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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
16/421

◆◆◆◆ 2-6 御佩刀 ◆◆◆◆

【 ミズキ 】

「これに着替えなさい」


 連れてこられた一室で、ホノカナが渡されたのは地味な平服だった。

 よく見ると、ミズキもふだんの女官服ではなく、似たような装束を身に着けている。


【 ホノカナ 】

「えっと……」


【 ミズキ 】

「急ぎなさい」


 これはいったい……と内心では困惑しつつも、ホノカナは言われるまま、そそくさと着替えた。


【 ホノカナ 】

「お、終わりました……」


【 ミズキ 】

「では、それを持ちなさい」


【 ホノカナ 】

「えっ? これって……」


 卓の上に置いてあるそれを見て、ホノカナはギョッとした。

 なんとなればそれは、


【 ホノカナ 】

(陛下の御佩刀みはかせ……!?)


 そう、日中、帝ヨスガが彼女を一刀両断にせんと手にした、あの宝刀である。

 由縁は知らないが、鞘や柄にも凝った装飾がなされており、名のある一品にちがいなかった。


【 ミズキ 】

「どうしました? 早く持ちなさい」


【 ホノカナ 】

「で、でも、これは――」


【 ミズキ 】

「…………」


 さすがのホノカナもためらうが、ミズキの眼光にはあらがえず、おそるおそる刀を手に取った。


【 ホノカナ 】

(あ……思ったより軽いかも?)


 昼間、ヨスガが手にしていたのを見たときは、ずいぶんと重そうだったのだが、さほどでもなかった。

 うっかり落としたりしないよう、ギュッと抱きかかえるようにする。


【 ミズキ 】

「――では、こちらに」


 歩き出したミズキを、ホノカナは刀を抱えて小走りに追いかけた……




 ミズキを追って踏み入ったのは、見知らぬ回廊だった。


【 ホノカナ 】

(宮中に、こんなところが……?)


 まだひと月ほどしか働いていないホノカナだが、まるで見覚えのない通路だった。

 人っ子ひとりいない回廊に、二人の足音が響く。


【 ホノカナ 】

「~~~~っ……」


【 ミズキ 】

「――今だけは、質問を許可します」


 悶々とするホノカナの気配が伝わったのか、ミズキがそんなことを言ってきた。


【 ホノカナ 】

「は、はいっ! これからどこへ行くんですかっ? どうしてわたしが陛下の御佩刀をっ? そもそも、わたしの罪は――」


【 ミズキ 】

「――質問はひとつにしなさい」


【 ホノカナ 】

「……はっ、はい……えっと……」


 しばし口ごもってから。


【 ホノカナ 】

「……陛下は、どうなさっていますか?」


【 ミズキ 】

「――――」


 思わず、ミズキが立ち止まった。


【 ミズキ 】

「……なぜ、それを知りたいと思うのです?」


【 ホノカナ 】

「それは、だって……わたしが、ひどいことを言ってしまったので……」


【 ミズキ 】

「…………」


 再び歩き始めながら、


【 ミズキ 】

「それは、じきにわかるでしょう」


【 ホノカナ 】

「…………?」


 それって……と戸惑いつつ、ホノカナは刀を抱えてミズキの背を追った。

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