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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
14/421

◆◆◆◆ 2-4 武人ランブ ◆◆◆◆

【 ホノカナ 】

「…………」


 その夜。

 ホノカナの姿は、宮廷の暴室ぼうしつにあった。

 *暴室……宮女の独房のごときもの。


【 ホノカナ 】

「……はぁぁー……」


 さすがに、そのため息の重さたるや、昼間のそれとは比べものにならない。


【 ホノカナ 】

(やっちゃったなぁ……)


 いくらなんでもあれはなかった、とホノカナは後悔しきりだった。

 天子てんしさまの命令に逆らうどころか、罵ってしまうとは……


【 ホノカナ 】

(わたし、どうなっちゃうんだろ……)


 いかに楽天家の彼女といえど、さすがにこの状況を前向きにとらえることはできそうにもない。

 あの場で斬り捨てられていても、決しておかしくなかったのだ。

 よくて追放、おおかたは、


【 ホノカナ 】

(く、首を、チョッキンと……!)


 自分の首に触れて、息をのむホノカナ。


【 ホノカナ 】

「はぁ……」


 毛布一枚しかない床に寝そべる。


【 ホノカナ 】

ショウさんに、悪いことしちゃったなぁ……)


 せっかく推薦してもらったというのに、これでは彼女の面目は丸つぶれであろう。

 そればかりではなく、


【 ホノカナ 】

(これじゃあ、あの子も……)


 と、弟の顔が頭によぎる。

 それから――


【 ホノカナ 】

(……それに、陛下は……)


 ――ガチャリ。


【 ホノカナ 】

「――――っ」


 扉の下の方にある小窓が開いて、食事が差し入れられた。


【 ホノカナ 】

「あっ――ありがとうございます!」


 絶体絶命の危地にありながらも、ホノカナは礼をいった。


【 ランブ 】

「…………」


 扉の上部にある格子に、人の顔がうかぶ。


【 ホノカナ 】

「あ――」


 それは、昼間、彼女をかばった顔だった。


【 ホノカナ 】

「あ、ありがとうございます、ランブさま! あのとき、かばってくださって……!」


 平伏して礼を述べるホノカナ。

 昼間は動転してつい忘れていたが、これほどの巨体を持つ人物は宮城広しといえどもほかにはいない。


【 ランブ 】

「……私は、貴殿をかばったわけではない」


 帝ヨスガの護衛の士、〈ナギ・ランブ〉は静かに答えた。


【 ホノカナ 】

「でも、おかげで助かりました! ありがとうございます!」


 あらためて礼を告げるホノカナを一瞥して、


【 ランブ 】

「……なぜだ?」


【 ホノカナ 】

「えっ……?」


 ぽかんとした顔を向けてしまう。


【 ランブ 】

「なぜ、貴殿は陛下にあのような暴言を放った?」


【 ホノカナ 】

「そ、それは、その――」


 口ごもるホノカナ。


【 ホノカナ 】

「その……みんなが鞭打たれるなんておかしいと思って……ついでに、いつも思ってたことが口に出ちゃいまして……」


【 ランブ 】

「……そうか」


 ランブは目を伏せ、大きく息をついた。

 あっ、わたし呆れられてる……とホノカナは確信した。


【 ランブ 】

「……では、失礼する」


【 ホノカナ 】

「あっ……ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」


 格子にひっつき、ランブに呼びかける。


【 ランブ 】

「……なにか?」


【 ホノカナ 】

「あの――こんなこと、わたしが言えたことではないんですけど……」

「……もしできるなら、陛下に、わたしがごめんなさい! と謝っていた、ってお伝えください!」


【 ランブ 】

「――――」


 否とも諾とも答えぬまま、足音を残して、ランブは去っていった。


【 ホノカナ 】

「…………」


 ふぅ、とホノカナは腰を落とす。

 それにしても、首をかしげざるをえない。

 〈双豪斧そうごうふ〉ランブは名うての武人であり、今はヨスガの護衛の任をつとめている。

 そんな彼女が、わざわざ食事を持ってきたりするとは……?


【 ホノカナ 】

(……ちょうど手が空いてたのかな?)


 なにはともあれ、


【 ホノカナ 】

「……いただきます!」


 質素な食事とて、今はありがたく頂戴せねばならぬだろう。

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