◆◆◆◆ 6-89 燎氏の変(75) ◆◆◆◆
【 カズサ 】
「緋閃――十文字斬りっ!」
――バシュッ! ズドォッ!
【 異様なる兵 】
「ギィアアアッ……!」
まっしぐらに迫ってきた異形の兵を、カズサの双剣が両断する。
【 ランブ 】
「ぬうんッ!」
――ドバシャアアッ!
【 異様なる兵たち 】
「ガアアァッ……!」
巨大な斧を一閃させ、奇怪な兵を消し飛ばすランブ。
だが、わずか二人で迎え撃つには、迫ってくる兵はあまりに多い……!
――ドシュッ!
【 異様なる兵 】
「ギャウウッ……!?」
【 カズサ 】
「…………っ!」
背後から飛んできた鍼が、異形の兵の頭部を刺し貫いていた。
【 ランブ 】
「晏老師か……!」
【 ゼンキョク 】
「ほう……これはこれは。さしづめ〈千陣軍魔〉とでも呼ぶべき代物ですね」
援護に駆けつけたゼンキョクが、異様な存在を見てそう口にする。
【 カズサ 】
「センジン……何ですって? そんな名前があるんですかっ?」
【 ゼンキョク 】
「いいえ、たった今命名したばかりですよ。なにごとも、名前というのは大事ですからね」
【 カズサ 】
「~~~~っ、悠長なことをっ……! そんなことより、手伝ってくださいっ!」
【 ゼンキョク 】
「ふむ、先ほど私が……いえ、私たちが斃した妖魔とはいささか異なるようですが、共通点もあり……ふぅむ……」
【 カズサ 】
「だからぁ! 分析は後にしてくれません!?」
【 ゼンキョク 】
「いやいや、分析は大事ですよ。これが妖魔なのであれば、いずこかに弱点である心臓があるはずなのですが――」
【 カズサ 】
「とか言ってるそばからわんさか敵が来てるじゃないの!? 躱して老師ーっ!」
【 ゼンキョク 】
「――――っ」
――ザシュッ!!
【 千陣軍魔の兵 】
「ギイイイッ……アッ!?」
ゼンキョクに迫っていた千陣軍魔の一部が、真っ二つに両断される――
【 ミズキ 】
「分析なら、せめて後衛に回ってからにしてほしいですね……!」
おっとり刀で駆けつけた、ミズキの空刀が間に合ったのだった。
*おっとり刀で……大急ぎで、取る者もとりあえず、の意。
【 ゼンキョク 】
「おっと……助かりました。お早いお帰りで」
【 カズサ 】
「ミズキ大姐っ! 首尾のほどは――」
【 ミズキ 】
「それはのちほど――もし、先ほどの〈千眼万笑〉と同じならば、どこか別の場所に心臓がっ……?」
【 ゼンキョク 】
「さて……そもそも、これが妖魔なのかどうか? どうも、別物のような気がしますね……ここはやはり、専門家に尋ねなくては――」
【 カズサ 】
「だから後衛に――って、あれはっ!?」
【 千陣軍魔の兵 】
「キィアッ……アハッ! アァハハハァ――!!」
怪異・千陣軍魔の兵が数十人単位で一塊となったかと思うと……
【 ミズキ 】
「……っ! あれは……腕っ!?」
巨大な腕が生えてきて、兵の塊を引っ掴むや、
――ブォンッ!!
すさまじい勢いで、城門めがけて投げつけてくる――
【 ランブ 】
「…………っ!」
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