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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
133/421

◆◆◆◆ 6-38 燎氏の変(24) ◆◆◆◆

 それから、数刻ののち……

 ミズキとセイジュ、ハナオは、キョ家の邸宅内にあった。

 と、書いてしまうといともあっさり侵入できたかのようだが、実際はセイジュの同志たちの援護のたまものである。


【 ミズキ 】

「まるで、本当の大軍が攻めてきたようで……あんな芸当が可能だとは思いませんでした」


【 セイジュ 】

「ふふ、なかなかのものだっただろう?」


 セイジュの仲間には幻術、中でも音を操る達人がおり、その者にかかればあたかも大軍が押し寄せてきたかのように錯覚させることも可能なのである。

 守兵が混乱する中、三人はまんまと侵入に成功したのだった。


【 セイジュ 】

「さて……丞相の寝所は、この先のようだね」


 邸内の見取り図に目をやって、セイジュが告げる。


【 ミズキ 】

「それも、お仲間の手柄ですか」


【 セイジュ 】

「まあね。あらかじめ入り込んでもらって、あれこれと」


【 ミズキ 】

「そんなものが手に入るくらいなら、もっと早く仕掛けておけばよかったのでは?」


【 セイジュ 】

「それが、なかなかそうもいかないんだよねぇ……おっと」


 堅牢な扉が行く手を阻む。


【 セイジュ 】

「たのむ、ロウ姉妹きょうだい――」


【 ハナオ 】

「は――」


 うなずいたハナオの手が、扉に触れる。

 と、同時に。


【 ハナオ 】

「――――っ!」


 ――ビキッ!!


 押し殺した気合とともに、扉に亀裂が入り、崩落した。


【 ミズキ 】

「! これは……発勁はっけい……!?」


 体内で練った気を一気に放出する……という武芸があるとは承知していたが、これほどの威力を見せつけられたのは初めてだった。


【 ハナオ 】

「…………ふふん」


【 ミズキ 】

(イラッ)


 自慢げなハナオの態度にムッとしつつも、その技量に免じて黙っておくことにしたミズキであった。


【 セイジュ 】

「お見事! さて……」


 踏み入ろうとしたセイジュであったが、ふと足を止めた。


 ボリ……ボリ……


【 セイジュ 】

「……こいつは、参ったな」


 なにかを咀嚼そしゃくするような音が、響いてくる。


【 ミズキ 】

「っ! これは――」


 ミズキは、目を見張った。

 部屋中を染めた鮮血、鼻をつく濃密な死臭。

 その中心にいるのは、狙うべくキョ丞相ではなく……


【 ???? 】

「ごちそう――ごちそう――ふ、ふ、ふ」


 さも美味そうに屍をかじっているのは、かつてキョ丞相だったもの、というべきシロモノだったのである。

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