◆◆◆◆ 6-40 燎氏の変(26) ◆◆◆◆
【 ミズキ 】
「――はあああっ!」
ブォンッ!
迫り来る妖魔の手目がけて、気合一閃、ミズキが太刀を振るう。
すると、触手は彼女に近づくこともならず、たちまち粉みじんとなった。
〈空刀〉は徒手空拳の技だが、いわばその応用である。
【 セイジュ 】
「おお――さすがの手並み!」
【 ハナオ 】
「――むぅんっ!」
直立不動の状態から放ったハナオの拳が、迫りくる数知れない手を続けざまに粉砕する。
【 セイジュ 】
「琅の姉妹もやるものだ! あっ、私は荒事は苦手なので……任せたよ!」
【 ミズキ 】
「はっ? ならば、なぜノコノコとこんなところに……! バカなのですかっ!」
次々と迫ってくる魔手を切り伏せながら、ミズキが毒づく。
【 ハナオ 】
「はぁっ? 盟主をバカ呼ばわりするなんて……どこまで身の程知らずな……後で八つ裂きにして犬に食わせてあげる……!」
これまた押し寄せる魔物の手を打ち払いつつ、ハナオが罵る。
【 ミズキ 】
「バカをバカと言って、なにが悪いんですかっ!」
【 ハナオ 】
「またバカって言った!? 盟主! 先にこの小娘から片付けてもいいですかっ? いいですよね!?」
【 セイジュ 】
「君たちさぁ、そういうのは後にしてくれないかな!?」
などと言い合いつつも、妖魔の猛攻をしのいでいたところへ、
【 奇妙な存在 】
「んん……そうだ……ちゃんと、“皮”は、むかないと……」
ブシャアアアアッ!!
【 ミズキ 】
「――なっ!?」
突然、怪物の身体から部屋中に大量の粘液が飛び散り、ミズキたちにまとわりつく。
【 ミズキ 】
「うぐっ……これはっ……剣がっ!?」
肌は無傷だというのに、剣が腐食しはじめた。
さらには、じわじわとではあるが衣服も溶けてきている。
ただの粘液ではなく、かの妖魔の“余計なものだけを溶かす”という意思がこもった呪物的な体液である。
【 ハナオ 】
「ちいっ……洒落た……真似をっ!」
【 セイジュ 】
「やはり妖魔はなんでもありらしいっ……このままだと、食われるのを待つだけか……!」
【 ハナオ 】
「させません――盟主だけでも、逃げていただきます……!」
【 セイジュ 】
「ありがたいけど、そうもいかないさ。こいつを片付けるまではね……!」
【 ミズキ 】
「しかしっ……どうやって!?」
この有り様では、迂闊に近づくことすら、ままならない。
【 セイジュ 】
「うん、仕込みはしてあるよ――っと!」
と、セイジュが手にした鉄扇を振る。
【 ミズキ 】
「っ! これは――」
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