◆◆◆◆ 6-80 燎氏の変(66) ◆◆◆◆
――かくしてかの刹那、タイシンはホノカナの身を借り、ヨスガを殺した。
そして、ほぼ同時に反転反魂の術が発動し、ヨスガは蘇生した――と、いうことであるらしい。
【 ヨスガ 】
「はぁっ、はぁっ……な、なるほど、なっ……あの商人……やって、くれるっ……!」
【 ミズキ 】
「……しかし、いかに占いとて、ここで術を仕掛けられることまでわかるものでしょうかっ……?」
【 ミズキ 】
(ホノカナを預けていったのも、そもそも、この一件を見越してのことだったのでは……?)
【 ヨスガ 】
「さてなっ……どうあれ今は、これ以上、詮索している場合ではなかろう……はぁっ、ふぅっ……」
と、かろうじて立ち上がるヨスガ。
【 ランブ 】
「陛下っ……ご無理はなさらず!」
【 ヨスガ 】
「そうしたいのは、やまやまだが……この状況、寝ているわけにもいくまいよ……!」
【 ゼンキョク 】
「脈拍は正常です……が、心身のあちこちが不安定ですね。一時的に死んでいた、というのは事実のようで……ふうむ、なるほど……」
【 ヨスガ 】
「ええい、『すこぶる興味深い、もっと調べたい』といいたげな顔で見るでないわ……!」
【 ヨスガ 】
「ちょっとした椿事はあったが……予定通り、ことを進める! 十二佳仙にはミズキとエキセンがあたれ! 我らは〈鉄虎門〉へと向かう……!」
*椿事……思いがけない出来事、アクシデントの意。
【 ミズキ 】
「…………っ、心得ました」
【 エキセン 】
「はっ……!」
しばし迷いを見せつつも、ミズキは駆け出していく。
エキセンも、その後を追っていった。
【 ヨスガ 】
「では――ゆくぞ! おい、いつまでへたり込んでいるっ? さっさと肩を貸せい!」
【 ホノカナ 】
「あ――でっ、でも、わたし……わたしはっ……」
【 ヨスガ 】
「ええい、四の五の言うでないっ! さっさとせよ!!」
【 ホノカナ 】
「……っ、は、はいっ……」
ホノカナは立ち上がって埃を払い、ヨスガに駆け寄る。
【 ヨスガ 】
「先ほどの一件、今は忘れよ! ことが終わり次第、タイシンめを呼びつけて、根掘り葉掘り問いただしてくれるゆえなっ……それまでは、胸にしまっておけ……!」
【 ホノカナ 】
「……っ、はいっ……!」
足元をふらつかせながらも、己を叱咤するヨスガの姿が、とてもまぶしく思えるホノカナなのだった。
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