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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
208/421

◆◆◆◆ 7-4 屍冥幽姫 ◆◆◆◆

【 ランブ 】

「――何者だ」


 早くも冷静さを取り戻し、短剣を抜いて身構えるランブ。

 室内においては、自慢の大斧を振るうのは容易ではないからである。


【 ???? 】

「おおっと……怒らないで……シシシ……親愛なる仲間ですのに……シシッ……」


 部屋の隅の暗がりからユラリと姿を現したのは、目を布で隠した、白装束の方士風の女である。


【 ランブ 】

「貴公は――そうか、宝玲山ほうれいざんの新入りか……!」


【 ???? 】

「シ、シ、シ……お初にお目にかかります……人呼んで、〈屍冥幽姫しめいゆうき〉――」


 薄笑いとともに一礼したその女は、昨夜の戦いにおいて、宝玲山からの援軍に加わっていた一人であった。


【 ランブ 】

「〈冥軍めいぐん〉だったか……死者の軍勢を操る者がいたが、それが貴公だな?」


【 屍冥幽姫 】

「いかにも……シシシ……」


 死体に仮初かりそめの命を与え、〈僵尸きょうし〉と呼ばれる動く屍として、自在に操る……

 そんな術者がいることは聞いたことがあったが、まさか味方側に加わっているとは予想外だった。


【 ランブ 】

「……それも、貴公の仕業か? ずいぶん趣味が悪いな」


 卓の上でなおもピクピクと動いている己の左手を見て、顔をしかめるランブ。


【 屍冥幽姫 】

「シシ……あいさつ代わりにと、思って……シシッ、なかなか、面白い、でしょう……?」


 口の端を吊り上げて笑う屍冥幽姫。


【 ランブ 】

「面白いものか――」


 眉をひそめ、ランブは吐き捨てるように返す。


【 屍冥幽姫 】

「えっ……? 面白く、ない……?」


【 ランブ 】

「当たり前だっ……! 父母から授かった手足を玩具のようにもてあそばれて、喜ぶ者などいるはずもあるまいっ!」


【 屍冥幽姫 】

「……そ、そう……ごめんなさい。その……私は……面白いと、思って……」


 見るからにシュンと肩を落としている屍冥幽姫。

 その様子に、今度はランブが困惑する。


【 ランブ 】

「……待て、本当にこれが面白いと思ったのか? 私が喜ぶと思って……?」


【 屍冥幽姫 】

「……え、えぇ……びっくりしてくれるかなと、思って……」


【 ランブ 】

「……確かに驚きはしたが、喜びはないな」


【 屍冥幽姫 】

「あ、あぁ……ごめんなさい……私、いつもこうで……」


 先ほどまでの妖しげな雰囲気はどこへやら、すっかりオロオロとまごついている。


【 ランブ 】

「……もういい、気にするな。悪気がないのはわかった」


 方士の中には、初対面においてハッタリをきかせ、相手を威圧したり惑乱させて、優位に立とうとする輩が少なくない。

 この場合もその類かと疑ったランブだったが……どうやらそうではなく、文字通りのあいさつ代わりにすぎなかったようだ。


【 ランブ 】

(それはそれで、余計にやっかいではあるが……)

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