◆◆◆◆ 2-6 御佩刀 ◆◆◆◆
【 ミズキ 】
「これに着替えなさい」
連れてこられた一室で、ホノカナが渡されたのは地味な平服だった。
よく見ると、ミズキもふだんの女官服ではなく、似たような装束を身に着けている。
【 ホノカナ 】
「えっと……」
【 ミズキ 】
「急ぎなさい」
これはいったい……と内心では困惑しつつも、ホノカナは言われるまま、そそくさと着替えた。
【 ホノカナ 】
「お、終わりました……」
【 ミズキ 】
「では、それを持ちなさい」
【 ホノカナ 】
「えっ? これって……」
卓の上に置いてあるそれを見て、ホノカナはギョッとした。
なんとなればそれは、
【 ホノカナ 】
(陛下の御佩刀……!?)
そう、日中、帝ヨスガが彼女を一刀両断にせんと手にした、あの宝刀である。
由縁は知らないが、鞘や柄にも凝った装飾がなされており、名のある一品にちがいなかった。
【 ミズキ 】
「どうしました? 早く持ちなさい」
【 ホノカナ 】
「で、でも、これは――」
【 ミズキ 】
「…………」
さすがのホノカナもためらうが、ミズキの眼光にはあらがえず、おそるおそる刀を手に取った。
【 ホノカナ 】
(あ……思ったより軽いかも?)
昼間、ヨスガが手にしていたのを見たときは、ずいぶんと重そうだったのだが、さほどでもなかった。
うっかり落としたりしないよう、ギュッと抱きかかえるようにする。
【 ミズキ 】
「――では、こちらに」
歩き出したミズキを、ホノカナは刀を抱えて小走りに追いかけた……
ミズキを追って踏み入ったのは、見知らぬ回廊だった。
【 ホノカナ 】
(宮中に、こんなところが……?)
まだひと月ほどしか働いていないホノカナだが、まるで見覚えのない通路だった。
人っ子ひとりいない回廊に、二人の足音が響く。
【 ホノカナ 】
「~~~~っ……」
【 ミズキ 】
「――今だけは、質問を許可します」
悶々とするホノカナの気配が伝わったのか、ミズキがそんなことを言ってきた。
【 ホノカナ 】
「は、はいっ! これからどこへ行くんですかっ? どうしてわたしが陛下の御佩刀をっ? そもそも、わたしの罪は――」
【 ミズキ 】
「――質問はひとつにしなさい」
【 ホノカナ 】
「……はっ、はい……えっと……」
しばし口ごもってから。
【 ホノカナ 】
「……陛下は、どうなさっていますか?」
【 ミズキ 】
「――――」
思わず、ミズキが立ち止まった。
【 ミズキ 】
「……なぜ、それを知りたいと思うのです?」
【 ホノカナ 】
「それは、だって……わたしが、ひどいことを言ってしまったので……」
【 ミズキ 】
「…………」
再び歩き始めながら、
【 ミズキ 】
「それは、じきにわかるでしょう」
【 ホノカナ 】
「…………?」
それって……と戸惑いつつ、ホノカナは刀を抱えてミズキの背を追った。
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