◆◆◆◆ 6-64 燎氏の変(50) ◆◆◆◆
――そして、極龍殿の地下、隠し通路においては――
【 蟲のような異形 】
「ギイイイ……!!」
【 エキセン 】
「クフ……フフフ……この先には……行かせるものか」
蟲じみた絡繰りを近づけまいと、立て続けに弾弓で火薬弾を放っていく〈霹靂匠〉こと炮・エキセン。
ドォンッ! ドオオンッ!!
【 蟲のような異形 】
「グギィ……!!」
【 エキセン 】
「フフ……なんとも、しぶとい……!」
進行を食い止めることはできるが、致命傷を与えるには至らない。
この狭い空間でこれ以上の火力を用いれば、巻き添えを食う危険があり、全力で攻め立てることもできないのである。
【 セイレン 】
「はぁっ、ふぅっ、くうぅっ……ごふっ!」
一方、肩を喘がせ、半死半生の藍・セイレン。
胸を貫かれた傷は浅くはなく、出血が止まらずにいる。
【 エキセン 】
「セイレン殿……下がった方が、いい――」
【 セイレン 】
「そ、そうは……いきませんっ……ぐふっ!」
血を滴らせつつも、セイレンは杖に頼って立ち上がる。
【 セイレン 】
「私は……この地の守りを、陛下に……任されたのだからっ……!」
セイレンの脳裏に、主君たるヨスガの言葉がよみがえる――
【 ヨスガ 】
『――セイレンよ、地下の隠し通路は、そなたに担当してもらうとしよう』
【 ヨスガ 】
『――だが、なにぶんにも無理はするな。あっ、これはいけない……と思ったら、早々に撤退せよ。恥も外聞も捨てて逃げるのだ』
【 ヨスガ 】
『――なに、信頼していないのか、だと? そんなことは……ないが……その、アレだ、誰にでも得手不得手はあるゆえな』
【 ヨスガ 】
『――ゆえに、だ。いざとなったら逃げよ! それこそ、もっとも心すべきことと心得よ――』
【 セイレン 】
「……あれっ? もしかして私、あんまり、期待されてなかった……!?(ガーン)」
などと、セイレンが愕然としていると。
【 蟲のような異形 】
「ギイイィ――!!」
いっそう甲高い声を放ちながら、異形の絡繰りが突進してくる。
【 セイレン 】
「エキセン殿……!」
【 エキセン 】
「フ……フフ、すでに、仕掛けは終わっている――」
【 セイレン 】
「…………っ?」
――フワワアァ……
【 蟲のような異形 】
「ギイィ……!?」
【 セイレン 】
「これ……はっ……!?」
絡繰りの周囲に、無数の泡の玉が浮かんでいる。
【 蟲のような異形 】
「ギイイイ……!」
邪魔だとばかりに振り払おうとするや、
――ドオオォンッ!!
【 蟲のような異形 】
「ギイアアアッ……!?」
泡が誘爆し、絡繰りが悶絶する。
【 セイレン 】
「おおおっ……!」
【 エキセン 】
「フ……フフ、特製の泡爆弾――泡の玉の中の物質が大気に触れることで、爆発する――」
【 エキセン 】
「……しかし、せいぜい足止めくらいにしかならない……やはり、大火力をもって破壊するしか、ないが――」
【 セイレン 】
「はぁっ、はぁあっ……エキセン殿っ……私に、いい考えがあります……!」
苦しい息の中、セイレンが提案する。
【 セイレン 】
「あの蟲を斃しっ……なおかつ、お互いが生き延びるための、秘策……が……!」
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