◆◆◆◆ 6-75 燎氏の変(61) ◆◆◆◆
【 ミズキ 】
「陛下、支度が整いました」
【 ヨスガ 】
「うむ」
【 ランブ 】
「あの者たちは、いかがいたしましょう?」
ランブが指したのは、柱に縛りつけられた二人の方士……すなわち、捕獲された陸の仙と参の仙である。
シラクサに絞め落とされた前者はほぼ無傷であったが、後者は虫の息であったのを、ゼンキョクが処置を施し、一命は取りとめさせている。
今はどちらも眠らされており、ピクリとも動かずにいた。
【 ヨスガ 】
「ふむ……連れて行ったとて、人質にもなるまい。本来なら、牢にでもぶち込んでおくところだが、そんな暇も惜しい」
【 ヨスガ 】
「ここに置いていってよかろう。すべて片付いたら、その後で処分は決めればよい」
【 ミズキ 】
「心得ました。それでは……」
と、一同がその場を離れようとした、そのとき――
【 陸の仙 】
「ぐ、あ、あ、あああ……!」
【 参の仙 】
「うぐっ……!? ぐ、うううう……!」
突然、方士二人がただならぬ呻き声を漏らし始めた。
【 ミズキ 】
「――っ? 失神しているはずでは――」
【 エキセン 】
「っ! いかんっ、皆、下がれっ!!」
エキセンが、いつにない大声を放つと同時に、
ボオオオオオッ!!
【 ホノカナ 】
「ひっ……!?」
【 陸の仙 】
「ぎっ……あっ、アアアアア……!!」
【 参の仙 】
「ぐっ……アッ……ガッ……アアア……!!」
突如、両者の身体が炎上した。
そして、一瞬ののち――
――ドオオオオォン!!
【 ヨスガ 】
「…………っ!」
轟音とともに爆発四散する二人の肉体!
炎が周囲に飛散し、その一部が一同めがけて飛んでくる――
【 ランブ 】
「陛下っ!!」
とっさに、ランブと侍衛たちがヨスガの前に立ちはだかり、壁となる。
【 ミズキ 】
「――はぁああっ!!」
ミズキの放った〈空刀〉が、炎の弾丸を次々と撃ち落とす。
【 カズサ 】
「このっ……おおおっ!!」
痛みに耐えながらも剣を振るい、飛来する炎を打ち払うカズサ。
【 エキセン 】
「趣味の悪い……爆弾だ……!」
エキセンは弾弓で火薬弾を放ち、飛んでくる炎を迎撃する。
【 ゼンキョク 】
「これが十二佳仙の奥の手……というところでしょうか。確かに……趣味が悪い」
ランブの背後に身を潜めつつ、ゼンキョク。
周囲に飛び散った炎が燃え移り、たちまち宮殿内は火の海と化していく。
【 ヨスガ 】
「長居は無用だ! 皆、疾く脱出せよ!」
*疾く……すぐに、さっさとの意。
すでに支度を整えていたため、一同は滞りなく退去していく。
【 ホノカナ 】
「……あれっ?」
なにかを忘れているような気がしたホノカナだったが、
【 ホノカナ 】
(気のせいかな……?)
そのまま、ヨスガたちの後を追って駆けていったのだった。
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