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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
196/421

◆◆◆◆ 6-101 燎氏の変(87) ◆◆◆◆

【 ヨスガ 】

「さよう、取り引きだ。しかるべき態度を見せるなら、一命は救ってもよい」


【 リョウ家の家宰かさい 】

「しかるべき態度――とは……?」


【 ヨスガ 】

「まずは情報だ。そなたたちを手引きしたという、その〈無明天師むみょうてんし〉とやらについて、詳しく聞かせてもらおう」


【 ヨスガ 】

「だがそれでも、無罪放免とはいかぬ。ゆえに――」


【 リョウ家の家宰かさい 】

「…………」


【 ヨスガ 】

「――正道を外れ、賊の一味となるがよい」


【 リョウ家の家宰かさい 】

「…………っ!?」


【 セイレン 】

『ほう、それはつまり、宝玲山ほうれいざんの一党に加われと?』


【 ヨスガ 】

「そうだ。あやつらと同様、我が手駒となってもらう。なかなか自由で悪くはないぞ。まあ、二度と日の下は歩けぬがな」


【 ヨスガ 】

「もとより、無理強いはせぬ。そのまま処断を待つのもよい。それはそれで、その者の選択ではある」


【 リョウ家の家宰かさい 】

「――――っ」


【 ヨスガ 】

「だが、たとえ邪道に落ちたとしても、なお生きたいと望むならば……我はそれを見逃すであろう」


【 ヨスガ 】

「法は法、天子といえども――否、天子なればこそ、決しておろそかにはできぬ。しかしながら、法で天下のすべてを縛り、管理できると思うほど、我は傲慢ごうまんではない」


【 ヨスガ 】

「同じことは、そなたらが雇った兵どもにも選ばせよう。もっとも、おおかたはモノになるまいがな」


【 ホノカナ 】

「ちょ、ちょっと待ってください! それで……いいんですかっ?」


 黙って聞いていたホノカナが、口を挟む。


【 ヨスガ 】

「気に入らぬか?」


【 ホノカナ 】

「……っ、この人たちのせいで、大勢、亡くなりました。本当なら、死ななくても良かったはずの人たちがっ……」


 城門で看取った同郷の若者のことが思い出された。

 それ以外の守備兵の犠牲者も少なくない。


【 ホノカナ 】

「それにっ、みやこに火をつけたのも、この人たちなんですよねっ……?」


 帝都の火災で命を落とした人々は、いったいどれだけの数になるのだろう?

 幸い助かったとしても、家を焼け出され、生活を失う苦しみは、かつて戦禍せんかに遭ったホノカナにとって身近なものであった。


【 ホノカナ 】

「それなのにっ……」


【 リョウ家の家宰かさい 】

「…………」


【 ヨスガ 】

「……もとより、どんな罪も赦す、というつもりはない。ことを起こした首謀者たちには、責を負ってもらわねばならぬ。当然、そなたの主にもな」


【 リョウ家の家宰かさい 】

「…………っ」


【 ヨスガ 】

族滅いちぞくみなごろしにはせぬ――というだけのことだ。相応の罰は受けてもらう。だが、全てを奪うのは、我の目指すまつりごととは異なる」


【 ヨスガ 】

「きゃつらは、決して正しき民ではない――ないが、彼らなりの生きる場所を用意するのも、為政者のつとめというものであろうよ」


【 ヨスガ 】

「彼らとて、我が民にはちがいないのだからな」


【 ホノカナ 】

「…………っ」


 己の理念を語るヨスガの姿に、ホノカナは圧倒される思いだった。


【 ホノカナ 】

(これが、この方のめざす、道……!)


【 リョウ家の家宰かさい 】

「あぁ……」


 家宰はしきりに嘆いている。


【 リョウ家の家宰かさい 】

「もしも我が主が、もっとあなたさまを深く知ることができていたならば、このような、ことには――」


【 ヨスガ 】

「……その点は、いささか同情はする。我がことさら爪を隠してきたのは確かゆえな」


【 ヨスガ 】

「だが、こちらにも事情があるのだ。すまぬ」


【 リョウ家の家宰かさい 】

「――――」


 シュル……シュル……


【 セイレン 】

『……おやっ? つたが、緩んできたような……?』


 家宰を拘束するように巻きついていた蔦が、やや緩んできていた。


【 ヨスガ 】

「ふむ……交渉は為った、と判断して良さそうだな」


【 ヨスガ 】

「よし……妹よ! 今こそ〈赫龍輝剣かくりゅうきけん〉をもって、因果を断ってみせよ!」


【 ホノカナ 】

「……っ、はいっ……」


 再び剣を振りかぶり――


【 ホノカナ 】

「――――ええいっ!」


 渾身の力で、振り下ろした――

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