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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
134/421

◆◆◆◆ 6-39 燎氏の変(25) ◆◆◆◆

【 ハナオ 】

「盟主――お下がりください……!」


 ハナオが、セイジュを守るように前に立つ。


【 ミズキ 】

「あれは……なんなのですっ……!?」


 ミズキは、己の声が震えているのを自覚していた。

 その視界に入る寝所は、異様な空間と化していたのだ。

 床には、丞相の夜伽よとぎを務めていたのであろう女たちの無惨な屍が転がっている。

 そして、部屋の真ん中で、“食事”を愉しんでいるのは――


【 奇妙な存在 】

「おや……おやおや、これは……たすかる」


 身の丈はハナオをさらに上回り、全身が粘ついた体液で覆われた奇怪な生き物が、そこにいた。

 しいていうなら、直立したトカゲというところだが……ギョロリとした巨大な目は一つや二つではない。

 明らかに、通常の獣などではありえない。


【 奇妙な存在 】

「“おかわり”が、わざわざ、きてくれたのか……うれしい……うれしい」


 甲高い人の声こそ発しているが、その姿は、明らかに――


【 ミズキ 】

「まさか……妖魔ばけものっ!?」


 この世ならぬ〈夜の国〉に巣食うとされる、異形いぎょうの存在。

 物語の世界でしかお目にかかれないはずのそれが、今、眼前にいた。


【 セイジュ 】

「そのようだ……! やれやれ、こんなことなら、専門家を連れてくるべきだったな!」


【 ハナオ 】

「副軍師殿ですか……あの御仁は……ごくごくまれにしか役に立ちません……!」


【 セイジュ 】

「辛辣だね! 私も否定しかねるけども!」


【 奇妙な存在 】

「もっと……もっと、たべないと……んふぅ……」


 妖魔とおぼしき“それ”の数多の目が、ミズキたちへと向けられる。


【 ミズキ 】

「うっ……!}


 本能的な恐怖が湧き上がってきて、思わず怖気が走る。


【 ミズキ 】

「! まさかっ……丞相の正体は、妖魔だったということですか……!?」


【 セイジュ 】

「そうかもしれないね。最初からそうだったのか、途中から成り代わったのか……」


【 セイジュ 】

「あるいは、妖魔とつるんでいたのか、たまたま通りすがりのこいつに襲われたか……いずれにせよ、向こうは私たちを夜食にする気満々のようだね!」


【 ハナオ 】

「妖魔ふぜいが……盟主に仇なすなどっ……断じて許しません!」


【 ミズキ 】

「…………っ!」


 ようやく狼狽から立ち直り、剣を抜いて身構えるミズキ。


【 セイジュ 】

「ちなみに紅雪華どの、妖魔とやり合った経験はっ?」


【 ミズキ 】

「ありません――が、物語はよく聞かせてもらいました、姉さまに!」


 己を励ますように、ひときわ大声で応じる。


【 セイジュ 】

「そいつは頼もしい! ……くるぞ!」


【 奇妙な存在 】

「いただき――まぁす」


 ズルッ……ズズウウッ!!


 怪異の身体から無数の“手”が伸び、ミズキたちへと殺到する!


【 ミズキ 】

「…………っ!」

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