
(や、やっぱり、よく似てるかもぉ……!)
この強引さは、なるほど、祖母から孫へ受け継がれたものなのかもしれなかった。
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