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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
172/421

◆◆◆◆ 6-77 燎氏の変(63) ◆◆◆◆

 血だまりの中に、少女が伏している。

 その者の名は、エン・ヨスガ。

 チュウ帝国の第207代皇帝である。

 至尊しそんの位にある彼女が、今まさに、暗殺の刃にたおれたのだった。


【 ゼンキョク 】

「……陛下!」


 信じ難い状況に、誰もが時が止まったかのように茫然とする中、最初に動いたのはアン・ゼンキョク。

 とっさにヨスガに駆け寄って抱え起こすと、傷口へと手を当てる。


【 ミズキ 】

「あ――あ、あああっ……!」


 次いで我に返ったのは、女官長ミズキであった。


【 ミズキ 】

「よくも――よくも、ヨスガをッッ!!」


 みなぎる怒気に任せて、下手人であるリン・ホノカナ目がけ、渾身の空刀そらがたなを放たんとする――


 ――ガシッ!


【 ミズキ 】

「…………っ!」


【 シラクサ 】

「お、おま、お待ちをっ……!」


 間一髪、いずこかに潜んでいた我影也しのびのものことサツ・シラクサが飛び出してきて、その腕を掴んで押しとどめていた。

 さもなくば、ミズキの怒りの一閃は、ホノカナの肢体をズタズタに引き裂いていたことであろう。


【 カズサ 】

「な、なっ、なんてことをっ――あなたはっ!!」


 震える手足でホノカナに駆け寄り、その手から血塗られた剣を払い落とすセン・カズサ。


【 ホノカナ 】

「……っ、あ、あ……あぁ……」


 当のホノカナはなすがままで抵抗もせず、うつろな目のまま、ぺたんとその場に尻もちをつく。


【 ランブ 】

「――――っ」


 ナギ・ランブは絶句し、ただ、立ち尽くしている。

 かつて、怒りに駆られたヨスガがホノカナに斬りかかろうとした際、彼女が止めたことがあった。

 あれから数ヶ月、まさか、このようなことになろうとは――


【 侍衛たち 】

「…………っ」


 侍衛たちは目の前の光景が信じられず、色を失って固まっている。


【 エキセン 】

「……なぜっ、こんなっ……」


 ホウ・エキセンもまた棒立ちになって、動くこともできずにいた。


【 ミズキ 】

「貴様……貴様ッ! なぜ、ヨスガを護らなかったッ!?」


 シラクサを睨みつけながら、ミズキが悲痛な怒号を放つ。


【 シラクサ 】

「そ、そっ、それはっ……そのっ――」


【 ミズキ 】

「離せッ! 離さぬとあらば――貴様も“断つ”ッッ!!」


【 シラクサ 】

「…………!」


 見る間に、ミズキの肢体から強烈な殺気が放たれる。

 ホノカナとシラクサどころか、その場にいるすべてを殺戮さつりくしかねないほどの、すさまじい憤怒ふんぬの気……!


【 侍衛たち 】

「…………っ!?」


【 ランブ 】

「ミズキ殿っ……!」


【 カズサ 】

「お、大姐おねえさまっ……!」


【 ミズキ 】

「う、ううっ……あああああぁぁッッ!!」


 ――もし次の瞬間、声が響かなければ、その場は流血の修羅場と化していたに違いない。


【 ???? 】

「ま……てっ……大姐あねうえっ……!」

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