◆◆◆◆ 6-94 燎氏の変(80) ◆◆◆
【 ???? 】
『うちの声、聞こえているでございますか……大首領……』
【 ヨスガ 】
「おお――〈副軍師補佐〉か、聞こえているぞ!」
頭の中に響いてきた声に応じるヨスガ。
【 侍衛長 】
「へ、陛下っ……?」
突然独り言を言い出したヨスガを、侍衛長らが戸惑った目で見ている。
【 ヨスガ 】
「おい、これでは我がブツブツと一人で喋っているようではないか……!」
【 副軍師補佐 】
『これは失礼したでございます――えぇと、念の波を調整して……ごほん、これでいかがでございましょう?』
【 侍衛長 】
「っ? これはっ……頭の中に声がっ?」
【 ヨスガ 】
「うむ、これでよし――状況を報告せよ!」
【 副軍師補佐 】
「は――それがどうも、まるっきり見つからないのでございます! まるで、この世から忽然と消え失せたかのごとく……」
【 ヨスガ 】
「……はぁ? そなた、いったいなにをやっておるのだ!?」
【 副軍師補佐 】
「なにをって、もちろん、師父を探しているのでございますが?」
【 ヨスガ 】
「……そういえば、あやつ、しばらく見ておらんな」
【 副軍師補佐 】
「大首領っ? もしや、忘れていたのではございますまいねっ?」
【 ヨスガ 】
「そういうわけでは――いや、うむ、なにか忘れているとは思っていたぞ……!」
【 副軍師補佐 】
「はぁあぁ!? あんまりな仕打ちでございます! 右腕たる副軍師の存在を忘れるなどっ……!」
【 ヨスガ 】
「その点は、うむ、あやつが右腕かはさておき、悪かったと思っておる――ゆえにだな、ひとまずそちらは後回しにして、かの化け物をなんとかせよ!」
【 副軍師補佐 】
「あぁ――あの正体不明の存在でございますね? 〈千陣軍魔〉と名付けられたようですが……」
【 副軍師補佐 】
「見たところ、あれは物理攻撃でどうにかなるものではございません。かなり強引な〈手法〉で組み上げられた代物なれば、その〈概念〉そのものを解除せねばならないのでございます」
【 ヨスガ 】
「――とどのつまり、どうせよというのだ?」
【 副軍師補佐 】
「それは――あっ! ちょっとお待ちをっ! 師父の気配がっ……!?」
【 ヨスガ 】
「……おいっ? 副軍師補佐っ! おいっ! ……あやつ、一方的に打ち切りおって……!」
【 侍衛長 】
「……っ、陛下、今の御仁は……?」
【 ヨスガ 】
「聞いての通りの、副軍師補佐――実に扱いにくいヤツよ……!」
【 白銀夜叉 】
「そらぁっっ!!」
――ザシュウッ!!
白銀夜叉が大剣を振るうや、千陣軍魔の巨体がさながら豆腐のごとく切り裂かれる。
【 千陣軍魔 】
『グガッ……アアアアッ!?』
【 宝玲山の将兵 】
「――うおおおおおおっ!」
将兵たちもここぞとばかりに攻めかかり、息つく暇も与えない。
【 千陣軍魔 】
『……ギ……イイイィ……!』
【 白銀夜叉 】
「こいつ……やけに受けに回るっ……!」
【 千陣軍魔 】
『グゥ……オオオオ……!!』
【 ミズキ 】
「……っ! あれは――」
千陣軍魔の巨体に、異変が生じた。
表面が、硬質化していく……!
【 エキセン 】
「こいつっ……あの絡繰りのような、装甲を……!?」
たちまち全身を硬質の鎧で覆った千陣軍魔は、さらに球状に変化した。
【 千陣軍魔 】
『オオオオッ……!!』
そのまま、回転しながら城門へと体当たりを食らわせてくる――
――ドゴオオッ!!
【 カズサ 】
「きゃあああああっ!?」
巨体の激突で、城門が揺らぎ、亀裂が入る。
【 白銀夜叉 】
「ちいっ……小賢しい真似をっ!」
【 ランブ 】
「まずいっ……そう何度も、耐えれそうにはっ……!」
危うしと思われた、その時――
【 ???? 】
「――“縛”!」
――ドオオォォンッ!!
【 千陣軍魔 】
『…………!!!』
突如、空に黒雲が湧き上がったかと思うと、そこから幾筋もの雷撃がほとばしって、巨大なる異形の動きを封じ込める――
【 ゼンキョク 】
「む、あれは――」
雲の中に、人影があった。
巨大な翼を持つ馬にまたがる、ひとりの可憐な方士。
【 ???? 】
「遅れて申し訳ないでございます!」
軽やかな童子の声が響き渡る。
【 馬のような生き物 】
「メエエエエエ……」
【 ???? 】
「副軍師補佐、〈青・ギョクレン〉! これより参戦するでございます!!」
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