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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
153/421

◆◆◆◆ 6-58 燎氏の変(44) ◆◆◆◆

 極龍殿、その正門における戦局は――


【 ランブ 】

「……はぁっ、はぁあっ……」


【 カズサ 】

「ふーっ、ふーーっ……!」


 ナギ・ランブとセン・カズサが、難敵〈戮仙劔君りくせんけんくん〉を相手に苦戦を強いられていた。


【 戮仙劔君 】

「なかなか愉しませてくれるものだ――が、そろそろ、種切れかな?」


【 カズサ 】

「冗談じゃないわ……! わたしたちの本気は……これから、よっ!」


 そう強がるカズサではあるが、全身のあちこちに大小の手傷を負っており、もはや限界寸前。


【 ランブ 】

「陛下のもとには――断じて……ゆかせぬ……!」


 もとより手負いであったランブの憔悴しょうすいぶりはさらに深刻なもので、その肌は土気色となっている。


【 戮仙劔君 】

「おお、良きかな! 死のふち、絶対の苦境にあってこそ、武の華は爛漫らんまんと咲く――この真理は、今も昔も変わらぬとみえる!」


 そう言って機嫌よく微笑む戮仙劔君は、いくらか衣服を裂かれてはいるものの、一筋の血すらも流してはいない。

 ヨスガ麾下きかにおける屈指の遣い手であるランブとカズサを相手にこれほどの実力差、まことに古代の剣豪というのは法螺ほら話ではなさそうだった。


【 戮仙劔君 】

「さて、もっと愉しみたいのは山々だが……そうもいかぬ。夜は短く、人の生もまた短い」


 カラン……


 ふいに、戮仙劔君が履いていた木履きぐつを脱いだ。

 そして――


【 戮仙劔君 】

「我が全力をもって、そなたたちに馳走するとしよう――」


 素足で地面を踏みしめ、背中に負った長剣を抜き、高々と大上段に構える。


【 ランブ 】

「――――!」


【 カズサ 】

「な、なに、あの剣……あの構えはっ!?」


 先ほど、ランブを相手にしたときとはまた違う構えであったが、そこには一切の力みがなく、すっかり脱力しきっているかのよう。

 それでいて、近づけば一瞬にして両断される……そんな確信を抱かせる、恐るべき姿であった。


【 戮仙劔君 】

「――我が無双の剣、受けてみるか――ランブ、カズサ!」


【 ランブ 】

「……っ、望むところっ……!」


【 カズサ 】

「(大姐おねえさま――なにか、策が? あの構え……あれ絶対に、やばいやつですっ……!)」


 声を殺して問いかける。


【 ランブ 】

「(わかっている――私がこの身で受け止める。その間に、カズサ殿は――)」


【 カズサ 】

「(はぁあっ? 却下! 却下ですっ! こんなところで死ぬのは許しません! 天が認めても、陛下は決してお許しになりません! もちろん、このわたしも!)」


【 ランブ 】

「(……っ、しかし、それ以外には――)」


【 カズサ 】

「(……わたしが、奥の手を使います)」


【 ランブ 】

「(奥の手……あれか。しかし、それでも……)」


【 カズサ 】

「(ええ、たおせはしないでしょう。でも……)」


 いっそう声を抑え、カズサがランブに策を言い含める。


【 ランブ 】

「(……そうか。心得た。たのむ)」


【 カズサ 】

「(大姐おねえさまも……!)」


 カズサが一歩、前に出る。


【 戮仙劔君 】

「作戦会議は終わったか?」


【 カズサ 】

「ええ、決まったわ。戮仙劔君……だったかしら? あなたを冥府あのよに追い返すための、必勝の策がね!」


【 戮仙劔君 】

「ほう――」

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