◆◆◆◆ 6-53 燎氏の変(39) ◆◆◆◆
【 ホノカナ 】
「……っ? あれっ……誰かに、なにか言われたような……? あれぇ……?」
【 ヨスガ 】
「――待て。この足音は――」
コツ……コツ……
【 侍衛長 】
「まさか……!? 扉は厳重に封鎖しているはずっ……!」
【 ヨスガ 】
「〈千里行〉を使って、直接刺客を送り込んできたか――来るぞ、備えよ!」
【 侍衛長 】
「はっ! 集合せよ、陛下をお守りする!」
【 侍衛たち 】
「ははっ!」
命令一下、侍衛たちが集結し、天子を守るように陣を布く。
【 ホノカナ 】
「…………っ」
ホノカナもヨスガの御佩刀を預かり、彼女に寄り添う。
そして、足音の主たちが姿を見せた。
【 長身の方士 】
「用があるのは――陛下のみ。他の者は――」
【 小柄な方士 】
「ご退場、願いましょう……ククッ!!」
【 ホノカナ 】
(あれって――まさか!?)
『参』と『陸』の覆面をつけた方士が、悠然とした足取りで歩み寄ってくる。
すなわち、〈十二佳仙〉の〈参の仙〉、そして〈陸の仙〉であった。
【 ホノカナ 】
(十二佳仙……!? 直接やってくるなんて!)
十二佳仙は、その御大層な名にもかかわらず、ろくに方術も使えないエセ方士ぞろい――というのが定説である。
まさか、こうして自分たちから堂々と乗り込んでくるとは、想像もしていなかった。
【 侍衛長 】
「おのれっ、十二賊ふぜいがっ! ぶしつけにも陛下の御前へ乗り込んでくるとは、言語道断っ!!」
怒りに駆られた侍衛長が、左右の鉞を手に、方士たちへまっしぐらに突き進む――
【 ヨスガ 】
「――待て、〈虹〉!」
ヨスガの声が、届く前に。
【 侍衛長 】
「ランブ様に代わって――成敗するっ!」
【 参の仙 】
「ふ――」
――バキィッ!!
【 侍衛長 】
「ぐぁっ!?」
長身の方士が放った蹴りで、侍衛長は軽々と吹き飛ばされ、床をゴロゴロと転がる。
【 侍衛たち 】
「なっ……!?」
【 ホノカナ 】
「えええっ!?」
まさかの光景に、絶句する一同。
侍衛長が見掛け倒し……で、あるはずもなく。
【 参の仙 】
「ふ……ふふ。なるべく殺すな、と言われてはおりますが――抵抗するなら、是非もなし……」
【 陸の仙 】
「ククッ……クククッ……!」
【 ヨスガ 】
「ほう――十二佳仙にも、少しは骨のある輩がいたようだな」
【 ホノカナ 】
「そんなかっこいいセリフ言ってる場合ですか~~っ!?」
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