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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
184/421

◆◆◆◆ 6-89 燎氏の変(75) ◆◆◆◆

【 カズサ 】

「緋閃――十文字斬りっ!」


 ――バシュッ! ズドォッ!


【 異様なる兵 】

「ギィアアアッ……!」


 まっしぐらに迫ってきた異形の兵を、カズサの双剣が両断する。


【 ランブ 】

「ぬうんッ!」


 ――ドバシャアアッ!


【 異様なる兵たち 】

「ガアアァッ……!」


 巨大な斧を一閃させ、奇怪な兵を消し飛ばすランブ。

 だが、わずか二人で迎え撃つには、迫ってくる兵はあまりに多い……!


 ――ドシュッ!


【 異様なる兵 】

「ギャウウッ……!?」


【 カズサ 】

「…………っ!」


 背後から飛んできたはりが、異形の兵の頭部を刺し貫いていた。


【 ランブ 】

アン老師せんせいか……!」


【 ゼンキョク 】

「ほう……これはこれは。さしづめ〈千陣軍魔せんじんぐんま〉とでも呼ぶべき代物ですね」


 援護に駆けつけたゼンキョクが、異様な存在を見てそう口にする。


【 カズサ 】

「センジン……何ですって? そんな名前があるんですかっ?」


【 ゼンキョク 】

「いいえ、たった今命名したばかりですよ。なにごとも、名前というのは大事ですからね」


【 カズサ 】

「~~~~っ、悠長なことをっ……! そんなことより、手伝ってくださいっ!」


【 ゼンキョク 】

「ふむ、先ほど私が……いえ、私たちがたおした妖魔とはいささか異なるようですが、共通点もあり……ふぅむ……」


【 カズサ 】

「だからぁ! 分析は後にしてくれません!?」


【 ゼンキョク 】

「いやいや、分析は大事ですよ。これが妖魔なのであれば、いずこかに弱点である心臓があるはずなのですが――」


【 カズサ 】

「とか言ってるそばからわんさか敵が来てるじゃないの!? かわして老師せんせいーっ!」


【 ゼンキョク 】

「――――っ」


 ――ザシュッ!!


【 千陣軍魔の兵 】

「ギイイイッ……アッ!?」


 ゼンキョクに迫っていた千陣軍魔の一部が、真っ二つに両断される――


【 ミズキ 】

「分析なら、せめて後衛に回ってからにしてほしいですね……!」


 おっとり刀で駆けつけた、ミズキの空刀そらがたなが間に合ったのだった。

 *おっとり刀で……大急ぎで、取る者もとりあえず、の意。


【 ゼンキョク 】

「おっと……助かりました。お早いお帰りで」


【 カズサ 】

「ミズキ大姐おねえさまっ! 首尾のほどは――」


【 ミズキ 】

「それはのちほど――もし、先ほどの〈千眼万笑せんがんばんしょう〉と同じならば、どこか別の場所に心臓がっ……?」


【 ゼンキョク 】

「さて……そもそも、これが妖魔なのかどうか? どうも、別物のような気がしますね……ここはやはり、専門家に尋ねなくては――」


【 カズサ 】

「だから後衛に――って、あれはっ!?」


【 千陣軍魔の兵 】

「キィアッ……アハッ! アァハハハァ――!!」


 怪異・千陣軍魔の兵が数十人単位で一塊となったかと思うと……


【 ミズキ 】

「……っ! あれは……腕っ!?」


 巨大な腕が生えてきて、兵の塊を引っ掴むや、


 ――ブォンッ!!


 すさまじい勢いで、城門めがけて投げつけてくる――


【 ランブ 】

「…………っ!」

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