◆◆◆◆ 6-50 燎氏の変(36) ◆◆◆◆
【 セイレン 】
「ごふっ……!」
吐血しながら床を転がり、距離を取るセイレン。
彼女を刺し貫いたのは――
【 蟲のような異形 】
「ギギ……ギイイィ……!」
【 セイレン 】
「ぐっ……こ、このっ……怪物はっ……ぐうっ! ホノカナ殿が言って、いたっ……」
ホノカナが遭遇したという、蟲めいた異形の存在にちがいない。
【 セイレン 】
「こ、これも絡繰りっ……? しかし、他の絡繰りとは……まるで異質な……ぐふっ!」
【 蟲のような異形 】
「ギイイ……!!」
【 セイレン 】
「ぐっ……ううっ!」
耳障りな声と同時に振り下ろされた一撃を、セイレンは間一髪で避ける。
【 セイレン 】
「はぁ、はぁあっ……ぜぇっ……ぐっ……ふっ……!」
貫かれたのは肺であろうか、心臓を直撃されなかっただけマシではあるにせよ、致命的な傷には違いない。
【 蟲のような異形 】
「ギイイイイ……!」
【 セイレン 】
「な、なんの……これしき……! 空前絶後の超軍師にしてっ……古今未曽有の……超仙術師である、私がっ……この程度で――」
【 セイレン 】
「……と、強がりたい、ところですが……くっ……目が、かすむっ……力が、抜けるっ……」
床に這いつくばり、己の流した血にまみれ、ぜぇぜぇと息を荒げるセイレン。
【 セイレン 】
「ああ……この傷では、もはや……助からないでしょうっ……天に愛されるがゆえに、天に求められてしまう我が底なしの才能が……今は、憎いっ……!」
【 セイレン 】
「……されど、私にも、意地があるっ……!」
……ポオォォ……
【 セイレン 】
「せめて……この敵だけでも、冥府への道連れにしてみせますともっ……!」
鮮血を滴らせながらも印を結ぶと、セイレンの肢体が淡い光を放ちはじめる。
【 蟲のような異形 】
「ギイィッ……?」
異変を察知したのか、蟲型の絡繰りが離れようとするが、
【 セイレン 】
「逃がしは、しない――冥府の底まで、付き合ってもらいましょうっ……!」
セイレンの放つ光が、さらに強くなり――
【 セイレン 】
「我が、渾身の秘術にて――――お……おおおおおおおおっ……!!」
――――ドオオォンッ!!
【 蟲のような異形 】
「――ギイイイィィッ!?」
通路内に、爆音が響き渡った――
【 ヨスガ 】
「む……この揺れは……」
極龍殿の奥の間で、ヨスガがつぶやく。
【 侍衛長 】
「地下の隠し通路で、なにかあったかと……!」
【 ヨスガ 】
「ああ、セイレンか、あやつは……あやつは――」
【 ヨスガ 】
「――あやつは……いったい、なんなのだろうな?」
【 侍衛長 】
「ええっ? わ、私に問われましても……」
【 ヨスガ 】
「ふむ、我とてよくわからぬ。わからぬが――」
【 ヨスガ 】
「――あやつが、とびきりしぶといことだけは、確かだ」
【 蟲のような異形 】
「グギイイィィ……!」
奇声を放ちつつ、のたうち回る蟲型の絡繰り。
先ほどの爆発で、その身は焼けただれている。
【 セイレン 】
「……ぜぇ、ぜぇっ……ふっ……さ、さすがは、我が命をかけた一撃……すさまじい、威力っ……」
【 セイレン 】
「…………あれ?」
セイレンは、木っ端微塵……には、まだなっていない。
ならば、先の爆発は――
【 ???? 】
「ク……ククク……見せ場を、奪って……悪かった、な――」
弾弓を手に、ゆらりと姿を見せたのは、
【 セイレン 】
「……っ! 爆弾魔殿――ではなく……エキセン殿……!」
【 エキセン 】
「クフ……やりすぎて……生き埋めにならないように、せねば……な」
ヨスガに仕える爆弾使い、〈霹靂匠〉こと炮・エキセン、その姿であった――
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