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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
194/421

◆◆◆◆ 6-99 燎氏の変(85) ◆◆◆◆

【 ホノカナ 】

「よっと……あっ、意外と軽い?」


 セイレン絨毯を丸めて、担ぎ上げるホノカナ。


【 ヨスガ 】

「〈赫龍輝剣かくりゅうきけん〉も忘れるでないぞ!」


【 ホノカナ 】

「えっ? あっ……」


 見れば、かたわらにヨスガの御佩刀みはかせが置いてあった。


【 ホノカナ 】

「あれっ? でも、ここに来る前には、持っていなかったのに……どうして?」


【 ヨスガ 】

「ふむ……まあ、ありえぬことではない。なにしろ、神祖がいていたという神剣ゆえな」

 *佩く……刀剣を腰に差す、下げるの意。


【 ホノカナ 】

「ええっ!? そ、そんな、ありがたいものだったんですかっ……というか、わたしが持ってていいんですか!?」


 御大層な宝剣だとは思っていたものの、それほどの品だったとは知らなかったホノカナ、思わず地面に戻そうとしてしまう。


【 ヨスガ 】

「たわけ、そなた以外に誰が持つのだ!」


【 ホノカナ 】

「この場合、ヨスガ姉さまが持つのが自然では……!?」


【 ヨスガ 】

「……我は、剣をもって世を支配するつもりはない。天下を動かすのは法であり、機構であり、それを用いる人間である」


【 ヨスガ 】

「よって、我に剣は不要である!」


【 ホノカナ 】

「それって、ただおっくうなだけですよねぇ!?」


【 ヨスガ 】

「ええい、四の五の小うるさいのだ! さっさとゆくぞ!」


【 ホノカナ 】

「わわっ、ま、待ってくださいぃ~っ!」




 ゆくぞ! と勢いよく言って歩き出したものの、さしあたり、どこか当てがあるわけでもない。


【 ホノカナ 】

「あの~、その糸っていうのは、どこにあるんですか? 絨毯さん……じゃなくて、セイレンさん」


【 セイレン 】

『そこ、間違えるはずないですよねえ!? ……ふぅむ、なにかしら手掛かりはあるはず……きっとあるんじゃないかな……あるといいなぁ』


【 ヨスガ 】

「あるいは、こやつを燃やしたら出てきたりするのではないか?」


【 ホノカナ 】

「あっ、なるほど、あぶり出しみたいな……?」


【 セイレン 】

『ひいっ!? ご、五感を研ぎ澄ましてください! 目だけでなく、匂いとか、音とかぁ~っ!』


【 ホノカナ 】

(音? ……そういえば……)


 先ほど聞いた、泣き声のことが思い出された。


【 ホノカナ 】

「んんん~~っ……」


【 ヨスガ 】

「おい、立ったまま寝るでない!」


【 ホノカナ 】

「ち、違います、耳を澄ましてるんですぅ! さっき、泣き声が聞こえてっ……ん、んん~っ……」


【 ヨスガ 】

「…………」


【 セイレン 】

『…………』


【 ホノカナ 】

「……なるほど!」


【 ヨスガ 】

「なにか、聞こえたのか?」


【 ホノカナ 】

「いえ、さっぱり……」


【 ヨスガ 】

「そなたも燃やしてくれようかぁ!?」


【 ホノカナ 】

「ひゃあああっ!?」


【 ヨスガ 】

「む――」


 ヨスガがぴくりと耳をそばだてる。


【 ヨスガ 】

「なにやら……声が聞こえるな。これは……泣き声、か?」


【 セイレン 】

『おお、さすが、音には敏感ですな陛下!』


【 ホノカナ 】

「ほら、わたしの言ったとおりでしょうっ?」


【 ヨスガ 】

「なぜそなたが偉そうに胸を張るのだ……まあいい、行ってみるとしよう――」

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