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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
207/421

◆◆◆◆ 7-3 左手 ◆◆◆◆

【 ランブ 】

「…………っ!」


 ナギ・ランブは意識を取り戻し、弾かれたように身を起こした。

 いつの間にか、自室の寝台に横たわっていたのだ。


【 ランブ 】

(――っ、眠っていたのか……)


 思い起こすと、ミズキに半ば脅されるようにして、寝室へ放り込まれたのだった。


【 ランブ 】

「…………っ」


 左手が疼く。

 肘から先は失われ、切断面はふさがれており、痛みはないが……


【 ランブ 】

(……左手一本で済んで良かった、と思うべきか)


 昨夜の死闘を思い起こすと、こうして生き延びられただけでも、僥倖ぎょうこうというしかない。


【 ランブ 】

(……〈双豪斧そうごうふ〉の二つ名は、返上せねばなるまいな)


 となると、単豪斧たんごうふということになるのであろうか。

 亡父の異名である〈飛豪斧ひごうふ〉を称するわけにもいかないが。


【 ランブ 】

(ともあれ、こうしてはおれん――)


 むざむざと惰眠を貪っている場合ではない。

 ランブは寝台を離れ、身支度を整えようとする……


【 ランブ 】

「……む?」


 ふと、テーブルに見慣れないものがあるのに気づいた。

 皿の上に、白い布で覆われたものが載っている。


【 ランブ 】

(誰かの、差し入れか? ミズキ殿だろうか……)


 なにげなく布を取ってみると――


【 ランブ 】

「うっ……!」


 豪気なランブも、目を見開き、思わず唸り声をこぼした。

 それも道理で、その皿の上に置いてあるのは……


【 ランブ 】

(人の……手!?)


 それも、その造形は、明らかに見覚えのあるもので。


【 ランブ 】

(私の……左手かっ?)


 かの難敵〈戮仙劔君りくせんけんくん〉の一撃によって落とされた彼女の左手、そのものだった。

 拾っていく暇もなく、極龍殿の正門に置き去りにしてきたはずだが……


【 ランブ 】

(誰かの、戯れなのか?)


 だとしたら、悪趣味にもほどがある。

 薄気味悪く思いつつも、


【 ランブ 】

(……長年、よく働いてくれたものだ)


 と、長らく付き合ってきた我が左手をいたわるように、右手を伸ばす――


 ……ピクッ……


【 ランブ 】

「――――っ!?」


 再び、ランブは驚愕し、飛び退いた。


 ……ヒク……ヒクヒク……


【 ランブ 】

「これは――」


 切り落とされた左手が、まるで生きているかのように、動いている……!


【 ランブ 】

(夢……か? それとも、幻覚かっ……!?)


 異様な状況に戸惑う彼女の耳に、


【 ???? 】

「……シ、シ、シシシ……成功、成功……!」


 奇妙な笑声が、響き渡る――

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