◆◆◆◆ 6-102 燎氏の変(89) ◆◆◆◆
――スパァンッ!
【 セイレン 】
『おおっ! お見事っ!』
蔦が両断されると同時に、周囲の風景がぼやけ始める……
【 ヨスガ 】
「……これでおしまい、ということになるのか?」
【 セイレン 】
『そうですねぇ、恐らくは――おやっ? あっ、これはぁ……』
【 ホノカナ 】
「な、なんですかっ……あからさまに嫌な予感がするんですけど?」
【 セイレン 】
『まずいですね……どうやら、先ほどの着地点に戻らないと、魂魄が……その、うまくアレしないかも……』
【 ホノカナ 】
「アレってなんなんですかぁ!?」
【 セイレン 】
『つまりその……このまま完全に千陣軍魔が分解されてしまうと、この内的世界も消滅してしまうので、それに巻き込まれると……気まずいことに……!』
【 ホノカナ 】
「だから気まずいってどういうふうにぃ!?」
【 ヨスガ 】
「とにかく、最初の場所に戻れば良いのだな?」
【 ホノカナ 】
「で、でもっ、そんなの覚えてないですっ……!」
【 ヨスガ 】
「案ずるな。こんなこともあろうかと――」
と、セイレン絨毯を引っ張るヨスガ。
見れば、端がほつれて、糸が伸びている。
【 ヨスガ 】
「――最初の場所にあった樹に、結んでおいたゆえな!」
【 ホノカナ 】
「ああっ!? 道理で、だんだん軽くなってる気がしてました……!」
【 セイレン 】
『おおっ!? いつの間にっ……!?』
【 ホノカナ 】
「どうして気づかなかったんです!? でも、よくこんな準備を……」
【 ヨスガ 】
「前に似たような経験をしたことがあってな。転ばぬ先の杖というものだ――とにかく、急ぎ戻るぞっ!」
【 ホノカナ 】
「…………っ」
ホノカナは走り出しかけて、ふと振り向いた。
【 ホノカナ 】
「あの――家宰さんっ!」
【 燎家の家宰 】
「――――っ」
【 ホノカナ 】
「あなたはあなたで、大変だったんだと思いますっ……! でも、あなたたちの行いで、ひどいことになったのは確かでっ……」
【 ホノカナ 】
「だから――せめて逃げずに、向き合ってくださいっ……それだけですっ!」
【 燎家の家宰 】
「…………っ」
【 ヨスガ 】
「――ゆくぞ!」
【 ホノカナ 】
「はいっ……!」
一方、外の世界においては……
【 ギョクレン 】
「……っ、ぜぇ、ぜぇっ……さ、さすがに……もう……限界で、ございます……!」
【 千陣軍魔 】
『オ、オ、オオオ……!!』
見るからにギョクレンの放つ雷の勢いが弱まり、千陣軍魔が自由を取り戻しつつある……
【 ランブ 】
「くっ……!」
横になっているヨスガたちを守るように立ちはだかるランブ。
【 エキセン 】
「むっ……? なにやら、様子が……」
【 千陣軍魔 】
『……ガアアアア……アアアアア!』
【 ミズキ 】
「っ! 身体が、崩れているっ……?」
【 カズサ 】
「やった……のねっ? 陛下たちがっ……!」
【 ゼンキョク 】
「むむ……どうやら、そのようですね」
ややあって、崩壊が始まった。
シュウウウ……
【 千陣軍魔 】
『……ァ……ア……アァァ……ァァァ……』
黒い霧が立ち昇り、巨体がボロボロと溶け崩れていく……
【 ギョクレン 】
「……はぁっ、ふぅっ……〈概念〉の解除を確認……あとはただ、崩れるのを待つだけでございます……!」
【 ミズキ 】
「――っ、陛下たちはっ……!?」
一同の視線が、ヨスガたちに向けられる。
【 ヨスガ 】
「…………」
【 ホノカナ 】
「…………」
しかしいまだ、目覚める気配はない――
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