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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
197/421

◆◆◆◆ 6-102 燎氏の変(89) ◆◆◆◆

 ――スパァンッ!


【 セイレン 】

『おおっ! お見事っ!』


 蔦が両断されると同時に、周囲の風景がぼやけ始める……


【 ヨスガ 】

「……これでおしまい、ということになるのか?」


【 セイレン 】

『そうですねぇ、恐らくは――おやっ? あっ、これはぁ……』


【 ホノカナ 】

「な、なんですかっ……あからさまに嫌な予感がするんですけど?」


【 セイレン 】

『まずいですね……どうやら、先ほどの着地点はじまりのばしょに戻らないと、魂魄が……その、うまくアレしないかも……』


【 ホノカナ 】

「アレってなんなんですかぁ!?」


【 セイレン 】

『つまりその……このまま完全に千陣軍魔デカブツが分解されてしまうと、この内的世界こころも消滅してしまうので、それに巻き込まれると……気まずいことに……!』


【 ホノカナ 】

「だから気まずいってどういうふうにぃ!?」


【 ヨスガ 】

「とにかく、最初の場所に戻れば良いのだな?」


【 ホノカナ 】

「で、でもっ、そんなの覚えてないですっ……!」


【 ヨスガ 】

「案ずるな。こんなこともあろうかと――」


 と、セイレン絨毯を引っ張るヨスガ。

 見れば、端がほつれて、糸が伸びている。


【 ヨスガ 】

「――最初の場所にあった樹に、結んでおいたゆえな!」


【 ホノカナ 】

「ああっ!? 道理で、だんだん軽くなってる気がしてました……!」


【 セイレン 】

『おおっ!? いつの間にっ……!?』


【 ホノカナ 】

「どうして気づかなかったんです!? でも、よくこんな準備を……」


【 ヨスガ 】

「前に似たような経験をしたことがあってな。転ばぬ先の杖というものだ――とにかく、急ぎ戻るぞっ!」


【 ホノカナ 】

「…………っ」


 ホノカナは走り出しかけて、ふと振り向いた。


【 ホノカナ 】

「あの――家宰かさいさんっ!」


【 リョウ家の家宰かさい 】

「――――っ」


【 ホノカナ 】

「あなたはあなたで、大変だったんだと思いますっ……! でも、あなたたちの行いで、ひどいことになったのは確かでっ……」


【 ホノカナ 】

「だから――せめて逃げずに、向き合ってくださいっ……それだけですっ!」


【 リョウ家の家宰かさい 】

「…………っ」


【 ヨスガ 】

「――ゆくぞ!」


【 ホノカナ 】

「はいっ……!」




 一方、外の世界においては……


【 ギョクレン 】

「……っ、ぜぇ、ぜぇっ……さ、さすがに……もう……限界で、ございます……!」


【 千陣軍魔 】

『オ、オ、オオオ……!!』


 見るからにギョクレンの放つ雷の勢いが弱まり、千陣軍魔が自由を取り戻しつつある……


【 ランブ 】

「くっ……!」


 横になっているヨスガたちを守るように立ちはだかるランブ。


【 エキセン 】

「むっ……? なにやら、様子が……」


【 千陣軍魔 】

『……ガアアアア……アアアアア!』


【 ミズキ 】

「っ! 身体が、崩れているっ……?」


【 カズサ 】

「やった……のねっ? 陛下たちがっ……!」


【 ゼンキョク 】

「むむ……どうやら、そのようですね」


 ややあって、崩壊が始まった。


 シュウウウ……


【 千陣軍魔 】

『……ァ……ア……アァァ……ァァァ……』


 黒い霧が立ち昇り、巨体がボロボロと溶け崩れていく……


【 ギョクレン 】

「……はぁっ、ふぅっ……〈概念〉の解除を確認……あとはただ、崩れるのを待つだけでございます……!」


【 ミズキ 】

「――っ、陛下たちはっ……!?」


 一同の視線が、ヨスガたちに向けられる。


【 ヨスガ 】

「…………」


【 ホノカナ 】

「…………」


 しかしいまだ、目覚める気配はない――

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