◆◆◆◆ 6-55 燎氏の変(41) ◆◆◆◆
【 陸の仙 】
「フン……使えぬ奴よ。せっかく、露払いに任じてやったというのに、な」
*露払い……貴人の先導役の意。
倒れ伏した参の仙を足蹴にしている。
いわば、身代わりとして利用していたにすぎなかったらしい。
【 陸の仙 】
「ククク……もはや、手向かいは無用ですぞ」
【 ヨスガ 】
「ふむ……なるほどな。より確実性を重んじるためであったか。侮れぬな」
【 ホノカナ 】
「なるほどって感心してる場合ですか~!?」
【 陸の仙 】
「されば、陛下――」
【 ホノカナ 】
「…………っ!」
迫る陸の仙に立ちはだかり、せめてヨスガの盾になろうとするホノカナであったが――
【 陸の仙 】
「! ぬうっ……!?」
なぜか、とっさに飛びすさり、間合いを取る陸の仙。
【 ホノカナ 】
「……っ? も、もしかして、わたしの必死の気迫に押されてっ……!?」
【 ヨスガ 】
「いや、それはありえまいが――むっ?」
【 ホノカナ 】
「っ!? か、影がっ……!?」
ヨスガの影が、異様なゆらぎを見せたかと思うと、
【 ホノカナ 】
「――っ!? わぁああっ?!」
【 ???? 】
「――――っ」
床から、何者かが飛び出してきた――
【 ホノカナ 】
「え、ええっ!? へ、陛下の影から、人が……!?」
【 陸の仙 】
「…………っ!」
【 ???? 】
「…………」
甲冑姿の長身の人影が、ヨスガの傍らに立っていた。
【 ヨスガ 】
「――――」
【 ホノカナ 】
「もしかしてっ、陛下の護衛……!? こんな切り札を隠してたんですねっ、さすがですっ!」
【 ヨスガ 】
「いや……知らん。初めて見た」
【 ホノカナ 】
「ええっ!? じゃ、じゃあ、誰なんですっ!?」
【 ヨスガ 】
「それは我の台詞よ。そなた――何者だ?」
【 ???? 】
「…………」
【 ヨスガ 】
「! そうか、そなた……我影也、だな?」
【 我影也 】
「…………」
小さく頷いて、ヨスガを守るように立ちはだかる。
【 ホノカナ 】
「我影也って……あっ、あの、密かに情報を送ってくれるっていう……?」
【 ヨスガ 】
「うむ……このような姿だとは、我も知らなかったがな」
【 我影也 】
「…………」
【 陸の仙 】
「ぬうっ……!」
思わぬ邪魔者に、身構える陸の仙。
【 陸の仙 】
「――――っ!」
方術で加速した踏み込みで、一気に間合いを詰める――
【 我影也 】
「…………」
ドカッ! バキッ! メキイッ!
【 陸の仙 】
「なんだっ……こけおどしかっ!」
無抵抗で打撃を受け続けている。
【 ホノカナ 】
「あ、ああっ……!」
【 陸の仙 】
「これで――仕留めてくれるっ!」
【 我影也 】
「…………!」
【 ヨスガ 】
「待て――殺すな!」
【 陸の仙 】
「なにを――っ!?」
【 我影也 】
「──御意――」
ミシッ……!!
【 陸の仙 】
「ぐっ……はっ……!?」
一瞬の早業であった。
我影也は方士の背後に回り、その首に腕を絡め、絞めていた。
【 陸の仙 】
「…………!」
口から泡を吹きながら、あえなく失神する陸の仙。
【 我影也 】
「…………」
【 ホノカナ 】
「す――す、すごいっ……!」
【 ヨスガ 】
「うむ――見事である! そなたは――」
【 我影也 】
「……ぅ、うっ……ううっ……!」
ふいに呻き声をこぼしつつ、ひざまずく我影也。
【 ホノカナ 】
「……えっ?」
……シュウウウウ……
【 我影也 】
「…………!!」
突然、我影也の全身から白い煙が立ちのぼりはじめた……
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