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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
145/421

◆◆◆◆ 6-50 燎氏の変(36) ◆◆◆◆

【 セイレン 】

「ごふっ……!」


 吐血しながら床を転がり、距離を取るセイレン。

 彼女を刺し貫いたのは――


【 蟲のような異形 】

「ギギ……ギイイィ……!」


【 セイレン 】

「ぐっ……こ、このっ……怪物はっ……ぐうっ! ホノカナ殿が言って、いたっ……」


 ホノカナが遭遇したという、蟲めいた異形の存在にちがいない。


【 セイレン 】

「こ、これも絡繰りっ……? しかし、他の絡繰りとは……まるで異質な……ぐふっ!」


【 蟲のような異形 】

「ギイイ……!!」


【 セイレン 】

「ぐっ……ううっ!」


 耳障りな声と同時に振り下ろされた一撃を、セイレンは間一髪で避ける。


【 セイレン 】

「はぁ、はぁあっ……ぜぇっ……ぐっ……ふっ……!」


 貫かれたのは肺であろうか、心臓を直撃されなかっただけマシではあるにせよ、致命的な傷には違いない。


【 蟲のような異形 】

「ギイイイイ……!」


【 セイレン 】

「な、なんの……これしき……! 空前絶後の超軍師にしてっ……古今未曽有ここんみぞうの……超仙術師である、私がっ……この程度で――」


【 セイレン 】

「……と、強がりたい、ところですが……くっ……目が、かすむっ……力が、抜けるっ……」


 床に這いつくばり、己の流した血にまみれ、ぜぇぜぇと息を荒げるセイレン。


【 セイレン 】

「ああ……この傷では、もはや……助からないでしょうっ……天に愛されるがゆえに、天に求められてしまう我が底なしの才能が……今は、憎いっ……!」


【 セイレン 】

「……されど、私にも、意地があるっ……!」


 ……ポオォォ……


【 セイレン 】

「せめて……この敵だけでも、冥府あのよへの道連れにしてみせますともっ……!」


 鮮血を滴らせながらも印を結ぶと、セイレンの肢体が淡い光を放ちはじめる。


【 蟲のような異形 】

「ギイィッ……?」


 異変を察知したのか、蟲型の絡繰りが離れようとするが、


【 セイレン 】

「逃がしは、しない――冥府の底まで、付き合ってもらいましょうっ……!」


 セイレンの放つ光が、さらに強くなり――


【 セイレン 】

「我が、渾身の秘術にて――――お……おおおおおおおおっ……!!」


 ――――ドオオォンッ!!


【 蟲のような異形 】

「――ギイイイィィッ!?」


 通路内に、爆音が響き渡った――




【 ヨスガ 】

「む……この揺れは……」


 極龍殿の奥の間で、ヨスガがつぶやく。


【 侍衛長 】

「地下の隠し通路で、なにかあったかと……!」


【 ヨスガ 】

「ああ、セイレンか、あやつは……あやつは――」


【 ヨスガ 】

「――あやつは……いったい、なんなのだろうな?」


【 侍衛長 】

「ええっ? わ、私に問われましても……」


【 ヨスガ 】

「ふむ、我とてよくわからぬ。わからぬが――」


【 ヨスガ 】

「――あやつが、とびきりしぶといことだけは、確かだ」




【 蟲のような異形 】

「グギイイィィ……!」


 奇声を放ちつつ、のたうち回る蟲型の絡繰り。

 先ほどの爆発で、その身は焼けただれている。


【 セイレン 】

「……ぜぇ、ぜぇっ……ふっ……さ、さすがは、我が命をかけた一撃……すさまじい、威力っ……」


【 セイレン 】

「…………あれ?」


 セイレンは、木っ端微塵……には、まだなっていない。

 ならば、先の爆発は――


【 ???? 】

「ク……ククク……見せ場を、奪って……悪かった、な――」


 弾弓パチンコを手に、ゆらりと姿を見せたのは、


【 セイレン 】

「……っ! 爆弾魔殿――ではなく……エキセン殿……!」


【 エキセン 】

「クフ……やりすぎて……生き埋めにならないように、せねば……な」


 ヨスガに仕える爆弾使い、〈霹靂匠へきれきしょう〉ことホウ・エキセン、その姿であった――

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