◆◆◆◆ 6-81 燎氏の変(67) ◆◆◆◆
内城から宮城につながる大門をくぐると、左右に広大な祭場がある。
その奥に、外廷への入り口となる〈鉄虎門〉があり……
そこは、今まさに苛烈なる戦場と化していた。
【 叛乱兵 】
「うおおおっ……!」
殺気だった叛乱軍が殺到し、城壁に取りつき、よじ登ってくる。
【 守備隊長 】
「怯むな! もうしばらく耐えれば、城外の兵が戻ってこよう……!」
門の上に陣取った守備隊長が、守兵たちを声をからして励ましている。
【 守備兵 】
「し、しかしっ、数が違い過ぎます……!」
守備側の人数がすでに百を切っているのに対し、押し寄せてくる攻め手の数は、少なく見積もってもこちらの十倍以上と見えた。
【 守備隊長 】
「それでも――守り切る、のだっ!」
ドシュウッ!
みずから槍を振るい、城門を登ってきた兵を突き落とす。
【 叛乱兵 】
「ぐぇっ……!」
【 守備隊長 】
「賊の侵入を許すなっ! 押し返すのだっ……!」
【 燎家の家宰 】
「我らは義兵なり! 正義は我らにあるぞ……!」
*家宰……家長の代行者の意。
賊とか叛乱軍というのは守兵からの見方であり、攻め手からすれば、自分たちこそが義兵――正義のために戦う兵である。
そんな彼らを指揮しているのは、このたびの謀叛の首謀者たる燎・ケンシの名代、すなわち燎家の家宰であった。
【 燎家の家宰 】
(なんとしても、ご当主の期待に応えねば……!)
彼自身はこれまで戦いなどしたことのない素人であり、率いているのは金で掻き集めてきた質の悪い兵にすぎない。
莫大な恩賞を餌にして、ここまで乗り込んできたものの、数こそ多いが、士気はいたって低い。
それでも、どうにか軍らしき形をなしているのは、
【 燎家の家宰 】
(ここでしくじれば、燎家は一族皆殺しはまぬがれぬ……!)
そんな気迫をもって、みずから指揮を執っている家宰のおかげであろう。
【 燎家の家宰 】
「この門を破れば、宝の山ぞ! 褒美は好きなだけくれてやるっ! いざ、進めっ!」
【 叛乱兵 】
「おおおおっ……!!」
主の掲げる大義など知る由もない欲まみれの兵たちが、目を血走らせ、酸鼻を極める血みどろの殺し合いへと突き進んでいく。
【 燎家の家宰 】
「…………っ」
初めて味わう殺伐とした戦場の空気に、家宰は己の心がどんどん乾いていくのを覚えていた。
【 守備隊長 】
「くそっ、あと少しだ……! 踏みとどまれっ!!」
【 守備兵 】
「た、隊長っ! 城門を開けようとしている者が……!」
【 守備隊長 】
「何ぃーッ!?」
見れば、一部の守備兵が、城門の内側に積み上げられた砂袋をどかし始めている。
【 投降派の守備兵 】
「こんなところで、死んでたまるかよっ……!」
【 他の投降派の守備兵 】
「そうだっ……命あっての物種だぜ!」
形勢不利と見て、敵軍に投降するべく、城門を開けようとしているのは明らかだった。
【 守備隊長 】
「おのれっ……! 誰か、誰か止めよっ!!」
しかし、敵兵の猛攻もあって手が回らず、今まさに城門が開かれんとする――
【 守備隊長 】
「…………っ!」
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