◆◆◆◆ 6-74 燎氏の変(60) ◆◆◆◆
【 ミズキ 】
「では――まず十二賊ですが、捨て置けば禍根を残しましょう。私が片付けてまいります」
【 ヨスガ 】
「だいぶ疲れているようだが……いけるのか?」
【 ミズキ 】
「無論です。……ようやく、積年の恨みを晴らせるのですから」
腕をさすりながら呟くミズキ。
疲労の色は隠せないが、それ以上に力強い意志が感じられる。
【 ヨスガ 】
「だが、ひとりでは危うかろう?」
【 カズサ 】
「ならば、わ、わたしが……うぎぎ……!」
名乗り出るカズサであるが、いまだに歩くのがやっとという有り様。
【 ホノカナ 】
「無理しない方がいいのでは……!?」
【 ???? 】
「フフ――その役、俺が務めよう――」
【 ヨスガ 】
「おお――エキセン!」
地下道の守りを行っていた炮・エキセンが、ようやく到着していた。
【 ミズキ 】
「陛下たちはここに留まり、守りを固めるのが得策かと」
【 ヨスガ 】
「ふむ……手負いも多い現状では、確かにそれが妥当――のようではあるが」
【 ヨスガ 】
「――しかし、否だ」
【 ホノカナ 】
「えっ? そ、それじゃ……」
【 ヨスガ 】
「そうだ、あえて打って出る。ものごとには勢いというものがあるゆえな!」
【 ヨスガ 】
「者ども、支度せよ! ミズキとエキセンは十二佳仙にあたれ。我らは城門へ向かい、叛徒どもを防ぐ!」
【 ミズキ 】
「――心得ました」
【 ホノカナ 】
「い、いいんですかっ……?」
【 ミズキ 】
「陛下が決められたことです」
【 ホノカナ 】
「…………っ」
【 ヨスガ 】
「いけるか、ランブ?」
【 ランブ 】
「は――もちろんです」
ゼンキョクの手当もあってか、やや血色がよくなった様子のランブが、片手で斧を担いで立ち上がる。
【 侍衛長 】
「我ら、ランブ様とともに、今度こそ陛下をお守りいたします!」
侍衛たちも、戦える程度には回復していた。
これまた、ゼンキョクによる治療の成果に他ならない。
【 ヨスガ 】
「見事なものだ、ゼンキョク」
【 ゼンキョク 】
「もったいないお言葉……私にできるのは、この程度ですので」
【 ホノカナ 】
「…………っ」
ヨスガの周囲に集った多士済済の面々に、ホノカナは内心で圧倒されていた。
【 ホノカナ 】
(わたしなんて、いてもいなくても、同じなんじゃ……?)
そんな気持ちが、胸をよぎってしまう。
【 ミズキ 】
「ホノカナ――急ぎなさい」
【 ホノカナ 】
「あっ……はっ、はいっ!」
【 ホノカナ 】
(……っ、今は、あれこれ思い悩んでる場合じゃないよね……目の前のことに、一生懸命、取り組むだけ……!)
そう自分に言い聞かせ、ホノカナは撤収の支度にかかるのだった。
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