◆◆◆◆ 6-51 燎氏の変(37) ◆◆◆◆
【 セイレン 】
「く、来るなら……ごふっ! もうちょっと、早く来てほしかったです、ねっ……!」
【 エキセン 】
「クク……すまん……ちと、迷った」
【 セイレン 】
「そ、そんな感じ……!? 私、もう、死にそうなんですけどっ……!」
【 エキセン 】
「もう少し……踏ん張れ。ゼンキョクが来るまで、耐えれば……助かる。……たぶん」
【 セイレン 】
「た、たぶん……!? それまで……もたなかった、ら……!?」
【 エキセン 】
「…………」
【 セイレン 】
「…………!?」
【 エキセン 】
「――あなたのことは、忘れない。どうか、安らかに眠ってほしい」
【 セイレン 】
「急に丁寧になるのやめてくれますぅっ!? ……ごふっ!」
もはや、ツッコミも命懸けのありさまであった。
【 エキセン 】
「フフ……まだまだ……元気そうでなにより――」
弾弓で、続けざまに火薬の詰まった弾を放っていく。
――ドォンッ! ドゴォッ!!
【 異形の刺客 】
「――っ!」
次々と破壊されていく、絡繰りの刺客たち。
【 セイレン 】
「おぉっ……大した、威力……!」
【 エキセン 】
「クク……だが、あいつは……まずい……な」
かの、蟲のごとき傀儡は――
【 蟲のような異形 】
「ギイイ……イイイィィ……!」
【 セイレン 】
「これ、はっ……再生、しているっ……!?」
先ほどかなりの損傷を負っていたはずであるが、今や、あらかた回復してしまっている。
【 エキセン 】
「もっと強い火薬を、使わねば……それでいて、やり過ぎれば、こちらも生き埋め……厄介、だなっ……クフフ……!」
【 セイレン 】
「な、なんで、楽しそうなんですかっ……ぐふぅっ!」
【 ヨスガ 】
「この、小刻みな揺れ……エキセンの爆破だな」
なおも琵琶を演奏し続けながら、ヨスガが耳をそばだてる。
【 侍衛長 】
「はっ、先遣隊が間に合ったかと……!」
【 ヨスガ 】
「む……ならば、この足音は――」
ドンドン! と扉を叩く音が響く。
【 ホノカナ 】
「陛下っ! 鱗・ホノカナ、参上いたしました!!」
【 ヨスガ 】
「……きたか。入れてやれ」
【 侍衛長 】
「は――」
【 ホノカナ 】
「遅くなって申し訳ありません、陛下っ!」
【 ヨスガ 】
「ふむ……」
ヨスガは、埃まみれで平伏するホノカナに目をやると、
【 ヨスガ 】
「――遅いっ! 遅すぎるわ!!」
【 ホノカナ 】
「も、申し訳ありません~~っ!」
一喝され、ひたすら頭を下げるホノカナ。
【 侍衛長 】
「そうですよ、ホノカナ殿! 陛下は先ほどからずっと、あやつはまだか、あやつはどうした、と心配しておいででした!」
【 ヨスガ 】
「はぁ!? 適当なことを申すでないわ!」
【 ホノカナ 】
「そ、そうだったんですね! でも、そんなことだろうと思ってました!」
【 ヨスガ 】
「はぁあぁ!? そなたも調子に乗るでないわ!! 後でしこたま折檻してくれるゆえ、忘れるでないぞ!!」
楽器を演奏しているばかりに、口で罵倒することしかできないヨスガであった。
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