◆◆◆◆ 6-46 燎氏の変(32) ◆◆◆◆
けたたましい声とともに捧武庁に入ってきたのは、一人の方士であった。
【 ショウキ 】
「よお、副軍師殿。さっきはご苦労さんだったな」
【 副軍師 】
「いやいや、この弔いの采配という大役を務められるのは地母会にあってもこの私だけでありましょう! 明殿の大恩を想い、この藍・セイレン、懸命に祈らせていただきましたとも、ええ!」
【 ヒエン 】
「あいかわらずよく舌が回る奴だな……」
【 ジンマ 】
「……副軍師、助かった。礼を言う」
【 セイレン 】
「いえいえ! ところで、ちと皆さまにお話がありまして、まかりこした次第!」
【 ショウキ 】
「と、いうと?」
【 セイレン 】
「はい、私、これにてお暇しようかと!」
【 ショウキ 】
「…………っ」
【 ヒエン 】
「おい、仲間を抜けるってことか? そりゃあ……」
【 セイレン 】
「なるほど、皆さまが私を惜しむのは道理っ! この天下の大才、無双の方士がいなくなるのは、さぞ痛手ではありましょう!」
【 ショウキ 】
「…………」
【 ヒエン 】
「…………」
【 ジンマ 】
「…………」
【 セイレン 】
「その沈黙の意味は少し気になりますが、ともあれ、これもやむなし! そもそも、明殿なき今、地母会は実質的にもはや死に体でありましょう?」
【 ショウキ 】
「――っ、そりゃア……」
【 ヒエン 】
「……言いにくいことをはっきり言いやがる」
【 セイレン 】
「であれば、おのおの、自分たちの道を選ぶのが道理というもの! 違いますか?」
【 ジンマ 】
「……ふむ……」
【 セイレン 】
「というわけで、名残惜しくはありますが、これにておさらばです! 縁があれば、またお会いすることもありましょう!」
【 セイレン 】
「そう、目を閉じれば、数々の思い出が走馬灯のように……!」
【 セイレン 】
「…………」
【 セイレン 】
「……………………」
【 ショウキ 】
「……どうしたんだい?」
【 セイレン 】
「……いや、ここは引き留めるところではないんですか!? 私ですよ! このセイレンが離れようとしてるんですよ! 引き留めるのが当然なのでは!?」
【 ヒエン 】
「前から思ってたけどよ……コイツ、めんどくせぇヤツだな」
【 ショウキ 】
「奇遇だね。あたしも薄々思ってたよ」
【 ジンマ 】
「お主が自分で言った通り、自分の道は自分で選ぶもの。ならば、それを止める道理はない」
【 セイレン 】
「……そ、そうですか。まあ別に、引き留めてほしいわけではありませんが! ねっ!」
【 ショウキ 】
「めちゃくちゃ引き留められたがってるじゃアないか……」
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