◆◆◆◆ 6-96 燎氏の変(82) ◆◆◆◆
巨大なる怪異〈千陣軍魔〉を討つべくギョクレンが提案した、〈同心断金〉の術とは?
【 ギョクレン 】
「本来は、人の心に巣食うよからぬもの――たとえば悪しき記憶であるとか、本人でも抑え切れぬ欲望……そういったものを断ち、心を清らかにするための術でございます」
【 ギョクレン 】
「この場合は、かのデカブツの内的世界に侵入し、数多の要素を繋ぎとめている〈糸〉のようなものを断つことで、分解するのでございます!」
【 セイレン 】
「ん~、そうそう! そういうことですねっ!」
弟子の説明に、うんうんと頷いている師匠。
【 ホノカナ 】
(絶対わかってなさそう!)
そう思いつつ、ホノカナは口を挟まなかった。
【 ゼンキョク 】
「しかし、具体的にはどのように――?」
【 ギョクレン 】
「左様でございますね……どなたかの魂魄を肉体から離し、あのデカブツの内的世界へ送り込み、しかるのち、糸を断っていただくのが手っ取り早いかと!」
【 セイレン 】
「んんん~っ、なるほどっ!」
【 ホノカナ 】
(なるほどって、意味わかってるんですか……!?)
ツッコミを入れたくなるのをかろうじて耐えるホノカナ。
【 ミズキ 】
「魂魄を離す――とは、つまり死ぬということですかっ……?」
【 ギョクレン 】
「いえ、その必要はないのでございます! 一時的に離すだけでよいのですが、無理に引きはがそうとすると厄介なことになるのでございます……」
【 ギョクレン 】
「よって、なるべく魂が不安定な状態の方にお願いしたいのございますが、なかなかそんなに都合のいい方は――」
【 ミズキ 】
「…………」
【 ランブ 】
「…………」
【 カズサ 】
「…………」
【 ギョクレン 】
「――あっ」
【 ホノカナ 】
「……あっ?」
ふと、ギョクレンとホノカナの目が合った。
【 ギョクレン 】
「おおっ、そこのあなた! とてもいい具合でございますねっ!」
【 ホノカナ 】
「ええっ!? わ――わたしですかっ?」
【 ギョクレン 】
「ええ! あたかもつい先ごろ、魂魄が身体から離れたばかりのようで、実にいい塩梅でございますっ!」
【 ゼンキョク 】
「ほう……確かに、ホノカナ殿は先ほど、肉体を他者に貸していたそうですが……それゆえでしょうか?」
【 ホノカナ 】
「あ――」
〈反転反魂〉の術を破るさい、タイシンに一時的に肉体を預けたことで、魂のあり方が不安定になっている……と、いうようなことであるらしい。
【 ギョクレン 】
「おおっ、なるほどでございます! さすがは師父、それも踏まえて、この御仁を連れてこられたのでございますねっ!」
【 セイレン 】
「…………ええっ、もちろんですとも!」
【 ホノカナ 】
「えええっ!? 絶対偶然ですよねぇぇっ!?」
【 ギョクレン 】
「それでは、善は急げでございますっ! さっそく、支度をば――」
【 カズサ 】
「ちょ、ちょっと待ちなさいっ! こんな大事を、彼女ひとりに任せるなんて、そんな――」
【 ???? 】
「――確かにな! そやつひとりには、とても任せられぬ――」
【 一同 】
「!!」
【 ヨスガ 】
「――話は聞いた! 我も、同行しよう……!」




