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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
20/421

◆◆◆◆ 2-10 天侠大聖 ◆◆◆◆

【 ヨスガ 】

「ふん、ようやく仕事をしたか、ヘボ軍師」


【 セイレン 】

「はははは! むろんですとも、陛――いえ、千金小姐おじょうさま! これぞ天をも惑わす我が秘術! ……まぁ、実際には視界を惑わせているだけですが! ね!」


【 ホノカナ 】

「うわ、わわわ……」


 遅れて修羅場にやってきたホノカナは、その異様な光景にあっけにとられていた。


【 ホノカナ 】

「こ、これって、いったい……」


【 ヨスガ 】

「見ればわかるであろう? 盗賊退治だ――さぁ、刀をよこせ!」


【 ホノカナ 】

「はっ、はいい……!」


 ヨスガに言われて、慌てて宝刀を手渡すホノカナ。


【 ヨスガ 】

「聞け、不逞ふていの輩よ! 我は皇帝陛下をお慕いする義士なり!」


 いつの間にかミズキの手で縛り上げられた賊たちの前で、堂々と宣言するヨスガ。


【 ごろつき 】

「げっ……するともしや、あの名高い〈天侠大聖てんきょうたいせい〉さまでは――」


【 ヨスガ 】

「その通り。我は世の乱れを憂い、天に替わってこれを正さんと志しておる。これは本来、皇帝陛下のなすべきことながら……」


【 ホノカナ 】

「…………っ」


 一瞬、チラリとホノカナを見て。


【 ヨスガ 】

「――されどいまだ陛下は幼弱にして、まつりごとは皇太后や仙術師どもの手中にある」

「よって我は、悪人どもを成敗するべく、夜な夜な帝都を彷徨ほうこうしておるのだ」


【 ごろつき 】

「――――」


 しかるに、とヨスガは続ける。


【 ヨスガ 】

「そなたたちの中には、救いようのない悪党もいれば、やむなく悪事に手を染めるにいたった者もいよう。ぜひなきことだ」


【 ごろつき 】

「…………」


【 ヨスガ 】

「ここでそなたたちを殺めるのはたやすい。しかし、我は義士である。そなたたちの何割かでもが、善道に戻ることを期待したい。よって――」


 ミズキが、懐からいくばくかの銀貨を取り出す。


【 ヨスガ 】

「この路銀で、〈宝玲山ほうれいざん〉へ行くがよい。そこにいるのは山賊なれど、我が同志なれば、それより先の道はただの悪ではなく、善へ向かうための道となるのだ」


【 ごろつき 】

「…………っ」


【 ヨスガ 】

「夜明けとともにゆくがよい。そしてもし、またこの帝都でそなたたちを見かけたならば――」


【 ミズキ 】

「ふふ」


【 ごろつき 】

「ひっ――」


 ミズキが髪をかき上げるのを見て、男たちは恐懼し、平伏した。


【 ホノカナ 】

(……っ、これって……)


 そんな光景を、ホノカナは茫然となって見つめていた。

 ――しかし、ふと、その視線の先に。


【 ホノカナ 】

「――陛下っ!!」


【 ヨスガ 】

「!?」


 いきなりホノカナに突き飛ばされ、ヨスガはたまらずつんのめる。

 その間近を、一筋の矢が通り過ぎていった。


【 射手 】

「ちい――」


 屋根の上に潜んでいた射手が、二の矢をつがえる前に。


【 射手 】

「――ぐあっ!?」


 その身は、地面に転落していた。


【 ホノカナ 】

「ご、ご無事ですか、陛下っ!」


【 ヨスガ 】

「……これが無事に見えるか?」


【 ホノカナ 】

「も、申し訳ありませ~~んっ!」


 顔から泥に突っ込んだヨスガを引っ張り起こしながら、ホノカナは絶叫した……

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