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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
15/421

◆◆◆◆ 2-5 侠士 ◆◆◆◆

 遅い夕食をすませたところで。


【 ホノカナ 】

「う~ん……」


 これからどうするべきか、ホノカナは思案していた。

 もっとも、この状況ではできることなど、ほとんどなにもないのだが。


【 ホノカナ 】

「はぁ……ショウさんに合わせる顔がないよ……」


【 ???? 】

「――まったくだ。呆れてものもいえねぇ」


【 ホノカナ 】

「!?!!?」


 ふいに部屋の奥から声がして、ホノカナは飛び上がった。

 暗がりの中から、一人の男の姿がスウッと出てくる。


【 ホノカナ 】

「あっ……ユイさん!?」


【 ユイ 】

「バカ野郎、大声を出すんじゃねぇ……!」


【 ホノカナ 】

「んっ! んぶぶっ……!」


 ユイの手で口をふさがれ、うめくホノカナ。


【 ホノカナ 】

「ぜぇぜぇ、ユイさん、どうしてここに……あっ、もしかしてユイさんも捕まったんですか!?」


【 ユイ 】

「……なにをどうすればそう思うんだ」


 呆れ顔の壮士は、まさしく〈風雲忍侠〉こと虎王コオウ・ユイその人であった。


【 ユイ 】

「俺は姐さんに頼まれて、お前の様子を見に来たんだよ。いいか? 姐さんに頼まれてだからな。別にお前が心配だったとか、そういうのじゃねえんだ。間違えるなよ?」


【 ホノカナ 】

「なるほど、わかりました! わたしを心配して来てくれたんですね!」


【 ユイ 】

「…………」


 ユイは頭痛をこらえるように眉間をこね回し、


【 ユイ 】

「……とにかく、案の定だ。なにかしくじってないかとは思ったが、まさか皇帝陛下を怒らせるとはな……」


【 ホノカナ 】

「うう……すみません。つい……」


【 ユイ 】

「つい……ですむ話じゃあねえだろうが。まったく……はぁ……」


 ため息をつきつつ、


【 ユイ 】

「言っておくが、逃がしてくれるんじゃ? なんて期待するなよ。お前を連れて逃げるなんて、無理な相談だからな」


【 ホノカナ 】

「……わかってます。悪いのは、わたしですから……」


【 ユイ 】

「…………」


 顔を伏せるホノカナをじっと見て、


【 ユイ 】

「……弟に、なにか伝言はあるか?」


【 ホノカナ 】

「あっ、はい! そう、それが心残りで……あの子、元気ですか?」


【 ユイ 】

「あぁ、元気すぎるほど元気だよ。手のかかる小僧だ」


【 ホノカナ 】

「ふふ」


 その姿を思い浮かべたのか、微笑をうかべるホノカナ。


【 ホノカナ 】

「えっとですね、あの子に伝えたいのは……まず、わがリン家は、今は落ちぶれちゃってるけど、由緒正しい家柄で――」


 と、ホノカナが伝言を託そうとした矢先。


【 ユイ 】

「――ちっ、誰か来る……!」


【 ホノカナ 】

「あっ!? ちょ、ちょっと待ってくださいっ、すぐ終わりますから! もうちょっと……!」


【 ユイ 】

「もう遅いっ、あばよ、小姐おじょうちゃん! 運があれば、また会おう――」


 たちどころに、ユイの気配は消え失せた。


【 ホノカナ 】

「あっ……う、うう……もうちょっとだったのに……」


 がっくりと肩を落とすホノカナ。


【 ミズキ 】

「……誰か、いたのですか?」


【 ホノカナ 】

「あ――」


 格子から、ミズキが不審そうな目を向けている。


【 ホノカナ 】

「い、いえっ! わたし、ひとりごとが多くてですね……!」


【 ミズキ 】

「……まぁ、いいでしょう」


 と、ミズキは扉を開けて。


【 ミズキ 】

「ついてきなさい」


【 ホノカナ 】

「あ、あの――」


 どこへ行くのですか、と言いかけて、ホノカナは口をつぐんだ。


【 ミズキ 】

「そう、あなたに質問は許しません。むしろ、これからはずっと黙っているように」


【 ホノカナ 】

「…………っ」


 口を手で押さえ、うんうん、とうなずいてみせるホノカナだった。

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