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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
159/421

◆◆◆◆ 6-64 燎氏の変(50) ◆◆◆◆

 ――そして、極龍殿の地下、隠し通路においては――


【 蟲のような異形 】

「ギイイイ……!!」


【 エキセン 】

「クフ……フフフ……この先には……行かせるものか」


 蟲じみた絡繰りを近づけまいと、立て続けに弾弓パチンコで火薬弾を放っていく〈霹靂匠へきれきしょう〉ことホウ・エキセン。


 ドォンッ! ドオオンッ!!


【 蟲のような異形 】

「グギィ……!!」


【 エキセン 】

「フフ……なんとも、しぶとい……!」


 進行を食い止めることはできるが、致命傷を与えるには至らない。

 この狭い空間でこれ以上の火力を用いれば、巻き添えを食う危険があり、全力で攻め立てることもできないのである。


【 セイレン 】

「はぁっ、ふぅっ、くうぅっ……ごふっ!」


 一方、肩を喘がせ、半死半生のアイ・セイレン。

 胸を貫かれた傷は浅くはなく、出血が止まらずにいる。


【 エキセン 】

「セイレン殿……下がった方が、いい――」


【 セイレン 】

「そ、そうは……いきませんっ……ぐふっ!」


 血を滴らせつつも、セイレンは杖に頼って立ち上がる。


【 セイレン 】

「私は……この地の守りを、陛下に……任されたのだからっ……!」


 セイレンの脳裏に、主君たるヨスガの言葉がよみがえる――



【 ヨスガ 】

『――セイレンよ、地下の隠し通路は、そなたに担当してもらうとしよう』


【 ヨスガ 】

『――だが、なにぶんにも無理はするな。あっ、これはいけない……と思ったら、早々に撤退せよ。恥も外聞も捨てて逃げるのだ』


【 ヨスガ 】

『――なに、信頼していないのか、だと? そんなことは……ないが……その、アレだ、誰にでも得手不得手はあるゆえな』


【 ヨスガ 】

『――ゆえに、だ。いざとなったら逃げよ! それこそ、もっとも心すべきことと心得よ――』



【 セイレン 】

「……あれっ? もしかして私、あんまり、期待されてなかった……!?(ガーン)」


 などと、セイレンが愕然としていると。


【 蟲のような異形 】

「ギイイィ――!!」


 いっそう甲高い声を放ちながら、異形の絡繰りが突進してくる。


【 セイレン 】

「エキセン殿……!」


【 エキセン 】

「フ……フフ、すでに、仕掛けは終わっている――」


【 セイレン 】

「…………っ?」


 ――フワワアァ……


【 蟲のような異形 】

「ギイィ……!?」


【 セイレン 】

「これ……はっ……!?」


 絡繰りの周囲に、無数の泡の玉が浮かんでいる。


【 蟲のような異形 】

「ギイイイ……!」


 邪魔だとばかりに振り払おうとするや、


 ――ドオオォンッ!!


【 蟲のような異形 】

「ギイアアアッ……!?」


 泡が誘爆し、絡繰りが悶絶する。


【 セイレン 】

「おおおっ……!」


【 エキセン 】

「フ……フフ、特製の泡爆弾――泡の玉の中の物質が大気に触れることで、爆発する――」


【 エキセン 】

「……しかし、せいぜい足止めくらいにしかならない……やはり、大火力をもって破壊するしか、ないが――」


【 セイレン 】

「はぁっ、はぁあっ……エキセン殿っ……私に、いい考えがあります……!」


 苦しい息の中、セイレンが提案する。


【 セイレン 】

「あの蟲をたおしっ……なおかつ、お互いが生き延びるための、秘策……が……!」

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