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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
169/421

◆◆◆◆ 6-74 燎氏の変(60) ◆◆◆◆

【 ミズキ 】

「では――まず十二賊ですが、捨て置けば禍根を残しましょう。私が片付けてまいります」


【 ヨスガ 】

「だいぶ疲れているようだが……いけるのか?」


【 ミズキ 】

「無論です。……ようやく、積年の恨みを晴らせるのですから」


 腕をさすりながら呟くミズキ。

 疲労の色は隠せないが、それ以上に力強い意志が感じられる。


【 ヨスガ 】

「だが、ひとりでは危うかろう?」


【 カズサ 】

「ならば、わ、わたしが……うぎぎ……!」


 名乗り出るカズサであるが、いまだに歩くのがやっとという有り様。


【 ホノカナ 】

「無理しない方がいいのでは……!?」


【 ???? 】

「フフ――その役、俺が務めよう――」


【 ヨスガ 】

「おお――エキセン!」


 地下道の守りを行っていたホウ・エキセンが、ようやく到着していた。


【 ミズキ 】

「陛下たちはここに留まり、守りを固めるのが得策かと」


【 ヨスガ 】

「ふむ……手負いも多い現状では、確かにそれが妥当――のようではあるが」


【 ヨスガ 】

「――しかし、否だ」


【 ホノカナ 】

「えっ? そ、それじゃ……」


【 ヨスガ 】

「そうだ、あえて打って出る。ものごとには勢いというものがあるゆえな!」


【 ヨスガ 】

「者ども、支度せよ! ミズキとエキセンは十二佳仙にあたれ。我らは城門へ向かい、叛徒どもを防ぐ!」


【 ミズキ 】

「――心得ました」


【 ホノカナ 】

「い、いいんですかっ……?」


【 ミズキ 】

「陛下が決められたことです」


【 ホノカナ 】

「…………っ」


【 ヨスガ 】

「いけるか、ランブ?」


【 ランブ 】

「は――もちろんです」


 ゼンキョクの手当もあってか、やや血色がよくなった様子のランブが、片手で斧を担いで立ち上がる。


【 侍衛長 】

「我ら、ランブ様とともに、今度こそ陛下をお守りいたします!」


 侍衛たちも、戦える程度には回復していた。

 これまた、ゼンキョクによる治療の成果に他ならない。


【 ヨスガ 】

「見事なものだ、ゼンキョク」


【 ゼンキョク 】

「もったいないお言葉……私にできるのは、この程度ですので」


【 ホノカナ 】

「…………っ」


 ヨスガの周囲に集った多士済済たしせいせいの面々に、ホノカナは内心で圧倒されていた。


【 ホノカナ 】

(わたしなんて、いてもいなくても、同じなんじゃ……?)


 そんな気持ちが、胸をよぎってしまう。


【 ミズキ 】

「ホノカナ――急ぎなさい」


【 ホノカナ 】

「あっ……はっ、はいっ!」


【 ホノカナ 】

(……っ、今は、あれこれ思い悩んでる場合じゃないよね……目の前のことに、一生懸命、取り組むだけ……!)


 そう自分に言い聞かせ、ホノカナは撤収の支度にかかるのだった。

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