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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
21/421

◆◆◆◆ 2-11 皇帝と宮女 ◆◆◆◆

 どこかで鶏の声がする。


【 ヨスガ 】

「まだ暗いというのに、気が早いものだな」


 夜明け前。

 ヨスガの姿は、帝の寝室の露台バルコニーにあった。


【 ホノカナ 】

「…………」


 そのかたわらに控えているのは、ホノカナひとりである。

 日中から、なんとさまざまな出来事が立て続けに起きたことだろう。

 疲労困憊ひろうこんぱいのはずであったが、なぜか、まるで眠くはなかった。


【 ヨスガ 】

「それで――」


 と、ヨスガはホノカナに向き直る。


【 ヨスガ 】

「先ほどの一件、どう思った? 率直に申すがよい」


【 ホノカナ 】

「え、ええっと――その――」


 ホノカナは恐縮しつつも、


【 ホノカナ 】

「なんていうか、その……陛下は、とても楽しそうでした!」


【 ヨスガ 】

「……そうきたか」


 虚を突かれたように、ヨスガは唇を結んだ。


【 ホノカナ 】

「し、失礼いたしましたっ!」


【 ヨスガ 】

「いや……そうだな。確かに、我は楽しんでおったのかもしれん」


 その横顔は、どこか寂しげで。


【 ヨスガ 】

「……先ほども言ったが、皇帝陛下などといっても、我はしょせん傀儡くぐつにすぎん。実権などまるでないのだ」


【 ホノカナ 】

「…………」


【 ヨスガ 】

「それでも、利発な、聡明な天子……などと評判が立っては警戒されて厄介ゆえ、歌舞音曲に溺れる、無能な小娘を演じておる」


【 ホノカナ 】

「…………」


【 ヨスガ 】

「まぁ、歌や楽器をこよなく好いておるのは確かだがな!」


【 ホノカナ 】

「…………」


【 ヨスガ 】

「しかし、それだけでは芸がないと思って、幾人かの宮女を城の外に出し、違う任務を与えておる。〈紅頬女帝〉とやらも、我がみずから流した噂話よ」


【 ホノカナ 】

「じ、自作自演……!」


【 ヨスガ 】

「そういうことだ。加えて、たまには実際にことを起こさねばと思い、宮女虐待の一幕を演じるつもりであったが……」


【 ホノカナ 】

「えっと……もしかして、わたしのせいで台無し……に?」


【 ヨスガ 】

「よくわかっておるではないか~っ!」


【 ホノカナ 】

「ひうっ!?」


 いきなり髪の毛をわしゃわしゃとされて、ホノカナは妙な声を漏らす。


【 ヨスガ 】

「……だがまぁ、結果的にはよかった。そなたの悪口雑言に怒り、手打ちにしようとした……という噂が広がるであろうからな」


【 ホノカナ 】

「な、なるほど……災い転じて福をなす、ですねっ!」


【 ヨスガ 】

「調子に乗るな~~っ!」


【 ホノカナ 】

「ひうう~~っ!?」


 ますます髪をくしゃくしゃにされて、ホノカナは悶絶した。

 怒りながらもどこか楽しそうなヨスガの姿に、新鮮な感覚をおぼえずにはいられない。


【 ホノカナ 】

(こんな御方だったなんて――)

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